ヘーエ、安倍国葬への批判は非国民だって?
- 2022年 9月 17日
- 評論・紹介・意見
- 安倍政権澤藤統一郎
(2022年9月16日)
時事通信9月世論調査(9~12日)の結果が大きな話題となっている。政権・与党に危機感をもたらしているという。そんな情勢なのかね。
同調査では、岸田内閣の支持率が前月比12.0ポイント減の32.3%と急落し、昨年10月の政権発足後最低となった。不支持率は同11.5ポイント増の40.0%で、初めて不支持率が支持率を上回った。その逆転差8ポイント。
各紙が「内閣支持32%、発足後最低」「内閣支持急落、迫る『危険水域』」と報道している。黄金の3年の幕開けどころではない。内閣の命運が危ない、この支持率の低下は、政権がもつやもたざるや、すれすれの危険水域だという。
その原因は明確である。何よりも安倍国葬の強行、それとセットになった旧統一教会と自民党との癒着の表面化。さらに、その両者についての内閣と与党、とりわけ岸田首相の説明不足に国民が苛立っている。
政権は、情勢不利と見て国会論戦を恐れ、野党の臨時国会開会請求を無視した。しかし、その姿勢に国民の批判が集まっているとの読みで、9月8日の閉会中審査に応じた。この日衆参両院の議運で、それぞれ短時間ではあったが、首相の「ていねいな説明」が行われた。また、同日自民党が所属国会議員と教団の接点に関する点検結果を公表した。時事の世論調査は、そのあとに行われたものだけに、政権・与党には衝撃が大きい。もう何の切り札もないのだから。
一般に、内閣の危険水域とされる支持率は30%割れだという。こうなると、首相の求心力低下に拍車が掛かり、政権維持が困難になるとされる。今32%の支持率が、上昇に転じる好材料は何もない。何しろ、首相のていねいな説明とは、「同じことのていねいな繰り返し」で、「他人事みたいな作文の朗読」だと見破られてしまった。万事休すではないか。
国民は今、国葬をきっかけに安倍晋三という人物の生前の所業を思い出している。憲法論よりは、「こんな男を国葬か」「とうてい国葬に値しないだろう」「これを国葬にというのは何らかの魂胆あるに違いない」という気分なのだ。
さらに、自民党と統一教会との癒着だけでなく、それを隠し誤魔化そうという政府・与党の姿勢に、国民は怒っている。加えてコロナだ。物価高だ。10月初旬まで、国会は開かない。政権は、あっという間に危険水域に突っ込むことになるだろう。
時事調査では、安倍晋三国葬「反対」が51.9%、「賛成」は25.3%。いやしくも国葬である。国民の圧倒的多数の賛意がなければ、国葬のかたちにもならない。少なくも90%を超える「賛成」があって当然なのだ。ところが、国民の過半数が「反対」という。反対派が賛成派の2倍を超えているというのだ。こんな国葬はあり得ない。
なお、朝日新聞の調査(9月10、11日実施)では、国葬「賛成」38%、「反対」56%。NHKの調査(9月9~11日実施)でも「評価する」32%、「評価しない」57%。同じようなもの。
そして、統一教会問題である。時事調査では、首相の旧統一教会問題への対応を「評価しない」が62.7%を占め、「評価する」は12.4%だった。首相や議員の説明に関しても、「納得できない」が74.2%、「納得できる」が5.5%。無党派層では「納得できない」が76.5%に上ったという。惨憺たる事態というほかはない。民意は、政権・与党を信認していない。
各紙は、与党内は危機感に覆われつつある、政権末期の雰囲気と報じている。こういうときには、与党内に足を引っ張る輩が現れる。弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂という類い。本日、その役割を引き受けて登場したのが、二階俊博・元幹事長である。TBSのCS番組収録で、こう語ったそうだ。
「長年務めた総理が亡くなったのだから、黙って手を合わせて見送ってあげたらいい。こんなときに議論すべきじゃない」「(国葬が)終わったら、反対していた人たちも必ずよかったと思うはず。日本人ならね」
これは聞き捨てならない。「日本人なら、今は反対していても、国葬終われば必ずよかったと思うはず」とは、「終わったあとも国葬よかったと思わないのは、日本人ではない」ということである。これは、国葬反対の日本の過半数を「非国民」と罵ることにほかならない。
二階はさらにこうも言ったという。
(立憲民主党の執行部が欠席する考えを示したことについて)「欠席しようがしまいが国葬に関係ない。世の中にあんまり賢くないなということを印象づけるだけだ。欠席する人は後々長く反省するだろう。選挙で取り戻すのは大変だ」
ヘーエ、この人賢いんだ。私は、賢くない人の側に立ちたい。そして、徹底して、非国民であり続けよう。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.9.16より許可を得て転載
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