日朝平壌宣言を思い起こして、平和への外交努力と、拉致問題の解決を。
- 2022年 9月 19日
- 評論・紹介・意見
- 北朝鮮戦争と平和澤藤統一郎
(2022年9月18日)
20年前の日朝平壌宣言の記憶は、今も鮮やかである。私は、小泉純一郎という人物は大嫌いだったが、ピョンヤンに出向いてのこの宣言の発表には、見事なものと感嘆した。以来、この舞台回しをした田中均という外務官僚を尊敬している。
これで日本の戦後処理は終わる…、拉致問題も解決する…かに見えた。が、残念ながら無用な問題がこじれて、そうはならなかった。その責任の大半は、安倍晋三にある。
しかし、平壌宣言自体が消滅したわけではない。両国とも、宣言に盛り込まれた合意が進展しないのは相手国の責任だと繰り返してきた。宣言を基礎に、両国の関係を正常化することは夢物語ではない。
外務省のホームページで宣言を再確認しておこう。
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小泉純一郎日本国総理大臣と金正日朝鮮民主主義人民共和国国防委員長は、2002年9月17日、平壌で出会い会談を行った。
両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した。
1.双方は、この宣言に示された精神及び基本原則に従い、国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注することとし、そのために2002年10月中に日朝国交正常化交渉を再開することとした。
双方は、相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現に至る過程においても、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した。
2.日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。
双方は、日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施し、また、民間経済活動を支援する見地から国際協力銀行等による融資、信用供与等が実施されることが、この宣言の精神に合致するとの基本認識の下、国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。
双方は、国交正常化を実現するにあたっては、1945年8月15日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議することとした。
双方は、在日朝鮮人の地位に関する問題及び文化財の問題については、国交正常化交渉において誠実に協議することとした。
3.双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。また、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。
4.双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した。
双方は、この地域の関係各国の間に、相互の信頼に基づく協力関係が構築されることの重要性を確認するとともに、この地域の関係国間の関係が正常化されるにつれ、地域の信頼醸成を図るための枠組みを整備していくことが重要であるとの認識を一にした。
双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。
朝鮮民主主義人民共和国側は、この宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアムを2003年以降も更に延長していく意向を表明した。
双方は、安全保障にかかわる問題について協議を行っていくこととした。
日本国総理大臣 小泉 純一郎
朝鮮民主主義人民共和国 国防委員会委員長 金 正 日
2002年9月17日 平壌
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昨日(9月17日)、時事通信が「日朝、状況整えば交渉可能性」との記事を配信している。要旨以下の通り。
「2002年9月の初の日朝首脳会談から17日で20年になるが、米国との対立姿勢を鮮明にし、核開発にまい進する北朝鮮にとって、日本への関心は薄まったかにも見える。
今後、日朝関係進展の可能性はあるのか。専門家は、状況が整えば北朝鮮が交渉に乗り出す可能性があると指摘する。
南山大の平岩俊司教授(現代朝鮮論)は「核・ミサイルに関しては米国を交渉相手と見ている」と語る。一方、「その他の国は、有利に使えるなら使おうとしている」とも分析。02年の首脳会談で発表された日朝平壌宣言には、過去の清算として国交正常化後の経済協力が盛り込まれており、平岩教授は「北朝鮮が頭を下げなくてももらえるお金」と解説する。「(核問題の進展など)一定の条件が整えば、日本との交渉に応じるだろう」とみる。
日朝関係に詳しい津田塾大の朴正鎮教授は、「米朝関係が途絶え、南北関係が動かない場合に、日本という存在が浮上する可能性がある」「北朝鮮はやりやすい問題から手を付けて、日本側の国交正常化への本気度を探りたいのだろう」と読み解く。
また朴教授は、北朝鮮がストックホルム合意後の16年に外務省傘下の日本研究所を設立したことについて「今後の日朝関係に向けた体制を準備しているかにも見える」と説明。「発する言葉は厳しいが準備はしている」と述べ、日本側の出方次第では交渉に応じる余地があるとの見解を示した。」
平壌宣言の際には、なるほど外交とはこういうものかと思った。鮮やかな互譲である。植民地支配の反省も、拉致問題への謝罪も、お互い言いにくいことがセットになって表現されており、そこを乗り越えて共に実利を獲得している。
いかなる周辺諸国とも、無用な軍拡競争はまっぴらご免だ。北朝鮮とも中国とも、平和への外交努力を積み重ねるしか道はない。岸田政権には、20年前の日朝平壌宣言を再び思い起こして、平和への努力と、拉致問題の解決に意を尽くしていただきたい。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.9.18より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=19980
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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