本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(377)
- 2022年 9月 23日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
負のシニョリッジ
8月24日の日経新聞に、「日銀の財政を問う」というコラムが掲載され、「量的引き締め、政策金利引き上げのスピードと程度、長期金利引き上げのスピードと程度の3つの変数をコントロールすることで、日銀の赤字(負のシニョリッジ=通貨発行益)を避けることは可能だ」という結論が紹介されていたが、実際には、「投資の実践」を無視した「大本営的な意見」、あるいは、「机上の空論」のようにも感じられた次第である。
別の言葉では、「日銀の失敗」に関する議論で、将来的に、紹介されそうな意見のようにも感じられたために、今回は、「何が問題なのか?」を簡単に説明させていただくが、基本的には、「1991年のソ連で、どのような展開が繰り広げられたのか?」が、ほとんど無視された意見のようにも感じている。つまり、「国債価格の暴落」に関しては、確かに、「満期まで保有すれば、原価法の適用により、損失が発生しない状況」でもあるが、この点に関する問題は、「金利の急騰時に、どのような方法で、負債項目の当座預金を処理するのか?」とも言えるのである。
具体的には、「短期金利が、仮に3%にまで上昇すると、日銀の赤字が急増する事態」も想定されるが、このような状況下で、日銀のバランスシートに発生する変化としては、「当座預金に対して3%の金利を払うことができず、当座預金残高の急速な減少に見舞われる展開」とも考えられるのである。つまり、「量的引き締め(QT)」が意味する「日銀のバランスシート急減」を実行するためには、「国債の保有残高」と「当座預金の残高」を同時に減少させる必要性が存在するが、仮に、「値下がりした国債の売却」を実施すると、その時には、「巨額の売却損」の発生も予想されるのである。
そのために、今後、日銀が取れる方法としては、「1991年のソ連」や「1945年の日本」で実施されたように、「大量の高額紙幣を増刷する古典的な方法」とも想定されるのである。つまり、「ハイパーインフレで、国家債務を減少させる方法」のことでもあるが、この点に関して、現在、注目すべき事実は、「1971年のニクソンショック以降、きわめて巨額なデジタル通貨が発行された事態」だと考えている。
より詳しく申し上げると、「人類史上、きわめて異常な状態」となっている、「現在のマネー(お金)バブル」に関して、今後、「紙幣の大増刷とともに、世界中の人々が、一挙に、デジタル通貨を実物資産に移行させる可能性」、すなわち、「未曽有の規模でのハイパーインフレが、世界中で、一挙に発生する可能性」が憂慮される事態である。(2022.8.24)
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2022年のジャクソンホール会議
8月に米国で開催された「2022年のジャクソンホール会議」については、将来的に、「ハイパーインフレの発生を容認した会議だった」と言われるものと考えている。つまり、「2021年の会議」で用いられた「一過性のインフレ」という言葉に関して、「一年間の検証」を経た結果、この予想が全くの誤りであり、今後は、「本格的な金融大混乱」、すなわち、「世界的なハイパーインフレの発生」が避けられなくなった状況が、広く認識されたものと想定されるのである。
より詳しく申し上げると、「過去一年間の変化」として挙げられる事実は、最初に、「米国株のバブル崩壊」であり、また、「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻」、そして、「中国不動産バブルの急激な崩壊」でもあった。そして、このことは、「2008年前後のGFC(金融大混乱)」、すなわち、「世界的な金融大地震」により発生した「世界的なインフレの大津波」が、世界中の人々の目に見え始めた状態とも理解できるのである。
別の言葉では、「先進各国の金融当局者」が、今まで、ありとあらゆる手段を行使して、「金融界の大量破壊兵器」と呼ばれる「デリバティブのバブル崩壊」を隠蔽しようとしてきた状況が、現在では、時間的、かつ、物理的な限界点に到達した段階とも考えられるのである。つまり、過去10年以上の期間、水面下に隠されていた「インフレの真因」が、「金利の上昇とともに、表面化してきた状況」のことである。
そのために、これから必要なことは、「いまだに約500億ドルもの残高が存在するOTCの金利デリバティブ」に関して、「この問題が解決しない限り、インフレが加速していく状況」を理解することである。別の言葉では、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制」と呼ぶべき通貨制度において、「デジタル通貨が、人類史上、未曽有の規模にまで大膨張した状況」を、正確に認識することである。
あるいは、「異常気象の原因の一つが、借金漬けの経済成長である可能性」を、詳しく吟味することでもあるが、現在、このような状況下で繰り広げられている事実は、残念ながら、「東西冷戦構造の復活」とも言えるのである。つまり、いまだに、「西洋文明」を象徴する「奪い合い」が、世界的に繰り広げられている構図のことでもあるが、今後の注目点は、やはり、「紙幣の大増刷とともに、デジタル通貨が、神様の立場から転落する展開」であり、また、「時間的な余裕がなくなった結果として、世界中の人々が仰天するような大事件が発生する可能性」だと感じている。(2022.8.28)
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旧統一教会とデリバティブ
7月8日に発生した「安倍元首相の銃撃事件」には、いろいろな観点から、大きな驚きを覚えたが、具体的には、「安全な日本で、なぜ、このような重大事件が発生したのか?」ということであり、また、「なぜ、今回の事件が、より大きな波紋を描くこととなったのか?」ということだった。別の言葉では、「すでに解決済みと思われていた霊感商法などの問題が、なぜ、いまだに、水面下で発生していたのか?」、あるいは、「なぜ、政治家が、旧統一教会と、深くかかわっていたのか?」ということである。
つまり、今回の事件は、「一部の人々が継続して追求しながらも、マスコミで、ほとんど報道されなかった問題」に関して、「ある日、突然、大事件をキッカケにして、全国の人々に知れ渡った」という状況であり、この時に私自身が感じたことは、「このような展開は、今後、デリバティブの問題に当てはまるのではないか?」ということだった。具体的には、私が想定する「デリバティブの時限爆弾が破裂する事件」をキッカケとして、「世界全体が、さまざまな事実に気付かされる状況」であり、実際には、「世界のマネーが、大きな変質を遂げていた状況」のことである。
より詳しく申し上げると、「1971年からの約50年間で、世界のマネーに関して、質と量が、大きく変化した状況」のことだが、実際のところ、「金本位制のもとで制限されていたマネーの発行量」に関しては、現在、全く無視されている状況とも言えるのである。つまり、「市場による信用創造、あるいは、マネーの創造」に関して、「1980年代初頭から、デリバティブの大膨張が始まり、その結果として、大量のデジタル通貨が創造され、世界の金利が継続して低下した状況」のことである。
しかし、今後は、私が想定する「金融界の白血病」が発生し、「紙幣がコンピューター・ネットワークの中を流れることができない状況」に気付かされた人々が、慌てて、「従来の貨幣」とも言える「貴金属」などに殺到する展開も想定されるのである。別の言葉では、「お金(資本)が、この世や自分の人生で最も大切なもの(主義)である」というような認識を持っていた人々が、自分の間違いに気付かされる状況のことである。
その結果として、その後は、「世界の金融市場が大混乱の状態に陥る可能性」も想定されるが、この点に関して、最も重要なポイントは、やはり、「文明法則史学」が教える「800年に一度の東西文明の大転換」であり、今後は、この点を理解した人々が、「社会の成功者」と呼ばれるものと考えている。(2022.8.29)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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