本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(384)
- 2022年 11月 12日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
制御不能状態に陥る世界の金融市場
現在の「世界的な金融混乱」は、間もなく、「デリバティブのバブル崩壊」を引き起こすことにより、「制御不能な状態」に陥るものと思われるが、この点については、「100年ほど前に誕生した世界各国の中央銀行」に関する分析が不可欠だと考えている。具体的には、「世界的なマネー大膨張」について、「民間金融機関」のみならず、「中央銀行」や「政府」の役割が、きわめて大きかった状況のことである。
しかも、この点に関して、「複雑系の学問」が指摘する「前半と後半とに分かれる可能性」も想定されるために、今回は、「1971年までの実体経済の成長」と「それ以降のマネー経済の成長」を考える必要性があるものと感じている。また、「1971年からの約50年間」についても、「前半と後半の26年間」に分かれる可能性があり、同時に、「後半の26年間」も、「前半と後半の13年間」とに分類可能な状況とも思われるのである。
より具体的には、「実体経済の成長期間」とも言える「1971年までの状況」については、「二次産業」や「三次産業」などが、世界的な発展を見せたものの、その後は、「実体経済」よりも、「マネー経済」の成長が勝ったことも見て取れるのである。別の言葉では、「実物商品」よりも「金融商品」の方が、より大きな成長力を見せたものの、この時の問題点は、「未熟な経済学」の存在により、「お金の謎」が解けていないだけではなく、「インフレを図る指数」が精度を欠いていた事実が指摘できるものと考えている。
そして、このような状況を利用して、「欧米の金融当局は、デリバティブの大膨張を容認した」という状況だったが、この点に関する注意事項は、「2010年前後を境にして、デリバティブの収縮が発生した可能性」だと感じている。つまり、「1997年から2010年前後」については、「世界的な信用収縮を救うために、OTCのデリバティブを大膨張させた」という状況だったものの、その後は、「バブル崩壊の隠ぺい」に対して、さまざまな目論見が実施されてきた状況だったものと想定されるのである。
しかし、現在では、「インフレ率」や「資源価格」などの上昇が止められない状況となっており、その結果として、「世界的な金利上昇」が始まったが、このことは、「先進各国の中央銀行が目論んできた金融市場のコントロール」が不能な状況に陥った可能性を示唆しているようにも感じている。つまり、「実体経済の成長」がもたらした「金本位制という通貨制度の制御不能状態」が「1971年のニクソンショック」だったものの、今回は、「信用本位制」が、間もなく、制御不能な状態に陥る可能性である。(2022.10.11)
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未来予測学の先駆者
10月13日の日経新聞に、「新常態へ誤算続きの市場」というコラムが掲載され、「2021年から、エリートたちの誤算が続いている」と説明されているが、この点については、大きな注意が必要だと考えている。つまり、「未来予測学の先駆者」とも言える「シュペングラー(西暦1880年-1936年)」の「西洋の没落」という著書では、「西暦1800年から2000年」は「貨幣の支配する時代」であり、また、「第四身分である大衆が力を持つ時代」であるとも結論付けられているのである。
そして、「西暦2000年から2200年」については、「皇帝主義の完成」や「暴力政策による貨幣の破壊」などの時代とも予測されているために、「現在の金融混乱については、100年以上前に、すでに予測されていた」とも考えられるのである。また、このような「歴史サイクルの理論」をより発展させたのが、「日本の村山節(西暦1911年-2002年)」であり、実際には、「800年毎に東西の文明が交代する」という「文明法則史学」の理論を打ち立てたのである。
別の言葉では、「四次元の社会科学」とも言える「歴史や時間のサイクルを応用した未来予測」の利用により、「現在の世界的な混迷は、簡単に説明可能である」とも思われるが、実際のところ、「後世に生まれた者の特権」である「過去の偉人が発見した偉大な真理の利用」により、今回の「世界的な金融混乱」も予測可能な状況だったものと想定されるのである。つまり、「世の中に偶然はなく、すべてが必然である」という言葉のとおりに、今回の「世界的な金融大混乱」についても、簡単に説明ができるとともに、今後の予測も可能な状況のようにも思われるのである。
具体的には、「1971年のニクソンショック」以降、私が提唱する「信用本位制の時代」が始まった状況を理解するとともに、その後、「どのような通貨と商品が、どれほどの規模で創り出されたのか?」を具体的な数字で把握することである。そして、この観点から指摘できることは、「これから想定される世界的な大インフレが、1600年前の西ローマ帝国崩壊以来の大惨事となる可能性」でもあるが、今回の「救い」となるのは、やはり、「11次元にまで進化した自然科学」だと考えている。
つまり、「武力や資金力による奪い合い」ではなく、「世界中の人々が、過去の歴史を振り返ることにより、現状認識を新たにするとともに、力を合わせて、さまざまな難問に取り組み始める状況」のことである。(2022.10.13)
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世界的な流動不足
現在、「世界的な流動不足」が指摘され始めているが、この理由としては、「中央銀行の限界」が指摘できるとともに、「政府の新たな決断」が求められている状況のようにも感じている。つまり、今までは、「中央銀行のバランスシート膨張」により、「国債の買い付け」と「超低金利状態の維持」が実施されてきたが、現在では、「中央銀行のバランスシート残高縮小」により、「世界的な金利上昇」が始まっていることも見て取れるのである。
別の言葉では、「金融システムの全体像」において、従来の流れは、「バブル崩壊で発生した不良債権を、より巨大な組織に移管しながら、隠蔽を図り、先送りする」というものだった。つまり、最初に、「民間企業や個人」、そして、その後に、「民間金融機関」へ移行した不良債権は、その後、「中央銀行」が受け取ったものの、現在では、「隠ぺいや先送りに限界点が訪れた結果として、流動不足が発生している状況」とも想定されるのである。
しかし、現在では、「中央銀行の赤字発生」という問題が、世界的に発生しかかっているために、今後は、「財務省を中心にした政府の対応」に注目が集まるものと思われるが、実際には、「中央銀行への資本注入」のことである。つまり、「赤字に陥った日銀を救うために、財務省が増刷した紙幣の供給による、日銀への資本注入」が考えられるが、このことは、「金融政策における最後の手段」とも言えるのである。
別の言葉では、「1945年の日本」と同様の政策が実施されるものと思われるが、今回の問題点は、やはり、「1971年のニクソンショック以降、私が提唱する信用本位制と呼ぶべき通貨制度が採用された状況」であり、また、「1980年の初頭から、デリバティブのバブルが発生した状況」とも理解できるのである。つまり、今までの「世界的なマネーの大膨張」、そして、これから想定される「世界的なハイパーインフレ」に関して、今までの「ハイパーインフレ」と、質的、量的な違いが存在する可能性のことである。
そのために、今後の展開については、今まで以上の注意を払う必要性があるものと感じているが、実際には、「デリバティブのバブル崩壊が、どのような展開で進展するのか?」ということであり、また、「今回の金融混乱の特殊性に気付いた人々が、どのような行動を取るのか?」ということである。そして、この点を理解するためには、「シュペングラーの西洋の没落」で指摘されている「大衆が、どのように形成され、その後、群衆への分裂が始まったのか?」、あるいは、「この点に関して、大膨張したマネーが、どのような役割を果たしたのか?」などを考えることが必要なものと感じている。(2022.10.17)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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