本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(385)
- 2022年 11月 19日
- 評論・紹介・意見
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ノーベル賞経済学者の破綻
2022年のノーベル賞も、結局は、「発展中の自然科学」と「未熟な社会科学」の落差を浮き彫りにした結果となったものの、今年の経済学賞で気になった点は、「バーナンキ氏の受賞が、25年前を彷彿とさせる状況」である。つまり、「1997年のノーベル経済学賞」については、「マイロン・ショールズ氏」と「ロバート・マートン氏」による、いわゆる「ブラック-ショールズ方程式」だったものの、彼らが創設した「ロングターム・キャピタル・マネージメント」については、「100万年に3回の確立」と計算されていた「ロシア国債の債務不履行」により、受賞翌年の1998年に破綻してしまったのである。
つまり、「理論と実践との違い」、あるいは、「経済理論の未熟さ」などが露呈した出来事でもあったが、その後の展開を考えると、今回の「バーナンキ氏などの受賞」についても、同様の結果となる可能性が高いものと考えている。別の言葉では、「金融システムの安定に貢献した」と言われる「バーナンキ氏」については、実際のところ、「2006年から2014年までのFRB議長在任期」において、「デリバティブのバブルを膨張させるとともに、リーマンショック後の混乱に際して、きわめて不十分な対応しかできなかった状況」とも理解できるのである。
より詳しく申し上げると、「日銀を見習って、いわゆる量的緩和(QE)を実施した」という状況のことだが、この点については、将来的に、非難される可能性が高いものと考えている。しかも、現在は、「金利やインフレ率の上昇とともに、世界的な金融混乱が加速している展開」となっており、今後は、「先送りされたデリバティブの処理問題」の発覚と同時に、「世界全体の金融システムが危機的状況に陥る可能性」の想定されるのである。
つまり、「1998年のLTCMショック」については、「民間金融機関の破綻」にすぎなかったものが、これから想定される「デリバティブの破たんショック」については、「世界全体の中央銀行や政府」を巻き込んだ、前代未聞の危機的な状態に陥るものと考えられるのである。
そのために、「11月の前半」を中心とした「今後の数か月間」については、最大の注意を払う必要性があるものと感じているが、実際のところ、「イギリスの金融混乱」、あるいは、「ドイツのエネルギー問題」などは、「大事件発生前の前兆的な役割」を果たしているものと思われるのである。より具体的には、「今までの大事件発生時において、約2ケ月前から、さまざまな事件が発生してきた状況」のことである。(2022.10.18)
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ジャスト・イン・タイムの終焉
「トヨタの生産方式」を象徴する「JIT(ジャスト・イン・タイム)方式」に、現在、約50年ぶりの転換点が訪れていると報道されているが、この理由としては、「商品価格の上昇により、在庫の保有が利益に結び付く状況」を表しているものと考えている。つまり、「負債の残高は、ほぼ一定額で推移するものの、資産の残高は、増減に見舞われる」という「バランスシートの非対称性」により、「価格が上昇する資産の保有」は、企業の利益にとって、大きなメリットが存在することも見て取れるのである。
そして、過去50年間は、「在庫を減らすことが企業の利益に繋がった」という状況であり、この事実は、「過去50年間が、通貨価値の上昇を意味するデフレの時代だった」という短絡的な結論に繋がりやすいものと思われるのである。つまり、「1923年のドイツのハイパーインフレ」や「1929年の米国大恐慌」をキッカケにして、それぞれ、「インフレ」や「デフレ」が経済用語として定着したのだが、実際には「過去50年間の展開を振り返ると、さまざまな問題が発生したのではないか?」とも感じている。
具体的には、「オカネとモノの関係性」において、「1971年のニクソンショック」以降、「大量のデジタル通貨が創られるとともに、この資金が、デリバティブなどの金融商品に流れ込んだ状況」のことである。別の言葉では、「既存の経済学が取り扱う実体経済と比較して、数倍もの規模でマネー経済が発達した状況」となり、しかも、「金利のみならず、株価や商品市況までもが、デリバティブの利用により、政府やメガバンクなどが、価格操作を実施した可能性」のことである。
そのために、今回の「ジャスト・イン・タイムの終焉」については、従来の「デフレやインフレの概念」ではなく、「金融界のブラックホールに隠されていた大量のデジタル通貨の終焉」という理解の方が正しい状況のようにも感じている。つまり、「金融界のホーキング放射」という「大量のデジタル通貨が、紙幣に形を変え、市場に出回る状況」が始まる可能性のことである。
また、この時に必要なことは、「政府と中央銀行の関係性」を理解することであり、実際には、「赤字に陥った中央銀行の救済のために、政府が、大量の資本注入を実施する可能性」である。そして、具体的な方法としては、「財務省が印刷した紙幣が中央銀行へ注入され、その後、民間金融機関を通じて、市中に出回る状況」でもあるが、この点については、典型的な「ハイパーインフレの発生」を意味しているものと考えている。(2022.10.19)
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中国の易姓革命
「4000年の歴史」を有する「中国」には、「易姓革命」の伝統があると言われるが、このことは、「王朝の交代」のことであり、実際には、「天子の徳が無くなれば、天命が別の姓の天子に改まり変わる」という中国の政治思想のことである。つまり、「昔の中国では、天子は天命によって決まると信じられていたために、天子や支配者に、その徳がなくなれば天命は他の人に代わり下る」と信じられていたのである。
そして、このような思想や伝統については、現代でも有効な状況のようにも思われるが、実際には、「中国共産党にも当てはまる可能性」であり、また、この点に関して、「ソ連の共産主義」が参考になる可能性のことである。つまり、「1991年」に崩壊した「ソビエト連邦」については、「1917年のボリシェビキ革命」から「70年余りの期間」にわたり継続した状況だったが、結果としては、「史的唯物論」や「誤った共産主義の解釈」などが原因となり、「天の徳」の真因とも言える「国民からの信頼感」が失われたものと想定されるのである。
別の言葉では、「軍事独裁による強権的な国家統治」が実施されたものの、「西洋諸国におけるマネーの大膨張」の結果として、「ソ連の国際競争力」が失われ、あっという間に、「世界第二位の経済大国」と言われた「ソ連」が、「70年余りの運命」を閉じる結果となった展開のことである。そして、現在の「中国共産党」も、かつての「ソ連」と、同じ運命を辿っているものと思われるが、基本的には、「1949年」に設立された「中華人民共和国」に関して、「天の徳」が失われている可能性のことである。
より詳しく申し上げると、「天地自然の理に反した行為」が繰り返されることにより、徐々に、「天の徳」が失われる可能性のことでもあるが、実際には、「国民の活力」が減少し、「統治者への反発心」が高まる状況とも言えるようである。別の言葉では、今まで、「西洋的な資本主義体制」に憧れる人々を大量に生み出しながら、現在では、反対に、「共産原理主義に拘る独裁的な統治者が、世界全体の民主主義国家を相手にして、軍事力で立ち向かおうとしている状況」のようにも感じられるのである。
つまり、現在の「中国」では、「疑似的な資本主義国家」を標榜することにより得られた「大量の資本や資産」が「軍事力」に浪費されるとともに、「将来の利益」を犠牲にするような政策が実施される状況となっているために、今後の展開としては、「国内からの信頼感の喪失」を表す「易姓革命」が予想されるものと考えている。(2022.10.22)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion12555:221119〕
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