「銃を後ろに向けろ!敵と味方を間違えるな」 ~高知「草の家」と槇村浩との出会い~ :「草の家だより」寄稿転載 My article from the Dec 24 2022 edition of the quarterly newsletter of Grassroots House, a peace museum in Kochi
- 2023年 1月 1日
- 評論・紹介・意見
- 「ピースフィロソフィー」
高知の平和資料館「草の家」への訪問については12月14日の投稿
高知の平和資料館「草の家」による声明 「大軍拡ではなく、今こそ平和外交を!!」
で触れました。「草の家」が年4回発行するニュースレター「草の家だより」の12月24日号に寄稿した記事をここに転載します(写真はブログ運営者が付け加えたものです)。
「銃を後ろに向けろ!敵と味方を間違えるな」
~高知「草の家」と槇村浩との出会い~
乗松聡子
9月の高知の旅は忘れられない。「草の家」で働いていた山根和代さん、金英丸さんはどちらも心から尊敬する平和のための仲間であり、二人が愛したこの場所に早く行きたかった。現地では、岡村正弘館長はじめ皆さんが歓迎してくださった。館長の高知空襲体験談は、カナダに戻った後に冊子『僕が見た高知大空襲』(写真→)で読み、涙が止まらなかった。
9月15日、雨降る中、副館長の岡村啓佐さんの案内で「高知平和と自由民権ツアー」(と私が勝手に名付けている)に連れていってもらった。海軍航空隊の遺跡である「南国市の掩体群」を見たときは驚いた。18年に済州島に行ったときに旧日本海軍のアルドゥル飛行場跡で見た格納庫群とそっくりだったからだ。(写真↘)
アルドゥル飛行場は「南京大虐殺」に先駆けて行われた空爆の起点とされた。現地の人々は毎年12月13日(1937年の南京城陥落の日)に格納庫前で南京大虐殺の追悼集会を行っている。植民地支配下、朝鮮人を動員し建設した飛行場を使い日本軍が行った行為であるのに、現地の人は寒空の下「南京」を記憶している。今年は85周年の重要な節目だ。
南国市「前浜掩体群」の一つ(5号掩体) |
高知の人たちも戦争の教訓を忘れないためにこの物々しい掩体群を保存しているということに感銘を受けた。南国市の説明板には、地元住民の他に「高知刑務所の受刑者、朝鮮半島から強制的に連れて来られた朝鮮の人々」などが動員されたと記されていた。
ツアーで圧巻だったのは「日中不再戦の碑」である(末尾↓に写真)。添え石には「日本は日清戦争以来、中国に対し侵略行為を続け、特に1931年の『満州事変』以後、15年間に及ぶ戦争は人道をおかす三光作戦などによって1千万余の中国人民を殺傷した。この碑は日中国交回復20周年にあたり侵略戦争に対する反省の証として、またゆるぎない友好と平和の礎とするため建立された」とある。
槇村浩「間島パルチザンの歌」碑 |
その近くにはまさしくその戦争を批判して弾圧されたプロレタリア詩人槇村浩の「間島パルチザン」詩碑(写真→)があり、「天皇制特高警察の野蛮な拷問がもとで1938年わずか26歳で病没した」との説明が!私は衝撃と感動を覚えた。これらは高知市立の城西公園にある。翌日訪問した市立の「自由民権記念館」も日本の侵略戦争を明記していた。戦争の本質を歪曲することなく継承している地である。
「日中不再戦の碑」の写真をさっそく南京の友人に送ったらとても喜んでいた。今年は記念すべき日中国交正常化50年であるのに、日本を含む西側諸国では今、一方的な中国敵視報道が荒れ狂っている。「戦争は人の心の中で生まれる」とあるユネスコ憲章に照らし合わせれば、すでに戦争状態にあると言っても過言ではない。「加害」「被害」「抵抗」「創造」をモットーに平和を発信する「草の家」の存在意義はこれから高まるばかりであろう。
「銃を後ろに向けろ!敵と味方を間違えるな」-槇村浩が1932年4月に投獄される直前、高知の朝倉にあった歩兵第四十四聯隊に撒いた反戦ビラの見出しにはドキっとした(草の家ブックレット⑬『槇村浩に会いに・・・』に収録されている2002年の西森茂夫館長の講演より)。(写真→)まさしく今求められている反戦のメッセージはこれである!と思った。
私が「草の家」で講演させていただいたときに触れた、ウクライナ戦争についての西側メディアのロシア敵視一辺倒の問題にも通じるメッセージである。政府とメディアに繰り返し憎むように教えられた対象よりも、その憎しみを植え付けているのは誰かということを冷徹に見抜く力が今、市民に求められている。戦争の教訓を活かし、戦争を防ぐために。
(転載以上)
日中不再戦の碑 |
「草の家」のHPはここ、ブログはここにあります。高知に行くときはぜひ訪れてみてください。
槇村浩「間島パルチザンの歌」は、ここで読めるようです。
新年もよろしくお願いします。 @PeacePhilosophy
初出:「ピースフィロソフィー」2022.12.30より許可を得て転載
http://peacephilosophy.blogspot.com/2022/12/my-article-from-dec-24-2022-edition-of.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12693:230101〕
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