本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(393)
- 2023年 1月 14日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
65兆ドルのOTC為替デリバティブ
12月5日に「BIS(国際決済銀行)」が発表した「65兆ドル(約8900兆円)ものOTC為替デリバティブ」については、きわめて大きな違和感を覚えているが、その理由としては、「なぜ、今になって、このような発表を行うのか?」が挙げられるようである。つまり、現在の「金融専門家の常識」としては、「世界に約600兆ドルのOTCデリバティブが存在し、そのうち、約8割が金利デリバティブであり、また、約1割が為替デリバティブ、そして、その他に、株式や商品のデリバティブとCDSが存在する状況」が指摘できるのである。
より詳しく申し上げると、「金融界の大地震」を意味する「2008年のリーマンショック」に関しては、「デリバティブの急成長が止まったことが主な原因」であり、その後は、「世界的なQE」により、「インフレの大津波」が「海中の大津波のような状態で、金融界のブラックホールの中を進行していた状況」とも言えるのである。そして、現在の「目に見えるインフレ」については、「金融界のブラックホールに隠れていたデジタル通貨が、実体経済に浸み出してきた状況」を表しているものと考えている。
また、今後は、「目に見えない金融ツインタワー」の崩壊とともに、「本格的な大インフレ」が世界を襲う状況を想定しているが、この点に関して、今回の「OTC為替デリバティブの発表」は、「BISによる警告」のようにも感じられるのである。つまり、「11月に発生したFTXの破綻」が、私の想定どおりに、「金融ツインタワーに突入したジェット機」の役割を果たしたために、今後は、「デリバティブのバブルが完全崩壊する可能性」が予想される展開のことである。
より具体的には、「隠蔽され続けてきたデリバティブのバブル崩壊」が隠しきれなくなったために、今回、「BIS」が、徐々に、事実の発表を始めた可能性のことだが、この点に関して、最も注目すべき問題は、やはり、「約600兆ドルの8割を占めるOTCの金利デリバティブ」だと考えている。
つまり、私が想定する「時間や歴史のサイクル」からは、「1997年8月から26年後の2023年8月15日」に「インフレの進行により、逆ニクソンショックのような事件が発生する可能性」が予想されるが、この時に重要な役割を果たすのが、「デリバティブのバブル崩壊」が引き起こす「国債価格の暴落」により、「急激な大インフレが、一挙に、世界を襲い始める可能性」のようにも思われるのである。(2022.12.15)
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二機目のジェット
12月16日に発表された「監査法人のマザーが、仮想通貨関連の全顧客向けに作業を停止した」というニュースは、「11月9日前後に明らかとなったFTXの破たん」に続く「目に見えない金融ツインタワーに突入した二機目のジェット」だったようにも感じている。つまり、「2001年の9・11事件」の時には、「目に見える金融ツインタワー」がテロ事件によって破壊されたが、「約20年後の状況」としては、「世界全体に、約600兆ドルものOTCデリバティブと約330兆ドルもの世界債務がそびえ立っている状態」となっているのである。
より詳しく申し上げると、「1971年のニクソンショック」以降、「金(ゴールド)」の制約から解放された「世界の通貨」は、「糸の切れた凧の状態」となり、「レバレッジ(テコの効果)」を利用しながら、爆発的な増加を見せたのである。別の言葉では、「お金の魔力」に酔い痴れた人類が、「お金が全てである」と錯覚し、「デジタル革命」にまい進した結果として、「0と1との間に存在する大切なもの」、すなわち、「人間の感情や心」などを忘れ去ってしまったものと想定されるのである。
つまり、「お金(デジタル通貨)」という「単なる数字」が「現代の神様」となり、「お金儲けのためなら、どのような犠牲でも払うべきだ」と錯覚する人々が増えた結果として、前述の「目に見えない金融ツインタワー」が形成されたのである。別の言葉では、「貨幣の歴史」において、「1600年前の西ローマ帝国崩壊以来、徐々に膨らんできたマネーの残高が、過去50年間で、一挙に爆発的な大膨張を見せた状況」のことである。
そのために、今後は、「史上最大のバブル」とも言える「デジタル通貨のバブルが崩壊する展開」が想定されるが、実際には、「金融界の白血病」とも言える「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができない状態」の発生である。つまり、「世界的な金融システムの崩壊を防ぐために、間もなく、世界の中央銀行が、一斉に、紙幣の増刷を始める状況」が想定されるが、この結果として発生する現象としては、「紙幣では、金融商品の決済が、きわめて困難になる状況」が指摘できるのである。
その結果として、「世界中の人々が、何が安全資産なのかを考え始めるとともに、実物資産への資金移動が始まる展開」も予想されるが、実際には、「劇場の火事」のように、「ボトルネック的な状態」となり、「本来のお金(マネー) である貴金属などに大量の資金が殺到する状態」が発生するものと考えている。(2022.12.17)
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ゼロからの脱出
2023年のキーワードは「ゼロからの脱出」だと考えているが、実際には、「中国が、ゼロコロナ政策から、どのような抜け出し方を見せるのか?」であり、また、「日本を中心とした先進諸国が、ゼロ金利政策からの脱出に成功するのか?」ということである。別の言葉では、東洋学が教える「創業、保守、因循姑息、そして、崩壊」というサイクルに関して、現在の「崩壊の時代」から、次の「創業の時代」に向けて、「産みの苦しみ」という言葉のとおりに、「どのような摩擦や混乱が発生するのか?」ということだと考えている。
より詳しく申し上げると、「超長期サイクルである800年毎の文明交代」に関して、「物質文明、そして、マネーの大膨張という特徴を持つ西洋文明」から「精神文明、そして、宗教の復権という特徴を持つ東洋文明」への移行を想定しているが、より大きな注目点は、「それぞれの時代における共同体の規模と統治方法」だと考えている。つまり、「1600年前の西暦400年前後に発生した西ローマ帝国の崩壊」により、「世界の共同体は、多数、かつ、きわめて小さな規模に分裂した状況」だったものと想定されるのである。
そして、その後の展開としては、「共同体の統合と規模の拡大により、統治の形態が、大きく変化した状況」、すなわち、「当初の800年間は、宗教的な組織化が発生し、その後の800年間は、マネーの膨張と市場経済の発展による組織化の発生」という状況だったものと想定されるのである。つまり、現在は、「世界共同体の完成と崩壊」という「1600年に一度の大転換期」であり、今後は、「ゼロ金利発生の主因とも言えるデリバティブ」が完全崩壊を見せる展開のことである。
そのために、今後の注意点としては、「デリバティブやデジタル通貨が創り出した金融のブラックホール」に関して、「大量のデジタル通貨が、今後、どのような形で実体経済に浸みだしていくのか?」が指摘できるものと感じている。つまり、「中央銀行の資金繰り」において、「最後の手段である紙幣の増刷が、どのようにして実施されるのか?」ということである。
あるいは、「1991年のソ連」を参考にしながら、「国債価格の暴落が、その後、どのような変化を引き起こすのか?」に注目することでもあるが、現在の状況としては、「日銀の国債保有額が、全体の50%を超えてきた」という報道のとおりに、「日銀の限界点が見え始めるとともに、間もなく、本格的な国債価格の暴落を待っている段階」とも言えるようである。(2022.12.20)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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