米国トップ、韓国6位、日本8位……
- 2023年 1月 19日
- 評論・紹介・意見
- 国力小原 紘朝鮮半島
韓国通信NO712
昨年末発表の『USニューズ&ワールド・レポート』は韓国の国力は世界第6位と報じた。軍事力・経済力・外交力にもとづく総合評価とされる。日本は個人所得、国力でも韓国に後れをとった。
あらためて「国力」について考えた。
<国力ランキングを読み解く>
ランキングは、首位のアメリカに続き、中国、ロシア、ドイツ、イギリス、韓国、フランス、8位に日本、アラブ首長国連邦、イスラエルと続く。
10か国のうち核保有国は6か国。4ヵ国がNATO加盟国である。GDP11位だが国力3位のロシアが目を引く。明らかに軍事力中心の評価だといえる。
一方、「幸福度ランキング」ではイスラエルを除くすべての国力大国はベストテン外である。国力があっても幸せではない国民とはため息がでるが、日本の幸福度54位と59位の韓国は何とも情けない。
ちなみに『USニューズ&ワールド・レポート』は、韓国の国力を次のように説明する。
韓国は「1960年代以降、地道に成長を続け、貧困の減少を経験し、現在は世界有数の経済大国の一つとなった。世界最大規模の国民総貯蓄(GNS)と高い水準の外貨準備高を誇り、ここ数年間、家計可処分所得が増加した。国際連合、G20、東南アジア諸国連合、世界貿易機関など多くの国際機関への加盟」が評価された。
疑問の多い国力ランキングだが、いずれにしても韓国がイギリス、フランスと肩を並べたばかりか日本の上位に評価されたのは興味深い。
<いま戦争前夜の朝鮮半島>
冷えきった日韓関係が「小康状態」「休戦状態」になったのは北朝鮮情勢が大きく関わっている。事実、連日韓国から伝えられる報道は戦争前夜と思わせるものばかり。米韓日共同軍事演習が発端となった北朝鮮のミサイル発射で、半島の緊張が一挙に高まった。
北側が自衛と称しミサイルと核の存在を誇示すれば、韓国側は「一戦を辞せず」と応じ、双方は先制攻撃まで公言する。繰り返される舌戦は激しさを増すばかりで、全くの泥沼と化した観がある。戦争を危惧する声にもかかわらず尹大統領は意に介せず、抑止力に「核保有」まで言い出すというエスカレートぶりだ。
「売り言葉に買い言葉」。感情的な対応を見ていると、いつボタンを押されてもおかしくない状況である。対岸の火事と考える日本人も多いが、ウクライナ情勢に劣らず事態はひっ迫している。「敵基地攻撃」で北朝鮮との対決姿勢を明らかにした日本が戦争に巻き込まれる可能性はかつてなく大きくなった。
国力ランキングの話題からそれてしまったが、コロナ感染を放置したまま、国力6位の韓国と8位の日本は軍備増強を繰り広げ、破滅の道をひた走っているように見える。
<平壌宣言の精神に立ち戻る>
敵基地攻撃保有が戦争抑止になるという理屈だか、双方がミサイルを撃ち合えばどうなるのか。国民を脅して軍事費(防衛費)増額の議論をしている場合ではない。事態はもっと深刻だ。緊急にわが国がすべきことは、頭に血が上った南北両首脳に戦争を思いとどまらせることではないのか。危機に便乗した姑息な安全保障論議をするより、「平壌宣言」をもう一度読み直して北朝鮮とどう向かい合うべきかが求められている。
【日朝平壌宣言】2002.9.17
両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した。
1.双方は、この宣言に示された精神及び基本原則に従い、国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注することとし、そのために2002年10月中に日朝国交正常化交渉を再開することとした。
双方は、相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現に至る過程においても、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した。
2.日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。
双方は、日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施し、また、民間経済活動を支援する見地から国際協力銀行等による融資、信用供与等が実施されることが、この宣言の精神に合致するとの基本認識の下、国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。
双方は、国交正常化を実現するにあたっては、1945年8月15日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議することとした。
双方は、在日朝鮮人の地位に関する問題及び文化財の問題については、国交正常化交渉において誠実に協議することとした。
3.双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。また、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。
4.双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した。
双方は、この地域の関係各国の間に、相互の信頼に基づく協力関係が構築されることの重要性を確認するとともに、この地域の関係国間の関係が正常化されるにつれ、地域の信頼醸成を図るための枠組みを整備していくことが重要であるとの認識を一にした。
双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。
朝鮮民主主義人民共和国側は、この宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアムを2003年以降も更に延長していく意向を表明した。
双方は、安全保障にかかわる問題について協議を行っていくこととした。
小泉首相と金正日国防委員長が交わした「宣言」は、今日の状況からは考えられないほどに平和志向と誠実さにあふれ、その決意は感動的でさえある。現在でも有効な宣言の履行をあらためて両政府に求めたい。
<平和の使節団を送ろう>
平和のための「使節団」ピースボートの出番。
(下写真)新たに就航したピースボート/パシフィック・ワールド号 乗船定員1950人
2001年、平壌宣言の前年、ピースボートで北朝鮮を訪れたことがある。「宣言」から21年、平和使節団の派遣を提案したい。北朝鮮との国交正常化を望む人なら与党議員でも乗船できる「平和の船(ピース・ボート)」である。
敵を作ることに忙しい尹錫悦大統領やバイデン米大統領、岸田首相の顔色をうかがう必要はない。戦争は国がしでかすものだが、平和を作るのは私たちだ。その思いが詰まった「平和の船」である。
<あと書き>
金正恩総書記は私たちの使節団と会うだろうか。
使節団の熱意と平和への本気度が伝わるなら十分可能だ。使節団派遣の経費は原則参加者負担とし、平和を願う全国の市民が資金カンパで支援する。増額防衛費43兆円に比べたら破格に安いお買い物だ。ピースボートは日韓共同ツアーの経験がある。もちろん韓国市民の乗船も大歓迎したい。
新年一回目の通信。寝言と笑われそうだが、平和のために何かできないか、その思いをお届けした。
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