細田博之の密室での弁明、そりゃ国民の耳には聞こえない。
- 2023年 1月 26日
- 評論・紹介・意見
- 澤藤統一郎統一教会
(2023年1月25日)
立法・行政・司法、各部門のトップを「三権の長」と呼ぶ。立法府である衆院と参院に上下関係はないから、「三権の長」とされる人物は4人いることになる。勘違いしてはならない。 「三権の長」 だからエラいわけではない。責任が重いということなのだ。行政と司法の長は天皇からの任命というバカげた手続を経ることになるが、衆参両院の議長は言わば主権者国民による任命。その地位はもっと重んじられてしかるべきである。
ところがいま、衆院議長となっている細田博之の、その地位にふさわしからぬ疑惑が公然たる話題となっている。セクハラ疑惑、公選法違反(運動員買収)疑惑、そして統一教会との癒着疑惑である。もちろん、「火のないところに煙は立たない」は必ずしも真ではない。しかし、報じられているところの具体性や細田の対応を見る限りでは、いずれの疑惑も限りなくクロに近い。
どの疑惑についても、「重んじられるべき地位にある人に対しては、その地位にふさわしい敬意があるべきで、単刀直入の追及は控えるべき」だというのは、どこかの国の倒錯した論理。民主主義を標榜する社会では、重要な立場にある人ほど徹底した疑惑の解明が必要である。
安倍晋三に近い立場にあった細田博之の統一教会癒着疑惑である。2019年10月教団トップの韓鶴子総裁が出席した名古屋での関連団体イベントでは、満面の笑みでお世辞をたれて「きょうの盛会、会の内容を安倍首相に早速報告したい」と述べてもいた。
この衆院議長と統一教会との癒着の実態解明は、既に国民の一大関心事となっている。にもかかわらず、細田はこれを明らかにすることを拒み続けてきた。逃げおおせると思ってきたようである。脛に傷持つ自民党も隠し通したい。逃走の幇助を続けてきた。
「昨年9月に自民党が公表した党所属国会議員と教団との接点調査については、自民党員でありながら、議長就任に伴って国会の自民会派を抜けていることを理由に調査対象外となった」と報じられている。細田の説明責任をめぐり、自民党総裁としての対応を問われた岸田文雄は「三権の長に、総裁が何か指示や働きかけをするのは三権分立の考え方からしても問題を含む」とした経緯もあるという。細田自身も「衆院議長」の立場を「隠れみの」として、説明はしない姿勢。ご冗談は、ほどほどに。
これまで細田は、統一教会との関係として、「集会参加8回と会合への祝電3件」だけは認めてきた。が、本当にそれだけか。その具体的な関わりの内容についての説明は頑なに拒んできた。疑惑を追及する側は、国会で質問に答えよ、少なくとも記者会見で記者の質問に答えよ、と要求してきた。
その綱引きにおける暫定措置として、昨日、細田は議長公邸で衆院議院運営委員会の6会派代表による「懇談」形式の質疑に応じ、統一教会と自身の関係について語った。質疑は約1時間、冒頭の写真撮影を除き非公開で行われた。非公開だから、彼が何をどう語ったのか、よく分からない。これを知る手段としては、出席した衆院議運の委員がそれぞれに記憶を述べた内容をつなぎ合わせる以外に、方法はない。
こうして、「細田博之、かく語りき」とされる幾つかの内容が報道されている。例えば、次のような内容。
「教団との関係は、何をどうしてくれだとかそういう要望はなかった。淡々としたもので、具体的な要望はなく、やましいような付き合いではなかった」
「議長就任前も後も支援の見返りに政策をゆがめることは決してありません」
「自民党清和会(現安倍派・当時細田派)会長だった2016年の参院選で、教団票を差配したとの指摘があるが、思い当たる事実はない」
「安倍と教団との関係の近さについて実感はしていたが、誰から聞いたということではない」
「教団と安倍氏は、大昔から関係が深い。こちら(自分)は最近だ」
「これまで公表している以上の接点はない」
「呼ばれた会合には行ったが、具体的な要望はなかった」
「19年の関連団体イベントで、『きょうの盛会、会の内容を安倍首相に早速報告したい』と述べたのは、安倍氏と近い団体と知っていたのでリップサービスで言った。実際は報告していない」
共産党の塩川鉄也は「反社会的団体である旧統一教会にお墨付きを与えたことへの反省」をただしたが、細田からの直接の答えはなかったという。
各会派の質問は、事前に細田に通告されていた。「質疑」というよりは、「弁明の機会を与えただけ」という印象。「懇談」終了後、細田は今後も記者会見はしない考えを示し、自民党もこれでおしまい、という態度。維新が自民を支持している。
とうてい、これで幕引きとしてはならない。国権の最高機関とされる議会の、それも衆院の議長の疑惑である。密室の「懇談」で、不透明のままお茶を濁して終わりとすることができようはずはない。
細田博之よ、公の場で堂々と語れ。説明責任を果たせ。記者の質問にも誠実に応えよ。逃げおおせると思うな。このままでは国民が納得しえない。こんな情けない議長のもとでの国会の審議には信が措けない。民主主義の権威に傷が付くばかりではないか。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2023.1.24より許可を得て転載
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