本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(404)
- 2023年 4月 1日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
負の資産効果
現在は、「米国」を中心にして、世界的な「負の資産効果」が働いている状況とも思われるが、一方で、今までは、反対に、「正の資産効果」が働いていた状態、すなわち、「株価や債券価格、あるいは、土地価格などの上昇した資産の売却などにより、消費や投資などの支出が増えていた状態」だったことも見て取れるのである。しかし、現在では、前述のとおりに、「2022年」に顕著となった「株価や債券価格、あるいは、不動産価格の下落」などにより、「金融システムの構成部分」である「政府や中央銀行」、あるいは、「民間金融機関」や「民間企業と個人」などの全てにおいて、「収入減と支出増」という「資金的なひっ迫状態」に見舞われているものと思われるのである。
より詳しく申し上げると、今までは、「政府や中央銀行の資金繰り」に関して、「財政ファイナンス的なリフレーション政策」、すなわち、「中央銀行が、民間部門から資金を借りて国債を買付けることにより、超低金利状態を維持する政策」が実行可能だったが、現在では、「民間の金融機関」のみならず、「企業や個人」までもが、「金利やインフレ率の上昇」により、「支出コストの上昇」に見舞われていることも理解できるのである。
その結果として、現在では、「政府と中央銀行」に対して、強烈な「資金繰りの問題」が発生している可能性が想定されるが、実際のところ、「日本」においては、「日銀の共通担保資金供給オペ」という「日銀が民間金融機関に資金を貸し出し、国債を買い付けることにより、金利の低下を目論む政策」までもが実施されているのである。つまり、「ありとあらゆる手法を駆使することにより、金利上昇を抑えたい思惑」が存在するものの、一方で、このことが、「急速な資金ひっ迫」を引き起こしている可能性も想定されるのである。
より具体的に申し上げると、現在のような「2年国債と10年国債の逆イールド現象」については、典型的な「国債の買い支え」が主な原因として指摘できるものと思われるために、今後の注目点としては、「1991年のソ連」のような崩壊パターン、すなわち、「最初に、長期国債の買い手が消滅し、その後に短期国債の買い手が消滅したときに、紙幣の増刷が始まる展開」が指摘できるものと考えられるのである。
つまり、現在は、「金融システムを構成するほとんどの部門で、負の資産効果が働き、資金繰りがひっ迫し始めている状況」とも思われるが、前述のとおりに、このことは、今後、「中央銀行が最後の貸し手となり、紙幣の増刷を始める状況」が予想されるとともに、現時点では、「時間的な余裕」が消滅し始めている段階のようにも感じられるのである。(2023.3.6)
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貴族的階級と僧的身分
現在の「世界的な金融混乱」については、「暴力政策に対する貨幣の敗北」という、今から100年ほど前の「シュペングラーの予言」のとおりの状況とも思われるが、実際には、「中央銀行の創設以来、大膨張を続けた世界のマネーが、最終段階で、デリバティブのバブルを発生、そして、崩壊させている状況」のことである。別の言葉では、「1971年のニクソンショック」以降の「信用本位制とでも呼ぶべき通貨制度」において、「デジタル通貨と金融商品の急激な成長により、グローバル共同体が形成された状況」のことである。
そのために、今後の展開についても、「シュペングラーの予言」が気になる状況でもあるが、この点については、「マネーの歴史」と「文明法則史学」を加味することにより、より正確な予想が可能なものと感じている。具体的には、「貴族的階級と僧的身分」という「シュペングラーの説明」を理解することでもあるが、実際には、「西暦400年前後の西ローマ帝国崩壊」以降、「共同体の規模が、時間と空間との関係性において、どのような発展を繰り広げたのか?」を理解することである。
より詳しく申し上げると、「西ローマ帝国の崩壊」は、それまでの「貴族的な社会生活」に慣れ親しんでいた人々が、「貨幣の実質的な消滅」に見舞われたことにより、「価値観の変化」を強制された状況だったものと思われるのである。別の言葉では、数十年、あるいは、数百年という時間をかけて、徐々に、「僧的な精神生活」に慣れ親しんでいった可能性のことである。
そして、この時の注目点は、「共同体の規模拡大」における推進力でもあるが、最初は、「宗教などによる精神面でのレベル向上」であり、実際には、「日本の奈良時代や平安時代に、貴族や公家という階級が誕生し、神社仏閣の建立に励んだ展開」のような状況のことである。また、その後の「西暦1200年から2000年までの西洋の時代」においては、「物質文明」が発展するとともに、現在では、「先進各国で、ほとんどの人々が、かつての王侯貴族のような生活水準を享受している状況」とも言えるのである。
そのために、今後の展開としては、最初に、「デリバティブのバブル崩壊」に驚愕した人々が、慌てて、「換物運動」に走り出すことにより、世界的な「ハイパーインフレ」や「グローバル共同体の分裂」が発生するものと考えている。ただし、その後の注目点としては、「歴史の繰り返し」に関して、「11次元にまで進化した自然科学」の応用により、「社会科学の次元が、どこまで向上するのか?」が、大きなカギを握っているものと感じている。(2023.3.7)
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民族の大移動
現在は、1600年前の「西ローマ帝国の崩壊時」と酷似している状況であり、この点に関して注目すべき現象は、「西暦375年」から始まったと言われる「ゲルマン民族の大移動」だと考えている。つまり、「移動の前半部分」では、「1600年後の日本」などからも明らかなように、「都市への人口移動」が顕著となったものの、その後、後半部分では、「大都市に住めなくなった人々が、地方への移住を始めた」という状況だったのである。
また、民族大移動の期間については、「西暦300年代から700年代」という意見もあるために、この点に注意しながら、今後の展開を見ていきたいと考えているが、現時点で注目すべき事実は、やはり、「シュペングラーが100年ほど前に予言した、2000万人を超えるほどの大都市が、世界各地に誕生した現象」とも言えるようである。つまり、現在は、「民族大移動」の「前半部分」が終了するとともに、「後半部分」が始まったばかりの段階のようにも思われるのである。
そして、この要因としては、「村山節の文明法則史学」が指摘する「東西文明の交代」や「聖書」が指摘する「神と冨とに、同時に仕えることができない人間の宿命」などが指摘できるものと感じている。あるいは、「人知」が及ばない「天の計らい」が存在する可能性も考えられるようだが、この点については、今後、「後世に生きる人々」が、詳しく検証してくれるものと考えている。
このように、現在は、いろいろな観点から、「1600年に一度の大転換期」に遭遇しているものと思われるが、今後の注目点としては、やはり、「大膨張した世界のマネーが、今後、どのような運命を辿るのか?」、あるいは、「1600年前と同様に巨大な建築物で充満した大都市が、今後、どのような変化を見せるのか?」ということだと感じている。つまり、「大都市に住みづらくなる要因」としては、「マネーの消滅がもたらす費用の増大」などが挙げられるものと思われるのである。
より詳しく申し上げると、「未曽有の規模にまで拡大したデジタル通貨が、今後、どのような運命を辿るのか?」ということでもあるが、この点については、今後、「金融界の白血病」、すなわち、「紙幣が、コンピューターネットワークの中を流れることができない事実」が気に掛る状況である。あるいは、「民族間の紛争」が激化することにより、「信用」が完全消滅し、現在の「信用だけを本位とした通貨制度」が、根本から崩壊する可能性も、きわめて高くなっているようにも感じている次第である。(2023.3.8)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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