ミャンマー、ティンジャン(新年の祭り)の大虐殺 ―軍にとって心強いロシアと中国の後ろ楯
- 2023年 4月 13日
- 評論・紹介・意見
- ミャンマー野上俊明
一年で最大のお祭りである、新年の水かけ祭りを13日にひかえているミャンマーで、11日、国軍・空軍は、女性や子供たちも混じる村人が多く集まっているところを無差別に空爆し、110名を超える死者が出たとのこと。国内外各紙の報道によれば、軍事政権のスポークスマンは空爆を認めたうえで、犠牲が多く出たのは抵抗勢力が現場に貯蔵していた爆発物が誘爆したためだと臆面もなく噓をいってのけている。また被害者は軍に抵抗する反乱分子たちであるから、爆撃もやむを得なかったと、残虐行為を正当化したそうである。
ロシア製や中国製の軍用機や武器が使用されている BBCほか
爆撃を受けたのは、民主派勢力が軍事政権に激しく抵抗し、対抗権力を打ち立て自主管理している、ミャンマー北部ザガイン管区にあるカンバル郡区パジギ村。この日午前8時ころ、国民統一政府の地元の事務所の開所式に人々が集まったところを狙われたのである。子ども20人を含む、100名以上が犠牲となった。犠牲者の遺体はバラバラになっているので、身元の確認が困難であるという。当然ながら、地元に潜む軍の内通者が、事務所のセレモニーの場所と時間を事前に密告したのであろう。地元のメディアによれば、シェット戦闘機がまず爆弾2個を投下し、その後戦闘ヘリMi-35が飛来して機銃掃射したという。ウクライナのロシア兵と同じく、相手が民間人であると知って殺戮を行なっているのである。
軍は地上戦では敗北して多くの戦死者を出し、国境地帯では多くの前哨基地を奪われているので、昨年半ばから、作戦を変更している。抵抗の拠点となっているザガイン、チン、マグェの各地方や辺境の少数民族地域を対象に、航空機による空爆や榴弾砲による砲撃、村ぐるみの焼き討ちを容赦なく行なっている。昨年10月にもカチン州で野外コンサートに集まった民間人を標的に空爆、60名以上の犠牲者を出している。
ここはウクライナではない。しかしロシアから供与された最新兵器が使われている。 RFA
この3月に国民統一政府(NUG)が発表したところでは、クーデタ以降約2年間で市民5人以上が殺害された虐殺事件は64件にのぼり、総計は766名に達するという。のちに軍から脱走し、民主派に合流した元国軍兵士によれば、「国軍には残虐な方法で市民を殺害することを専門的に訓練された部隊がある。人々に恐怖心を与えて、抵抗勢力を委縮させるのが目的だ。これを指揮しているのが、政権ナンバーツーのソ―ウイン副司令官だ」という。筆者がヤンゴンでよく聞いた話として、軍には孤児を集めて専門的に訓練して住民殺戮を行なう部隊があるという。かれらは家族の愛を知らないので、平気で人を殺すというものである。真偽のほどは確かめようがないが、子どもにでも機関銃を平気でぶっ放すというから(ミャンマー人と結婚した日本人妻の方の目撃証言)、さもありなんである。
この4月、スーチー氏率いるNLDは、政党登録を拒否したため再び非合法化された。軍事政権は、翼賛政党だけでなるべく早く総選挙を実施して、合法政権に衣替えしたいのであろうが、民主派の不屈の抵抗は続いている。BBCが非営利調査団体ACLEDによるデータを分析したところ、2021年2月から
ザガイン管区ミンムー郡区、タータイン村の住民の遺体を回収するレジスタンス戦闘員 イラワジ
2023年1月までに、ミャンマー軍は空爆を少なくとも600回行っているという。それだけ抵抗勢力の抗戦能力が衰えていないことの証拠でもある。ただ空爆や砲撃の結果、国内の避難民が160万に達し、人道的な危機に陥っている。国内の人口の半分程度が、貧困線以下に転落しており、空前の危機といえるであろう。ウクライナ並みとはいわないが、その1000分の1でもミャンマーに援助を振り向けてくれるよう、国際社会に強く強く訴えたい。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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