改憲派が多数。でも、改憲を急ぐな 世論調査で国民の憲法意識が明らかに
- 2023年 5月 11日
- 時代をみる
- 岩垂 弘憲法
5月3日(祝日)は77回目の憲法記念日だった。マスメディアの各社は、この日を記念して日本国憲法に関する全国世論調査を行ったが、私にとっては、その結果は極めて興味深い内容だった。一言でいえば、「国民の間では改憲派が多数。しかし、改憲は急がなくてもよいという意見が多数」ということになろうか。
憲法に関する全国世論調査を行ったのは朝日、毎日、読売の新聞各紙と共同通信、それにNHKの5社。
国民の過半数が改憲に賛成
各社とも質問項目は多岐にわたるが、私にとって関心があったのは、まず、改憲に対する賛否だ。それに関する各社の世論調査の結果はこうだ。
<共同>「あなたは憲法を改正する必要があると思いますか」という問いに対する回答は、「改正する必要がある」24%、「どちらかといえば改正する必要がある」48%、「改正する必要はない」8%、「どちらかといえば改正する必要はない」19%、「無回答」1%。要するに、改憲派は72%に達する。
<読売>「あなたは、今の憲法を、改正する方がよいと思いますか、改正しない方がよいと思いますか」という質問に対する回答は、「改正する方がよい」61%、「改正しない方がよい」33%、「答えない」5%。
<朝日>「いまの憲法を変える必要があると思いますか。変える必要はないと思いますか」との質問に対する回答は、「変える必要がある」52%、「変える必要はない」37%。
<NHK>「今の憲法を改正する必要があると思うかどうか」という問いに対する回答は、「必要があると思う」35%、「必要はないと思う」19%、「どちらともいえない」42%。
これらの結果から勘案すると、国民の憲法に関する意識では、顕著な傾向が派生しているように見受けられる。それは、国民の過半数が改憲に傾ききつつあるということだろう。
嫌われた?岸田首相
ところで、毎日新聞の全国世論調査は、なんとも興味深い結果を示していた。
同紙の調査には、他社の調査にはない質問項目があった。それは「憲法改正についてお尋ねします。岸田首相の在任中に憲法改正を行うことに賛成ですか」というものだった。それに対する回答は、「賛成」35%、「反対」47%、「わからない」17%。なんと、岸田首相が在任中に改憲を行うことに反対する人が、国民のざっと半数にも達するのだ。
一方、改憲に熱心な読売新聞の世論調査の最後の質問項目は、「あなたは、岸田首相の任期中に、憲法改正が実現すると思いますか、思いませんか」だったが、回答は「思う」10%、「思わない」87%、「答えない」3%だった。
どうやら、岸田首相、憲法問題では嫌われているようである。
改憲機運は高まらず
意外な調査結果もあった。国民の過半数が改憲に傾きつつあるに、その一方で、「改憲は急ぐ必要はない」と回答した国民が多かったことである。調査結果を見てみよう。
まず、朝日新聞。「国会での憲法改正の議論を、急ぐ必要があると思いますか、急ぐ必要はないと思いますか」といった質問の回答は、「急ぐ必要がある」36%、「急ぐ必要はない」55%だった。
共同通信の調査には「岸田文雄首相は自身の自民党総裁任期である来年9月までの憲法改正に意欲を示しています。あなたは、国民の間で改憲機運は高まっていると思いますか、高まっていないと思いますか」との質問項目があった。それに対する回答は、こうだ。
「高まっている」4%、「どちらかといえば高まっている」24%、「高まっていない」22%、「どちらかといえば高まっていない」48%、「無回答」1%。
「高まっていない」「どちらかといえば高まっていない」合わせて、なんと70%である。
改憲志向に傾いている国民からの「改憲は急ぐ必要はない」「改憲機運は高まっていない」という回答は、私にとっては意外な反応であった。ウクライナ戦争は激化する一方で停戦の見通しはなく、そればかりか、政治家やメディアによって、「台湾有事や北朝鮮の核ミサイル開発で日本が戦争に巻き込まれる恐れがあるから、日本も軍備の大幅拡大、敵基地攻撃能力の保有を急ぐべきだ」と声高に叫ばれてきたので、国民の間にも、「改憲を急げ」という機運が深く浸透しつつあるのでは、とばかり思ってきたからだった。
しかし、国民は改憲には慎重である。変動激しい世界とアジアの情勢を冷静に見極めようという国民が少なくないのではないか、あるいは、平和憲法がそれなりに国民の間に定着していることの表れではないか、と思わざるをえなかった。
ともあれ、護憲派の諸氏に伝えたい、望みなきにしもあらず、と。私としては、護憲派がこれから先、時間をかけて全国的な護憲運動を地道に展開すれば、護憲派が国民の過半数を占める可能性は十分にありうるのではと考えるからである。
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