まさかVogueが出てくるとは
- 2023年 6月 8日
- 評論・紹介・意見
- 藤澤豊
女子教育に対するタリバン政権の迷走が気になって、本音はどこにあるのかとWebで漁ったら、驚くことにVogueの記事がでてきた。Vogue、知らない雑誌じゃない。ニューヨークに駐在していたとき本屋でVogueとアンアンを立ち見していた。パラパラとページをめくって、きれいな女性の写真をさっとみるだけで、文章は斜め読みしただけだった。どっちも数ある女性向けのファッション誌だが、Vogueと25ansは他にはない良質な文化を感じさせるものがある。社会問題、それも遠く離れたアフガニスタンの宗教がらみの教育問題をファッション誌で目にするとは思ってもみなかった。
記事を読んで、日本の女性誌との違いが気になってWebにもどった。GoogleでVogueと入力するとVogue Japanがでてくる。そこには日本の女性誌と変わらない内容の案内があるだけで、タリバン政権の女子教育に関する記事が掲載されそうなことは書いていない。Vogue Japanが邪魔してVogueにたどり着けない。どうしたものかと考えて、ためしにHistory of Vogueと入力してみた。リストアップされたものをざっとみいった。Britannica.comの説明が簡潔で分かりわかりやすい。
「Vogue, influential American fashion and lifestyle magazine. It was founded in 1892 as a weekly high-society journal, created by Arthur Baldwin Turnure for New York City’s social elite and covering news of the local social scene, traditions of high society, and social etiquette; it also reviewed books, plays, and music」
https://www.britannica.com/topic/Vogue-American-magazine
機械翻訳すると下記になる。
「Vogue、アメリカの影響力のあるファッション・ライフスタイル雑誌。1892年、アーサー・ボールドウィン・ターヌアがニューヨークの社交界のエリート向けに創刊した週刊ハイソサエティ誌で、地元の社交界のニュース、上流社会の伝統、社交界のエチケットを取り上げ、本や演劇、音楽のレビューも行っていました」
東京の下町で生まれて、ばたばた走り続けてきただけのノンキャリアには縁のない「社交界のエリート」と「ハイソサエティ」がちょっと目にさわる。
New York TimesやNew Yorker、Atlantic、Economist、そしてGuardianやLe MondがQuality paperの例として挙げられるが、Vogueは女性読者に向けたQuality paperの一誌なのかもしれない。
Vogueと入力して表示されたリストのトップは下記の通り。
Vogue Japan
https://www.vogue.co.jp
【VOGUE JAPAN】ファッション・ビューティー・セレブの …
ファッション誌『VOGUE JAPAN』の公式サイト。世界の最新ファッションやコレクションをはじめ、ファッションモデルやビューティ、ジュエリーなど、様々なニュースや …
Fashion
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Beauty
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女子教育に対するタリバン政権の迷走とその原因を掲載したVogueからは想像できないリストになんともいいがたい寂しいものを感じた。Vogue Japanだから?いいや、ちょっと後ろに引いてみれば、そもそも日本にクオリティペーパーと呼べるものがあるとも思えないし、Vogue JapanはVogueじゃなくて、日本の雑誌じゃないかと変に納得してしまうのが情けない。
Vogueに掲載された記事は下記の通り。
Islam Doesn’t Deny Women Education, So Why Does the Taliban?
イスラム教は女性の教育を否定していない、ではなぜタリバンはそうするのか?
https://en.vogue.me/culture/afghanistan-taliban-women-school-ban/
CULTURE SEPTEMBER 26, 2021
記事の要点をリストアップすると、
コーランは性別に関係なくすべてのイスラム教徒に読み、考え、熟考し、知識を追求するよう命じており、預言者ムハンマドは男女ともに宗教的義務として教育を奨励したと、ハイファー・ジャワッド博士は著書『イスラムにおける女性の権利』で説明しています。ハイファー・ジャワド博士は、著書「The Rights of Women in Islam: An Authentic Approach」の中で次のように説明しています。「イスラム教が女性に与えた最も重要な権利の1つは、教育を受ける権利です」と彼女は書いています。
アフガニスタンを「イスラム」国家と宣言したタリバンは、なぜ同国の女性たちが宗教上の義務を果たすことを妨げることができるのか。その答えは、宗教的なものではなく、家父長的な体制が守ろうとする文化的な性別役割にある。これらの社会における女性の目的は、指導者である男性によれば、料理や掃除などの家事をこなしながら、貞淑に成長し、結婚(恋愛はほとんどない)し、子どもを産むことである。学校教育は、家庭の外での仕事の機会や雇用への扉を開く可能性がありますが、この伝統的な考え方を脅かすものです。
こうした文化的な考え方は、しばしば宗教的な理想に見せかけられる。しかし、イスラム教は7世紀のアラビア社会で女性の地位を向上させた信仰であり、多くのイスラム教徒は、この改革の精神は今後も続くと確信している。権威主義的な過激派政権のもとでは、女性の権利は進歩するどころか後退しているのだ。
タリバンの指導者たちは、世界の目が自分たちに注がれていること、特に女性の権利の扱いについて注意深く見ていることをよく理解している。彼らは、女性の学校教育を全国的に禁止することを発表していない。ただ、「安全保障上の懸念」が解決されれば、再開するというだけである。しかし、タリバンの実績からすると、この遅れは数カ月から数年単位で続く可能性がある。この「安全保障上の懸念」とは、教育を受けておらず家父長的な慣習に深く根ざした兵士の多くが、女性の安全な通学を許可する命令に従わないかもしれないという高位指導者の懸念のことかもしれない。
分かりやすい記事だが、ろくな知識もなしでと非難されるのを覚悟で、簡単に言わせてもらえれば下記になる。
イスラム教は東西交易で財をなした都市国家の商人たちの宗教だった。大航海時代が東西交易を置きざりにし、都市国家の力が衰退してイスラム教が砂漠の民の部族の掟に合せるかたちで変形していった。タリバンがアフガニスタンの政治権力を握る原動力となったのは部族社会で生まれ育った戦闘員だった。数世代にわたって戦闘にあけくれた戦闘員の多くが基礎教育すらまともに受けていないだろう。政府の要職にいる教育を受けた人たちは女子教育が国家建設に必須であることを分かってはいるが、戦功のあった部族社会の掟や慣習からしか社会を見れない戦闘員の主張をむげにはできないということだろう。
似たようなことはどこにでも日本にもある。
2023/4/13
Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)にアップした拙稿に加筆、編集
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion13064:230608〕
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