本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(421)
- 2023年 8月 4日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
金利上昇のインパクト
現在では、日本においても、「金利上昇のインパクト」が危惧され始めたが、この点に関して重要なポイントは、かつて「市井の経済学者」と呼ばれた「高橋亀吉」のコメントだと考えている。具体的には、仮に「3%の金利上昇」を考慮する場合でも、「出発点が5%なのか、それとも、0%なのかで、大きな違いが存在する」というものであり、特に、今回のような「1999年から約24年間も継続した実質的なゼロ金利」や「世界的なマイナス金利」という異常事態を経た後の金利上昇については、前代未聞の規模で、「歪みの是正」や「金融大混乱」を発生させるものと感じている。
そのために、現時点で必要なことは、「金融システム」や「国家財政」の検証であり、実際には、「どの部分に、大きな歪みが発生しているのか?」を理解することである。つまり、「民間の企業や個人における不動産投資」や「民間金融機関の保有するOTCデリバティブ」がもたらす「巨額な損失」であり、また、「中央銀行のバランスシートにおける脆弱性」や「国家財政の行き詰まり」などを理解することである。
より具体的には、「金利上昇がもたらす不動産価格や国債価格の急落」を考えることであり、実際のところ、「今回は、約24年にも及ぶ実質的なゼロ金利により、人々の意識と行動が、大きく変化している状況」とも言えるのである。つまり、「デジタル通貨が、『現代の神様』のような状態となり、きわめて大きな影響力を行使している状況」となっているために、今後は、この点に、きわめて大きな反動が発生するものと考えられるのである。
より詳しく申し上げると、「世界的なOTCデリバティブの破綻」などにより「急激な金利上昇が発生する可能性」を想定しているが、この点については、「今後の日銀の資金繰り」で判断可能なものと感じている。つまり、「1991年のソ連」のように、「国債の買い手が消滅することにより、一挙に、紙幣の増刷に追い込まれる展開」を想定しているが、今回の「違い」としては、やはり、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行可能性」とも言えるようである。
つまり、「金融界の白血病」とも言える「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができない現実」を避けるために、「紙幣」ではなく、「CBDC」を代替させようとする思惑のことである。ただし、この時の重要なポイントとしては、「お金の重要な役割」である「お金(マネー)と実物資産との交換」に関して、「急激な換物運動を促進させる効果」を意味する「貨幣の流通速度が急上昇する可能性」とも考えている。(2023.7.6)
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四苦八苦の解消法(2)
人生の「四苦」としては、「生きる苦しみ」の他に、「老いる苦しみ」や「病の苦しみ」、そして、「死の苦しみ」が存在するが、これらの苦しみに関しては、私自身の「心の仮説」が有効な対処法のようにも感じている。つまり、神様が創られた「大自然」の一部として、「人間の身体」が存在し、当然のことながら、老いたり、病んだりしながら、死に向かうことが、厳然たる「大自然の摂理」とも言えるわけである。
しかし、一方で、「人間の心や魂」に関しては、「肉体に魂が入った時に、心が生まれる可能性」が想定されるとともに、「輪廻転生」という言葉のとおりに、「魂が永続する可能性」も考えられるのである。別の言葉では、「西洋文明の唯物論的な価値観」においては、「この世における『地位や名誉、あるいは、お金』などの人爵が、最も大切なものである」と理解されていることも見て取れるのである。
そして、これから想定される「東洋文明の唯心論的な価値観」においては、「弘法大師の教え」のように、「天爵」、すなわち、「精神的なレベル」を上げることが、人生の目的となる可能性も考えられるのである。つまり、「人生の四苦八苦」に関しては、「肉眼」から見ると「苦しみ」でありながら、「心眼」から見ると「楽しみ」となる可能性も指摘できるのである。
より詳しく申し上げると、「さまざまな苦悩を経た後に、ようやく到達できる境地」こそが、本当の意味での「悦楽」とも思われるために、昔の人々は、この点に関して、さまざまな「教え」や「物語」などを残したものと思われるのである。具体的には、「ヨーロッパの神話」や「ギリシャ哲学」、あるいは、「旧約聖書や新約聖書」、そして、「仏典」や「現代哲学」などのことである。
そして、現在では、「自由自在に、これらの書物を読むことが可能な状況」でもあるために、今後の展開としては、「人工知能(AI)」や「チャットGPT」などの応用により、「社会科学の次元上昇」、すなわち、「弘法大師などが指摘する精神レベルの上昇」が進展するものと考えられるのである。別の言葉では、「お金や文字の発明」、あるいは、「自然科学の次元上昇」などに関しては、「ライプニッツの予定調和説」のとおりに、「すべてが神の計らいだったのではないか?」と感じており、この点に関して、現在、最も重要なポイントは、やはり、「シュペングラーや村山節が指摘する歴史サイクル」に関して、より深い真理が暴かれる可能性だと感じている。(2023.7.7)
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コロナ禍とウクライナ戦争
7月9日付けの日経新聞に掲載された「カルステンスBIS総支配人のコメント」に関しては、「インフレの発生要因」について、きわめて曖昧な説明が行われるとともに、最も重要なポイントである「デリバティブの大膨張」が抜け落ちていた状況だったようにも感じている。つまり、今回の「世界的なインフレ」に関しては、「なぜ、日本で20年以上も、実質的なゼロ金利政策が可能だったのか?」などの点について、より詳しい説明が求められているものと考えられるのである。
別の言葉では、「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」の最終局面において、「なぜ、デジタル通貨が、世界的に普及したのか?」を理解することであり、また、この点に関する重要なポイントは、「民間銀行のバランスシートが、オンバランスのみならず、オフバランス(簿外)で大膨張した展開」であると考えている。つまり、「西暦2000年前後から本格的に始まり、2010年前後にピークを付けたデリバティブの大膨張」に関しては、実際のところ、「民間のメガバンクにおける、オフバランスでのバランスシート残高の大膨張」だったことも見て取れるのである。
そして、このことが、「インフレ」や「金利」などに関して、「どのような意味を持っていたのか?」を考えると、実際には、「マネーの大膨張が、金利を引き下げた状況」だったようにも想定されるのである。あるいは、「大膨張したデジタル通貨」が、「インフレ統計に含まれない金融商品」に殺到した結果として、「既存のインフレ指数」に影響が及ばなかった状況のようにも思われるのである。
また、その後の「世界的な量的緩和(QE)」に関しても、実際には、「中央銀行が、民間から資金を借り入れ、国債を買い付けることにより、超低金利状態が演出された状況」だったものと理解できるのである。つまり、「目に見えないインフレ税」が、「リフレーション政策」という「国民の気付かない方法」で課されることにより、「国民の財産が、徐々に、国家に移転した状態」だったようにも思われるのである。
そして、今回の「コロナ禍」と「ウクライナ問題」に関しては、大量に創られた「デジタル通貨」が「統計指数に含まれる商品群」に殺到する「キッカケの事件」となったものの、その結果として実施された「世界各国の中央銀行による急激な利上げ」については、実際のところ、インフレの根本原因である「約330兆ドルの世界債務」と「約600兆ドルのOTCデリバティブ」の解消には、ほとんど役立たない状況とも考えられるのである。(2023.7.10)
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