放射能汚染水を海に捨てるな!
- 2023年 8月 12日
- 評論・紹介・意見
- 『はだしのゲン』小原 紘放射能汚染水関東大震災
韓国通信NO726
<海は生命(いのち)の母>
国際原子力機関(IAEA)が福島の汚染水は「国際的な安全基準と合致」。また放射能が人体と環境に与える影響もわずかとした。だが安全基準の科学的根拠が不明なうえに人体と環境に与える影響について、「わずか」では不安を払拭したことにはならない。ドヤ顔の岸田首相を忖度するかのように多くのメディアは「後は漁業関係者の了解を残すだけ」と報道した。
オリンピック招致時、安倍首相(当時)はアンダーコントロールされていると大嘘をついた。嘘の上塗りに等しい今回の海洋放出に国内外からの非難の声は高まる一方だ。
安全と言いつくろいながら、汚染水を流しているのは日本だけではないと開き直る姑息さ。一番安あがりで安易な方法が、海への放出だということも忘れまい。
世界から原発をなくすこと、どの国も海を汚してはいけないことも。IAEAがインチキな団体に思えてきた。
8月3日、2人の仲間と駅頭に立った(左写真)。「安保法制反対」「健康保険証を廃止するな」「東海原発の再稼働を許すな」。各人がそれぞれの主張を持ち寄った。日中温度は36度を超えた。
<悲劇の国へ>
「私の人生はやり直すことはできないが、私たちの人生はやり直すことはできる」。
大江健三郎さんが亡くなる前に残した言葉である。
自分に残された時間は少ないが、皆で努力すれば目標は実現できると、集会参加者たちを励ました。その時大江さんが何を思い描いていたのか想像するほかないのだが、同時代を生きてきた私たちは実に多くの問題をかかえている。
戦争と貧困、自然環境の激変による人類滅亡の予感さえある。戦争体験も民主主義も学ばなかった首相が三代も続いたのが災いした。このまま泥船に乗せられて「一蓮托生」、地獄の淵に転落する予感さえある。
国民の声を聞く耳を持たない国民不在の政治。それでも3割の支持率をキープしているのは不思議だ。
臆面もない「戦前回帰」と「原発回帰」。物価高に苦しむ庶民の生活はもとより眼中にない。膨大な国の借金は次世代に付け回し。これでは安心して子どもを産む気にならない。最大派閥の清和会に気兼ねしたエセ宗教統一教会隠し。バイデン米大統領演出の「台湾有事」に便乗した国防費倍増計画。中国と戦争をするために沖縄を再び「捨て石」に。日本学術会議への干渉も高市元総務大臣のテレビ報道への干渉問題はいまだに闇の中だ。まだまだある。「モリ、カケ、サクラ」。眠る検察。憲法違反を裁かない最高裁判所。明らかに憲法違反だ。人生はやり直すことができないとしても、見過ごすわけにはいかない。
<核抑止を問う>
広島と長崎に原爆が投下されてから78年を迎えた。核兵器禁止条約に反対する岸田首相は核抑止論者という核保有論者である。広島出身の首相は県民の期待を裏切ったばかりか、広島サミットでは世界に向けて核の抑止力にお墨付きまで与えた。
<消えた『はだしのゲン』>
広島市の平和教育に長年使われてきた『はだしのゲン』が教材から消えた。核兵器禁止条約に反対する岸田首相の姿勢と決して無関係ではない。
ゲンは原爆の悲惨さを完膚なきまでに語り、戦争の責任と投下したアメリカの責任を厳しく追及した。戦争責任を負うべき人間たちが権力の座に居座り続けていることへの怒りもあった。そんなゲンが「戦争を知らない」世襲議員たちには邪魔になった。
漫画連載から半世紀、世界24か国語に翻訳された「世界文化遺産」的ベストセラー漫画である。発行部数は1千万部を軽く超え。日本と世界の反核運動に大きな影響を与え、核兵器禁止条約発足に貢献した。
<歴史から学ばなかった日本の不 ― 関東幸大震災から学ぶ>
『はだしのゲン』が78年前の原爆の実相を生々しく伝えるように、100年前の関東大震災と虐殺事件に正面から立ち向かい、学び、歴史として伝えようとする人がいる。
詩人で作家の石川逸子さんの最新著書『オサヒト覚え書き 関東大震災』を読んだ。「オサヒト」(明治天皇の父孝明天皇の別名という設定も興味深い)と作家が会話をしながら関東大震災の虐殺事件に迫ろうとする力作である。通常の歴史書にはないドキュメンタリータッチで事件の全貌が明らかに。作家自身の思いが込められ、歴史がより身近に感じられる。文学作品ではないが、ただの歴史書ではない。
震災から100年にあたる今年に発行された意義は大きい。今、日本各地でさまざまな角度から関東大震災を考える動きが広がっている。疎ましく感じられ敬遠しがちなテーマが身近に感じられ、時代背景を含め状況がわかりやすい言葉で解き明かされているのが特徴だ。死者への「鎮魂」でもある。一方で日本人もたくさん死んだから「同じ」と澄まし顔の人もいる。
日本政府は今日まで、つまり100年の間、真相の解明はおろか謝罪すらしてこなかった。
最終章では江東地区の労働組合活動家9名(亀戸事件)と大杉栄、伊藤野枝と甥らの虐殺事件が取り上げられている。彼らは何故殺されたのか。彼らの死は大陸への侵略と暗黒の時代に突き進もうとする時代背景と無縁ではない。そして、朝鮮人と中国人の虐殺の背景にも社会不安と軍国主義の台頭があったことが理解される。
<関東大震災を記憶する我孫子市民の会>
我孫子駅近くの神社で三人の朝鮮人が自警団によって殺害された「我孫子事件」。
久しぶりに夏祭りに出かけた。小さな町の小さな神社の周辺は身動きができないほどの人出だった。
「ここで100年前 罪もない朝鮮人が殺された…」と心のなかでつぶやいたが声に出なかった。
<100年前の殺人現場>
友人たちと「関東大震災を記憶する我孫子市民の会」を作った。具体的に何をするのか決まっていない。まず事実を伝えること。今年をスタートの年に息の長い運動を考えている。多くの市民に石川さんの『オサヒト』を読んでもらいたい。知ることから始まる「文化運動」を目指している。
『オサヒト覚え書き 関東大震災編』 石川逸子著 一葉社発行(2023/7) 定価2千円+税
初出 :「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13175:230812〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。