こいのち通信(世田谷こどもいのちのネットワーク通信) 2023年8月
- 2023年 9月 11日
- 交流の広場
- 星野弥生
言いたくないけど「暑い!」ですね。一週間前に、スイス、フランス、スペインの旅から戻りました。向こうでもみんな「暑い!」と騒いでいますが、日本の暑さに慣れている身にはなんてことはない。朝晩は涼しいくらいですから。旅先で受け取る日本からのメールも「この暑さ、何とかして!」の叫び。それに輪をかけ、さらに暑さを募らせるような話題の数々。湿気の多い暑い国に帰った24日は、福島第一原発からの汚染水をついに海に流すと決まった日。スペインの新聞もこのニュースを大きく取り上げ、友人のジャーナリストもいち早くウェブに記事を書いていました。日本の政府はあくまでも「処理水」と言っているようですが、友人は「処理された放射能汚染水」という言い方をしていました。処理水といいくるめて、いつもの「あったことをなかったことにする」常套手段は止めてほしい。「福島は完全に復興した」ことの証に使われた、あの悪夢のオリンピックを思い出します。久し振りに新聞をみたら、「次期戦闘機の第三国輸出」などと書かれていて、ん?と首を傾げます。輸出した武器で人が殺される、ということもあり得るのでしょう。憲法9条には、武力行使を、国際紛争を解決する手段としては永久に放棄する、と確か書かれていたような・・・。なんだからわけがわからなくなってきているのは暑さのせいなのでしょうか・・・。
早めに通信の7月号を出して、8月はお休みにしようと思っていたのですが、お知らせしたいこともあり、なんとか8月のしっぽに発行することにします。理由の一つは、当初総会の特別講演として企画していた、保坂区長に「世田谷の教育改革」を語ってもらう、という会が、実現可能になったことのお知らせです。毎週末の車座集会も一区切り。9月23日(土)をターゲットに、ダメもとでけやきネットを検索したら、なんと宮坂区民センターの大会議室が奇跡的に空いていたので、押さえました。第四期目を迎えた保坂区長は「教育」への意欲を語り、それならばぜひとも「こいのち」で、これからの世田谷の教育、学校をどう変えていくのか、を思いっきり話してほしいと願っていました。話を聴くだけではなく、いつものように双方向の活発な会にしたいと思います。参加と協働、ですから。親、教師、若者、こどもたち、関心のある方、どうぞお集まりください。
私も今期の保坂区制は「教育」と捉え、7月1日に開催された「教育総合会議」に参加してきました。2015年から公開シンポジウムの形で、「学びの多様性」「非認知的能力~遊びと学び」「SDG‘s」「自己肯定感」「教員をどう支えるか」等々の課題を審議してきています。今回は盛沢山で、第一部が「一人一人が輝く個才の時代」と題する、福本理恵東大教授のお話。福本さんからの「あらたな学び」の提案を受けて、区長、教育長、教育委員による意見交換。第二部は「教育大綱」に具体的に何をキーワードにして、何を盛りこむのかを、区長、教育委員たちが語り合う、というものでした。大綱、つまり教育の方向性を決めるのが教育総合会議の目標なのです。第一部で保坂さんは「不登校の子どもが世田谷には1500人いるが、学校に通っている子の中にもいろいろな問題が蓄積し、子ども自身がストレスを抱えている。正解のない問いかけに十分に応えられていない」。「探求的な学びとは、学んだこととわが身が密接に結合する学び。学びが身体性を取り戻す時期にきている」、「ここ5年くらい、今の教育の繰り返しの中では先が見えないと親も感じている。『教育機会確保法』が制定され、子どもが権利の主体であり、学校外に学びの場がある。教育自体の概念を破る新しい学びの場が必要とされ、そこに向けてたくさんの希望者がいる。学校全体を変えていくためのいろいろないい実証例がなくてはならない」と語りました。第二部の「教育大綱」に何を盛り込むか、議論の中から考えていきたい、という保坂さんは、「『子どもが子どもに関わることに意見をいう権利がある』という子どもの権利条約の視点を入れたい」、「子どもたちがまわりと力を合わせ、助け合っていく」(教室のアナキズムですね!)などと冒頭述べました。私は、自然科学者でもある澁澤委員が「個人の意見ですが」と前置きして言われたことにとても関心、共感を持ちました。「自分の生き方に気づいたのは50歳でした。小学校、中学校の時期に自分の生き方を決めなさい、といわれるのは相当にしんどい。何をトライしてもいい。見つけろといわれると辛いです」「多様性ということが言われたのは1992年のリオ・デ・ジャネイロでの環境サミット。生物多様性がなぜ必要なのかが言える人はいません。地球が多様だからとしか言えない。人間のからだは37億の細胞から成り立っていて2~3日で入れ替わる。それ以上の数の細菌がいるおかげで、消化、免疫力、自律神経の働きなどがある。人はたえず動き、世界とつながる。この空間も生物的にはつながっている。個性というけれど、全部のいのちがつながっているということを本質として考える。一緒だからこそ、違うものを認める。それが根幹にあるべきだと思う」。すごく本質的で哲学的、ですね!渋沢さんはさらに「教育大綱を子どもたちに作ってもらうのがいい。大人はアドバイスするだけ。人生はDoではなくBeだから、生き方をどうつくっていくのかが教育の現場で出来ていかなくては。総合的、俯瞰的に学び、社会を冷静に、時に批判的に見る子どもになってほしい」。こいのちにおよびしてお話を聴きたくなりました・・・。教育大綱に何を盛り込むのか、提案をもとめる参加者へのアンケートもありました。私もたくさん書いた気がしますが、忘れました。きっと教室にアナーキズムを、とか書いたのではないかしら。こいのちからの「大綱」への提案、というのも面白いなあ、と思います。
というわけで、9月23日が楽しみになってきました。「教育総合会議」の様子は、世田谷区の公式YouTubeチャンネルで観れますので、ぜひ観た上で学習会に参加してくださると嬉しいです。 (星野弥生)
総会記念企画「家で育つ、自分で学ぶ」への感想
【まず、この7月9日の記念企画のきっかけをつくったタカハシトールさんからの振り返りのメッセージ、そして参加された会員の坂井岳志さんからの感想をお届けします。坂井さんは二年前、GIGAスクール構想をめぐっていろいろと教えていただき、ITにうとい私たちを支えてくださる現場にいらした元先生です。23日、ぜひいらしていただきたいです!】
★7月の学習会は、東京都の不登校施策がフリースクール偏重になることを危惧し、《家で育つ》を実践されたお二人に、そのリアルを効かせて頂く企画を立てました。大人になった今も、我が道を歩み続ける”子ども”達。不登校であるかどうかとは全く違う所を見ながら、育ってこられたようです。共通しているのは、親が本人の在り方を、一切コントロールしようとしなかった、迷いのない信頼と愛情があったという事かなと感じました。
告知を満足にできず、参加を訴える力が足りず、スピーカーには申し訳ない事をしました。しかし、この企画によって、教育の多様性の中に《家で育つ》も位置付けるきっかけになれば幸いです。(タカハシトール)
★こいのちでのリアルな会に初めて参加しました。お二人の保護者のお話をうかがいました。お二人のお話から伝わってきたのは、子どもたちがいたい場所、イキイキできる場で生かしてほしいという思いの強さでした。学校にこだわることはないというのは、当たり前の事として受け止めました。それぞれが楽しく生きられる場所で活動すればいいですよね。ただ、同時に、多数の子どもたちが学び、生活している学校をそのままにしてはいられないという思いも浮かんできました。 最近、文科省も含めて、ひとり一人を大切にした学び、個別最適化された学びを大切にしようとも言っています。同時に協働的な学びも大切にしていこうとも言っています。一斉指導で、我慢と忍耐を強要する学校ではやっていけない状態であることは、多くの共通認識です。
自らの興味関心のある課題を自ら作り出し、主体的な学びを進めていくことは大切だとも言われています。
ただそれでも、大多数の学校はそう簡単に変わりません。教員もそうですが、保護者も、自らが教わった内容の縛りから逃れられていません。私たち教員も、保護者も、政治家も新たな学校を創り出していくことが必要なんだと思います。そんなことを感じながら、お二人のお話を聞いていました。このような活動が若い方々にも引き継がれていくことを願っています。 (坂井岳志)
2024年度使用小学校教科書採択教育委員会傍聴記
【前号で、来年度の小学校教科書採択の教育委員会会議の傍聴を!と岸塚さんが呼びかけて下さいました。「世田谷の教育を考える会」のメンバーが何人も傍聴してくださり、その報告をこいのち会員の荒川真佐子さんが「いち」に書かれました。こいのちにも転載させていただきます】
公立の小学校・中学校で使用する教科書は4年ごとに各教育委員会毎に採択される(広域もあり)。かつて見本教科書は学校ごとに巡回され、実際に使用する教員が手に取って見くらべ、「物語教材はこれが良い、文字の教え方がわかりやすい、足し算や掛け算の導入はこれが良い」など教員同士で話し合い、学校の希望を教育委員会に上げ、その中で多いものを世田谷区の教科書として採択をしていた。本当に使う主体者が選んでいたのだ。
時代の右傾化とともにこれが教育委員会主体の採択となり、同時に教科書の検定についても強化された。教科書会社の自由で平和を守る編集方針や内容が、政治や文科省の思惑により変遷を重ねていった。その結果「従軍慰安婦」や「強制連行」の文言が消え、領土や自衛隊の記述が増え、戦争加害の責任など本旨とは遠い記述に変えさせられていった。良心に従った社会科の教科書を編纂していた出版社が倒産してしまう事態も起こった。
皆さんも覚えがあるだろう、中学校教科書に育鵬社の社会科教科書が登場し、心ある市民や教組と、教育委員会との攻防が全国あちこちで行われたことを。育鵬社版を教育委員会が採択してしまった大田区ではその後の4年間を市民・教組中心に学習会や多くの抗議行動を進め、次の採択期では採択されることはなかった。100人を超える傍聴者が教育委員会に参集し審議を見守ったのだ。
さて来年の小学生が使用する教科書についての世田谷区教育委員会の審議がこの7月24日と25日、2日に渡って行われた。私は採択時の委員会は毎回傍聴希望している。攻防のあった大田や杉並では100人からの傍聴者を受け入れているが、世田谷は毎回10名。場所の問題といえばそれまでだが、しかし今回は50人分の傍聴者に対応してくれていた。教育委員個人の意見でいびつな教科書がまかり通ることの無いよう、透明性を担保し、特に歴史の事実に反するような、又愛国心を強制するような教科書を子どもたちに渡さないために多くの目でチェックしてもしすぎることはない。後ろに数万人のこどもたちがいるのだからしっかり考えて欲しい
5人の教育委員は初めに採択にあたって自身の選考姿勢を表明してくださった。
澁澤委員↓指導要領の変更がないため、現場の事を考え現行のものの踏襲を中心に考える
中村委員→小学校は特に教員不足が酷い。簡単に挫折しないようベテランより若手教員が使いやすいもの重視する。
鈴木委員→保護者の視点でかんがえる。
坂倉委員↓探求型の学びに沿うもの、知識伝達より学ぶ主体となるものを。
渡部教育長↓すべてに目を通した。まなびやすくつかいやすいものを。
最終的に一票投票で次の教科書が決定した。
保健体育…大修館
家庭…東書 社会…教出
地図…帝国 英語…光村
理科…大日本 音楽…教芸
生活…光村 国語…光村
書写…光村 道徳…光村
図工…開隆堂 算数…東書
最後に澁澤寿一委員の道徳に関する意見をお伝えする。
「道徳は教科として年月が経っていない。そのため各社何処を狙っているか鮮明になっている。私は大学で講義をしているが学生の反応が変わってきている。チャットGPTなど自分の考えがなく情報に答えを求める。自分自身と深く向き合うことがない。
子どもはいろいろな考えを持っている。明らかに答えがわかる、正解が見えているものは避ける。自分で考えていく視点をもって道徳に臨む」
道徳を教科化し、国の思惑に従わせたい人々に伝えたい言葉と思った。
(荒川真佐子)
公園をこどもたちの手にもどすために!
【次回の学習会の案です。まだまだ決まっていない要素もありますが、予定しておいてくださると嬉しいです。次号で詳しいことをお知らせします。】
禁止看板の増加など、公園の使われ方に違和感を感じることが多い昨今、子どもたちを取り巻く環境を根本的にしっかりと見直す必要を感じ、この企画を立てました。
普段は改めて考えませんが、公園って、沢山のニーズに応え続けて、私達の生活に潤いを与えてくれている、人生においてとても重要な仕掛けなのかもしれません。そう思うと、当たり前に存在している気がしていた公園が、とても有り難く思えてきます。日頃、公園管理をされている自治体・職員の方々のご苦労にも、もっと感謝したくなります。その上で、利用者の側の実感を、管理側とも交流できる回路は必要でしょう。
子育てや仕事に追われて余裕の無い層も、声を届け易い仕組みはできないものでしょうか?色んな角度から検討するスタートラインになればと思います。どうぞご参加ください!
日程:11月18日(土)午後
会場:うめとぴあ(交渉中)
パネラー:公園関係者・プレーワーカー・住民・区議会議員など交渉中 (タカハシトール)
子どもプラス展~Jiro’s book café~へのお誘い
かつて、「三輪車疾走」という雑誌がありました。教育評論家の斎藤次郎さんが主宰していたとてもユニークな雑誌でした。私は、1990年に上映されたドキュメンタリー映画「ベンポスタ子ども共和国」の制作にかかわり、かつ、この共和国が世界に平和を訴えて行っているサーカス団を日本に招聘する実行委員会に深く関わっていくことで、教育や子どもに関わり多くの人たちやグループと知り合ったのですが、プロジェクトの最強の応援団の一人が次郎さんでした。「三輪車疾走」が主催して、「三輪車フォーラム」が開催され、ある時は保坂さんも講師の一人でした。講演中に突然保坂さんの形態電話が鳴り、その電話の主は土井たか子さん。「貴方、選挙に出なさい」というものでした。そこから国会議員保坂展人が誕生したんだ、と私は忘れることがありません。三輪車も50号で閉じ、私も最終号にベンポスタのことを書きました。その後、「季刊子どもプラス」と形を変え、子ども応援は終わることなく、その発行も難しくなってからは、「子どもプラスmini~せんそうはんたいこどもがだいじ~」を、若い女性たちが発行してきました。それも休止になっていつのまにか10年。突然、若い女性(だった)一人の鈴木千佳子さんから電話があって、「子どもプラス展をやります」と聞きました。わあ、「せんそうはんたいこどもがだいじ」は、まさに今こそだれもが考えなくてはいけないこと。ともかく「うん、協力するよ」と、今回チラシを入れさせていただきました。3日間だけ、場所も世田谷からはかなり遠い(でもないか)東村山。でも、こんなに子どもが一番!と志していた雑誌、グループがあったんだ、これからのヒントも生まれそう、と私は切にお誘いしたいです。なんだか急に昔を思い出して、ウキウキしてしまいました。 (星野弥生)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ いろいろ告知板 ◇ ◇ ◇ ◇
★「もっと語ろう不登校 part. 281 9月2日(土))14時~ @フリースクール僕んち
10月14日(土)14時~@オープンスペースBe 300円 ZOOM参加希望者は、9月はfsbttoru@yahoo.co.jpに、10月はyurinoki11513@gmail.com に前日までにメールでお申込みください。
★「嫡出概念と婚外子差別方制度の撤廃を!」 9月3日 武蔵野スイングホールスカイルーム(武蔵境駅徒歩2分) こいのちでもたびたび紹介・報告をしてきた「なくそう戸籍と婚外子差別・交流会」による、民法婚外子相続差別廃止から10年の記念集会。1時~4時 講演:角田由紀子さん、二宮周平さん、林陽子さん (問い合わせ kouryu2-kai@ac.auone.net.jp)
★長編記録映画「あらかわ」 こいのちを応援してくださる、映画プロデューサーの矢間秀次郎さんから。環境運動50年の奔流を生き抜いてきた矢間さん。ダム問題を焦点に据えた1993年製作のこの映画が上映されます。9月21日、10月5日。東京ボランティア・市民活動センター(セントラルプラザ10階にて。連絡は 水の映像フォーラム 8o42-381-7770
★「人間の生と性を学ぶ会」9月例会 9月14日(木)17時半~20時半 宮坂区民センター大会議室。二カ月に一度の村瀬幸浩先生との勉強会です。近著「50歳からの性教育」(河出新書)を読んでご参加いただけると幸いです。村瀬先生と田嶋陽子さんの対談は秀逸です。 (星野弥生)
★星野弥生の気功教室。原則として第二、第四金曜日の5時半~7時半 経堂地区会館別館。第二、第四日曜日 10時から代々木公園。どなたでも参加できます。公園での気功は本当に気持ちいいです!
★「東京夫婦善哉」 6月24日~7月7日は渋谷のユーロスペースで、7月21日から8月10日まで、吉祥寺アップリンクで上映されました。たくさんの方に観に来ていただき、ほぼ毎日(ヨーロッパい行く前まで)会場に行っていた私は、久しぶりに昔の友と再会し、日々同窓会のようでした。足を運んで下さった方、チケット売りに協力してくださった方、本当にありがとうございました。これから東京以外のところで公開されることを願っています。ボールを投げかけてしまったので、これからどんな返球がもどってくるか、楽しみです。今後ともよろしくお願いいたします。(星野弥生)
★「沖縄、再び戦場(いくさば)へ」沖縄を再び戦場にしたくないとの思いで映画を撮り続けている三上智恵さんの、完成前の映画45分をみました。沖縄で今起こっている大変な事態(戦争の準備とした思えない)を一刻も早く知ってほしいとの思いで、無料で貸し出しています。観て、広めたいです。
沖縄記録映画製作を応援する会 info@okinawakiroku.com
★「居場所をください」沖縄・kukuluの学校に行けない子どもたち 原作:藤井誠二 発行:世界書院
巻末に座談会「沖縄の子どもの貧困を考える」があります。(こいのち会員の二木啓孝さん発行)
こどもいのちのネットワークの仲間になってください。つうしん、お知らせが届き、講演会などの参加費が無料になります 年会費3000円 郵便振替口座00100-9-396998
【事務局】Tel03-3427-8447 070-5554-8433 email:marzoh@gmail.com(星野弥生)
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