本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(429)
- 2023年 9月 29日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
28兆円の国債費
先日の日経新聞では、「2024年度予算案の概算要求において、財務省が、国債の元本利払いの想定金利を、23年度予算から0.4%引き上げて、1.5%に変更する調整に入った」と報道されており、このことは、今後、最も注目すべき変化の一つのようにも感じている。つまり、今回の金利上昇により、「国債費が、25兆円から28兆円程度へ増える見込み」とも想定されているために、今後は、「GDPで約260%の規模」とも言われている「日本の国家債務」や、あるいは、「日銀の資金繰り」などに関して、大きな混乱が発生する事態が危惧されるからである。
具体的には、「約70兆円」とも想定されている「税収」と比較すると、「28兆円」という金額は「約40%」に相当するために、今後は、「税収を増やすか、あるいは、他の経費を削減するか?」という選択に迫られる可能性も存在するのである。あるいは、より深刻な問題である「国債の買い手が激減し、金利が急騰する可能性」も考えられるが、このことが、私の想定する「目に見えない金融ツインタワー崩壊」のことである。
別の言葉では、「1997年の信用収縮」の時のように、今後、「中国版のリーマン・ショック」が他国に広がっていく状況を想定しているが、「26年前と現在との違い」は、やはり、「世界中のメガバンクが、オフバランス(簿外)で、デリバティブを大膨張させた事実」が挙げられるようである。つまり、過去26年間は、「民間金融機関のバランスシートが大膨張した結果として、メガバンクに大量のシニョリッジ(通貨発行益)が発生し、その恩恵により、超低金利状態の維持が可能だった」という展開だったのである。
しかし、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」がもたらした変化としては、「民間金融機関のバランスシート収縮」が指摘できるとともに、その結果として、「中央銀行のバランスシートを膨張させるリフレーション政策」が始まった状況だったのである。つまり、「中央銀行が民間部門から資金を借り入れて、超低金利政策を実施した状況」のことだが、現在では、ご存じのとおりに、「中央銀行に資金を貸し出す主体」が枯渇してしまった状況とも言えるのである。
そのために、今後は、「債務の貨幣化」である「紙幣の増刷」か、あるいは、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行」が想定されるが、この時に予想される変化としては、やはり、「政府や中央銀行に対する信用の完全喪失」であり、また、その後に想定される国民の行動としては、「80億人の換物運動」が挙げられるものと考えている。(2023.8.25)
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53年ぶりの円安
8月30日の日経新聞に、「53年ぶりの円安」の記事が掲載されているが、具体的には、様々な通貨の相対的な価値を、物価変動と貿易量などを考慮して算出する「実質実効レート」が「1970年9月以降、最も低い水準に落ち込んでいる」というものである。別の言葉では、「日本国家の体力」を測るバロメーターの一つである「為替」に関して、きわめて危機的な状況に陥っていることが見て取れるが、この理由として指摘できるのは、やはり、「世界で唯一継続されている日本のマイナス金利」であり、また、「24年間も継続された実質的なゼロ金利政策」だと考えている。
つまり、26年前の「1997年8月」から始まった「世界的な信用収縮」の結果として、「日米欧の先進各国は、協調して、デリバティブの残高を大膨張させた」という状況であり、その結果として発生したのが、「大量のデジタル通貨」や「世界的な金利低下」だったのである。より具体的には、「民間金融機関のオフバランス(簿外)口座で、大量のOTCデリバティブを積み上げた」という状況の結果として、「金融抑圧」と呼ばれる「金融市場の価格操作」が実施された状況のことである。
しかし、「どのような無謀な行為にも、必ず、限界点が訪れる」ということが「大自然の摂理」であり、実際には、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」により、「デリバティブの大膨張がピークを付けるとともに、中央銀行のバランスシートの大膨張が始まった」という展開となったのである。別の言葉では、今までの「民間から資金を借り入れ、国債を買い付けることにより、自らのバランスシート残高を膨張させた」という状況が、現在では、「資金手当てに問題が生じ始めた」という変化が起き始めたのである。
より具体的には、「約500兆ドルのOTC金利デリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務残高」という「債権や金利に関する、目に見えない金融ツインタワー」が、様々な事件の発生により、「2001年の9・11事件」の時のように、「炎上し、崩壊を始めた段階」とも想定されるのである。そして、今後の数週間、あるいは、数か月間で、「債券に関するバブルが、あっという間に崩壊する可能性」が考えられるが、実際には、過去100年間で、様々な国々が経験してきた「ハイパーインフレ」の発生である。
そのために、現時点で必要なことは、「自分の資産」を見直しながら、「少なくとも1割程度は、貴金属などの実物資産」、そして、「約6ヶ月分の食糧」の保有を心がけることだと考えている。(2023.8.30)
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問題だらけの金融リテラシー
「金融リテラシー」という言葉には、大きな違和感を覚えるとともに、一種の危うさも感じているが、その理由としては、いまだに「お金の謎」が解けていないために、ほとんどの人々が、「具体的に、何を勉強し、理解すべきなのかが理解できていない状況」とも思われるからである。別の言葉では、この言葉が政治利用されている可能性を危惧している状況でもあるが、実際のところ、「米国を中心とした西側諸国」では、「膨大に膨れ上がった国家債務残高やデリバティブのバブルに関して、時間稼ぎと問題の先送りに終始してきた状況」だったことも見て取れるのである。
また、一方で、「中国やロシアなどの東側諸国」は、「西側諸国の苦境」を利用して「自らの野望」を達成しようとしている状況とも思われるが、実際には、「資本主義の崩壊後に共産主義(コミュニズム)の時代が到来する」という、根拠のない「史的唯物論」を、いまだに猛進している可能性のことである。つまり、「1991年のソ連崩壊」以降、虎視眈々と、「西側諸国の金融混乱」を待ち続け、満を持して、「2022年2月に、水面下で中国と共謀して、ウクライナへの軍事侵攻を始めた可能性」である。
より詳しく申し上げると、「資本主義諸国が、かつて経験した、他国の領土を奪い取る帝国主義政策」に邁進している可能性のことでもあるが、この点についても、「お金が、どのようにして生み出され、また、膨張したのか?」が理解できていないために、結局は、「世界の常識から乖離した行動」につながった状況とも思われるのである。つまり、「お金」は、「分業」という「他人との共同作業」から生み出される「生産性の向上」が基本であり、また、この時に必要とされるのが、「人々の間に存在する信用」とも言えるのである。
そして、「共同体の規模」が拡大することにより、「マネーの残高」が増えていく構図となるわけだが、今回の「グローバル共同体」と「未曽有の規模でのデジタル通貨」に関しては、「西ローマ帝国崩壊以降、1600年という時間をかけて達成された状況」とも考えられるのである。つまり、現在の「東西冷戦の激化」については、「800年に一度の東西文明の交代」のみならず、世界的な「マネーの消滅」をもたらす可能性も想定されるのである。
そのために、現時点で必要なことは、「形だけの金融リテラシー」ではなく、根本にさかのぼり、「お金の謎」を解明することでもあるが、今後の展開としては、「デジタル通貨が、神様の状態から、単なる紙切れへの大転換」を経験することにより、「78年前の日本人」と同様に、瞬間的な「意識と行動の大転換」が発生する可能性も考えられるようである。(2023.9.5)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13265:230929〕
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