Global Head Lines:フランクフルト・ブックフェアは政治的に始まる
- 2023年 10月 19日
- 時代をみる
- 荒井俊生
ハマスのテロ攻撃は、フランクフルト・ブックフェアにも決定的な影響を与えた。 連邦首相に代わって出席したクラウディア・ロート大臣はイスラエルへの攻撃を強く非難した。
ドイツの、今年のブックフェア招待国スベロニアの、そしてフランクフルト市の政治家は火曜の夜に開催されたフランクフルト・ブックフェア(2023.10.18-22)の開会式でイスラエルでのハマスによるイスラム的テロを非難した。
イスラエルを訪問したオラフ・ショルツ首相(SPD)に代わって急遽フランクフルトの開会演説を引き継いだクラウディア・ロート文化大臣(Grün)は、イスラエルとパレスチナの国境地域でのハマスによるテロ攻撃を「野蛮」(Barbarei)とし、この攻撃を最も強く(zutiefst)非難した。
「これは人間に対する攻撃です。ユダヤ人は人間なのですから。イスラエルという国、その文化、そしてその開かれた社会に対する攻撃です。我々は犠牲者とその家族に寄り添い、悲しみと痛みで一杯です。」と述べた。
同時にドイツでの反イスラエルデモとハマスのテロへの賞賛に対し、ドイツのユダヤ人の生命のより強い保護を求めた。「残念ながら、ハマスの支持者がこの血にまみれた陶酔(Blutrausch)をどのように祝ったかを示す我が国の映像もあります。これに対しては寛容であることも、寛容を許すこともあってはなりません。
特に戦争や機器の時代には書籍や文学が必要です。書籍や文学は体験と経験を練り上げ、失語症(Sprachlosigkeit)に攻して戦い,全く書かれえないものを記述します。文学は我々が理解し、共感するのを助けることができます。」とロート大臣。
ブックフェアに初めて招かれたフランクフルト市長マイケ・ヨゼフ(SPD)も彼の演説でイスラエルとフランクフルト・ドイツのユダヤ人共同体との連帯を高めることを求めた。
主賓として招待されたスベロニアの哲学者スラヴォイ・ジジェクは混乱を引き起こした。開会式の最後に彼はガザ地区に生活するパレスチナ人を擁護する講演を行った。彼はイスラエルの住民に対するハマスのテロ攻撃を非難したが、この紛争を理解したいのであればパレスチナの声に耳を傾け、彼らの背景を考慮しなければならないと、ジジェクは強調した。「ガザのパレスチナの人々はもっぱら問題としか扱われておらず、イスラエルは中東紛争で彼らに対し何ら積極的な役割を果たしていません。パレスチナ問題の解決なしに中東の平和はありえません。」
彼の講演は野次によって繰り返し中断された。その間に幾人かの招待客が会場を出た。ヘッセンの反ユダヤ主義委員ウヴェ・ベッカー(CDU)は、初めは正面から、その後は直接演壇にあがってジジックに抗弁し、彼がハマスの犯罪を相対化したと非難した。幾たびかベッカーも広間を出たが、最後には戻った。
「私はまったく相対化していない。テロ攻撃は恐ろしい犯罪であり、イスラエルは自らを守るあらゆる権利がある。」とジジェクは対峙した。
中断の前にすでに哲学者はこのテーマにおける“分析の禁止”を批判していた。「私のまえの講演者はすべてイスラエルについては話していたが、誰もパレスチナ人について語らなかった。(予定していた)パレスチナ人作家アダニア・シブリの賞授与式が(延期され)このブックフェアで行われないというのはスキャンダルである。」とジジェクは述べた。
ブックフェアのディレクター、ユルゲン・ボースはジジェクの講演の後、「これらの言葉は、たとえ共有されなくとも、言論の自由の意味で補償されねばなりません。お互い耳を傾けることが重要です」と述べた。
しかしボートはジジェクによって選ばれた言葉を批判した。「私が発言する場合、ここでは共同体のために発言することができると思います。我々はテロを非難します。我々は人間であり、パレスチナとイスラエルの両側から人間的に考えます。」
ブックフェアの責任者は、火曜午前の開会記者会見ですでに同様の発言をしていた。「ブックフェアはまた政治的フェアでもあり、文化政治的使命を持っています。ブックフェアは著者に空間、舞台そして声を与えます。」と強調した。
ハマスのテロ攻撃に際して、ブックフェアは作家協会PENベルリンと共に水曜(10:30 フランクフルト・パヴィリオン)のフェアのはじめに「イスラエルをめぐる懸念」というテーマで討論会を催す。講演者としてアンネ・フランク教育センター長メロン・メンデルが招待された。
水曜から出版関係者に、金曜午後からは一般にフランクフルトメッセ会場が開かれる。日曜に英国とインドの作家サルマン・ラシュディにFriedenspreis(平和賞)が授与されて、メッセは終わる。
den 19 Oktober 2023.
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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