代執行は「到底 容認できない」(沖縄県知事)―問われるわが国の民主主義
- 2023年 11月 14日
- 評論・紹介・意見
- ガザ小原 紘沖縄辺野古
韓国通信NO730
国の代執行に反対する玉城沖縄知事の意見陳述書を読んだ。わが国の民主主義についてあらためて考えた。
戦争抑止論を疑わない政府は、あくまでも辺野古基地の実現に執着する。私には狙った獲物を逃すまいとする獣のように見える。
このような横暴は許されるのか。私たちに何ができるのか。
そのヒントは知事の意見陳述にある。
<玉城知事の主張>
政府の執拗さにいら立ち、沖縄県民の間に「反対運動疲れ」が広がっていると伝えられる。玉城知事の意見陳述では何が語られたのか。
まず、政府に「対話」を求めた。聞く耳を持たないこれまでの政府の対応を具体的に説明。話し合いを拒むようでは民主主義国家ではない。政府の代執行は到底容認できないと語った。
次に、基地を引き受けようとしない他県の反発を恐れ、軟弱地盤であり自然環境保護の観点からも問題の多い辺野古が「唯一」の場所と政府は主張するが、必要性・合理性は全くない。
最後に、墜落事故、米兵による殺人・強姦事件、騒音等の基地被害が増加している現実をあげた。また県民投票・基地問題を争点とした直近三回の知事選で明らかとなった県民の意志が無視されている。国民全体で考えるべき安全保障問題をないがしろにし、沖縄に大きな負担を強いるのは憲法が定める地方自治の否定、住民の「公益」が無視されているとも述べた。
この主張に岸田首相はまともに反論できるだろうか。
注目されるのは知事の発言が抑止力と基地そのものには反対していない点だ。
主張を煎じ詰めると―
辺野古は唯一の選択ではない。基地が必要なら国民全体で負担して欲しいと主張しているに過ぎない。
これまで私たちは抑止力と軍拡の是非をめぐる論争に振り回され、辺野古問題を複雑にしてきた感がある。「そもそも安保条約は…、抑止力は…」というこれまでの反基地運動の発想では辺野古問題の解決は難しいことに気づく。問題の背景に日米安保条約があること、日本政府の軍拡政策があるのは明らかだが、玉城知事は外交・軍事政策以前の良識の問題、民主主義の問題として訴えていることが注目される。国の在り方についてすべての国民に考えて欲しいという訴えである。
<国民が共感する「辺野古基地反対」へ>
以下に紹介する「ゴリオシやめて請願運動」は2019年12月に千葉県我孫子市議会で採択された請願内容である。4年後の今年10月30日に福岡高裁那覇支部での玉城知事の意見陳述とソックリな内容で興味深い。
請願は基地問題を真正面からとりあげていないため生ぬるさを感じるかも知れない。署名は元自衛隊幹部だった友人も署名をしてくれた。多数派を占める市議会の保守会派も賛成せざるを得なかった。一地方自治体の政府に対する「もの申す」にすぎないが、『沖縄タイムス』にも紹介され、我孫子発の沖縄へのささやかなエールになったはずだ。
請願は「民意の尊重」「法の下での平等」「話し合い」を政府に求めた。憲法を尊重し人権が守られる社会を目指した。活動に参加した市民は、沖縄に寄り添う運動になったと自負する。
我孫子市議会で採択された請願は次の通り。(2020年6月18日採択。賛成18、反対5)
辺野古基地建設に反対する沖縄県と政府は真摯に話し合うこと、国会において真剣な議論を行うことを政府に求める意見書に関する請願
趣旨
沖縄県議会が2019年2月24日に実施した県民投票で「辺野古基地建設反対」の県民の意思は明らかとなりました。政府は現在、安全保障にかかわる問題だとして県民の意思を無視したまま埋め立て工事を進めています。国土の0.7%の沖縄に米軍基地の70%があるという異常事態に沖縄県民が異議を主張するのは当然です。政府は沖縄県民の意思を無視することなく、沖縄県と真摯に話し合うべきです。また国会においても本問題ついて真剣な議論をすべきです。
理由
1. 日本国憲法は第92条で「地方自治の本旨」を定めています。また第95条において住民投票の尊重を定めています。
2. 沖縄に過重な負担を求めることは、日本国憲法に定められた個人の尊厳と法の下での平等の原則にもとるものです。これは沖縄と政府だけの問題ではなく国民全体の問題であり、法の下の平等、人権を尊重する我孫子市民の願いでもあります。
3. 辺野古基地建設については、県民投票の結果を踏まえた各種世論調査(※)によっても国民の賛否は拮抗しており、政府が沖縄県民の意思を全く無視するのは議会制民主主義の観点からも認められません。
沖縄県との話し合い、国会での審議による一刻も早い解決を望みます。
以上
<参考>
※ 毎日新聞 反対52%賛成29% 2019/03/18 日本テレビ 反対47% 賛成36% 2019/2/24 朝日新聞 反対37% 賛成34% 2019/5/07
日々伝えられるウクライナとイスラエルの戦争に心を痛める毎日が続く。
戦況報道一色、残酷で悲惨なシーンばかり見せつけられて言葉も出ない。ハマスの実態は不明な点が多いが、私にはハマスがかつての日本の姿に見えることがある。真珠湾奇襲攻撃、その見返りに連合国側からこっぴどい報復をうけた。空襲と原爆で「男女老少」(※)を問わず多くの市民が犠牲になった。自衛の戦争、アジアの解放などと理屈をつけて中国とアジアを侵略した日本(少しイスラエルに似ている)は世界を相手にして負けた。
無謀な戦争を何故したのか。日本人として反省することは多いが、その思いが平和憲法に生かされた。もっともらしい理屈をつけても国益を追求した飽くなき戦争だったことに変わりはない。多数の命が奪われ、「焼け太り」した人もいた。
今再び、理不尽な戦争が繰り返されそうな気配。戦争と日常生活が紙一枚で背中合わせになっている実感と恐怖感にさいなまれる.。 国連のグテーレス事務総長が「ガザが子どもたちの墓場になっている」と述べ、即時停戦を改めて求めた。
「戦争をやめろ」の声が世界中から沸き起こっているのが希望である。上写真はイスラエルのガザ攻撃に抗議するロンドンのデモ。参加者約7万人(2023年10月28日)。『ビジネスインサイダー』ネットマガジンより。 ※「男女老少」は「老若男女」の韓国語
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13374:231114〕
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