本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(439)
- 2023年 12月 8日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
26年前の悪夢
現在は、「26年前の悪夢」が再来している状況とも思われるが、具体的には、「1997年8月13日に、タイから始まった『世界的な信用収縮』が、その後、約1年をかけて、世界全体を襲った展開」のことである。より具体的には、「11月4日の三洋証券の破綻」や「11月17日の北海道拓殖銀行の破綻」、あるいは、「11月24日の山一證券の破綻」そして、翌年の「長期信用銀行の国有化」や「米国LTCMの救済」などのことである。
別の言葉では、「2023年8月15日に発生した中国版のリーマンショック」と「11月3日に米国で発生したアイオワのシチズンズ・バンクの破綻」が、「26年前の金融混乱」を想起させるような状況のことである。つまり、当時は、「日本のバブル崩壊」で発生した「約300兆円の不良債権」に関して、「民間金融機関だけでは処理できなくなり、『最後の貸し手』と呼ばれる中央銀行の援助が必要な状況」だったのである。
より詳しく申し上げると、当時は、「日本」のみならず、「米国」においても、「金融システムの崩壊危機」に見舞われていたわけだが、この時に、大きな「救い」となったのが、「米国を中心としたデリバティブの大膨張」だったのである。別の言葉では、「民間金融機関のバランスシートを、オフバランス(簿外)で大膨張させる行為」であり、その結果として、「中央銀行のバランスシートの健全性が保たれた」という状況のことである。
ただし、この行為については、典型的な「問題の先送り」と「時間稼ぎ」を意味しているために、結局は、「1997年から26年後の2023年に、約30倍規模の金融大混乱に見舞われている状況」となっているのである。つまり、今後は、「世界のいたるところで、金融機関の破綻が予想される展開」が想定されるとともに、「金融大膨張の本丸」ともいえる「デリバティブ」に絡んだ大事件の発生も予想されるのである。
より具体的には、「米国のメガバンク」までもが「破綻の危機」に見舞われる可能性のことでもあるが、実際のところ、現在では、「CMBS(商業不動産担保証券)に関する大量の損失」や「国債価格の暴落が引き起こすデリバティブの巨大損失」などに関して、市場の注目が集まっている状況ともいえるのである。別の言葉では、「26年前の日本と比較して、約30倍の規模で、金融機関の破綻が懸念されている状況」とも思われるが、今回の問題点は、「30年前のデリバティブ」のような「新たな救いの方法」が存在せず、「最後の貸し手」である「中央銀行」による「紙幣の再増刷」か、あるいは、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行」しか、手段が残されていない状況とも理解できるのである。(2023.11.6)
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史上最大規模のマネー逆襲
現在、世界の金融市場で発生している現象は、「史上最大規模のマネー逆襲」であり、この点に関して役立っているのが、私自身が西暦2000年に上梓した「マネーの逆襲」という著書だと感じている。つまり、私自身は、1990年に破裂した「日本のバブル」を深く研究したことにより、「マネーの逆襲」、すなわち、「人類が作り出したマネーが、大自然が創り出した一次産品の価格高騰を引き起こす展開」を想定していたからである。
しかし、実際には、私の予想に反して、「日本を売れば、日本以外の南極も含めた全世界の土地が買える」といわれた「約2500兆円規模の日本の土地バブル」をはるかに超える「世界的なデリバティブのバブル」が発生したのである。具体的には、日本の土地バブルと比較して、約30倍規模のバブル発生により、日本で発生した不良債権を、完全に吸収しただけではなく、多くの人々を、「DX革命」などへ導くことに成功したのである。
別の言葉では、「西暦1200年から2000年の西洋の時代」を象徴する「マネーの大膨張」が発生したことが理解できるが、この時に必要不可欠なことは、「1913年に設立された米国の中央銀行であるFRB」や「1971年から始まった『信用本位制』と呼ぶべき通貨制度」などの理解だと感じている。つまり、現在では、「経済学」のみならず「政府が発表する統計数字」に関しても、世界経済の実態を、正確に表していないだけではなく、さまざまな「政府による統制」に利用されている可能性も考えられるからである。
より具体的には、「お金とは、一体、何なのか?」という「お金の謎」を考えることであり、このことは、「23年前の2000年当時に私が目指したもの」でもあったが、実際の状況としては、「奥の細道」を「中尊寺の金色堂」へ向かって歩き始めた状況だったようにも感じている。つまり、ほとんどの人々は、「東海道を京都の金閣寺に向かって歩き始めた状況」、すなわち、「単なる数字であるデジタル通貨の獲得競争」に邁進した状況でありながら、私自身は、大勢に逆行して「貴金属の購入や推奨」に全力を注いでいたからである。
ただし、現在は、いろいろな人々が、「京都の金閣寺から日本橋に向かい始めた状況」、すなわち、「マネーの逆襲に悩まされ、お金の謎を考え始めた状況」のようにも感じられるが、この時の問題点は、「金融システム」や「通貨と商品との関係性」などの理解が難しい事実とも言えるようである。つまり、ほとんどの人々は、今後、「訳が分からないうちに、インフレの大津波に見舞われる可能性」が高いものと思われるために、現時点で必要な行為は、「できるだけ多くの貴金属を保有すること」だと考えている。(2023.11.8)
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世界的な利払い懸念
現在、「世界的な利払い問題」が表面化し始めており、この理由としては、「大膨張した世界のマネー」と「世界的な金利上昇」が挙げられるものと思われるが、この問題に関する注意点としては、「金利」が「マネー(お金)」や「クレジット(信用)」の「値段」を表している状況だと考えている。つまり、「値段」が意味することは、「需要」と「供給」が存在する状況であるとともに、現時点で必要とされていることは、「現在の膨大なマネーが、どのような歴史を経て創造されたのか?」の正確な理解とも思われるのである。
別の言葉では、「ローマは一日にしてならず」という言葉の通りに、かつての「西ローマ帝国」が形成されるまでには、現在の「世界的なグローバル経済」と同様に、長い時間が必要だったものと考えられるのである。そして、この過程で発生した現象は、「西洋の唯物的文明に特有のマネー大膨張」であり、しかも、今回は、極めて複雑な「金融システム」が形成されたことも見て取れるのである。
具体的には、「民間金融機関」のみならず、「中央銀行」が、世界的に設立されるとともに、「国家の債務残高」が未曽有の大膨張を見せた状況のことでもあるが、この結果として発生したのが、今回の「世界的な利払い問題」とも言えるのである。つまり、「マネー」や「クレジット」が大膨張している過程では、「民間の企業や銀行」のみならず、「中央銀行」、そして、「国家」のバランスシートが拡大したことも見て取れるのである。
より具体的に申し上げると、今までは、「債務残高」が増えようとも、それを上回るペースで「マネーやクレジット」が創造されていたために、「資金繰り」や「流動性」に関する問題が発生しなかったのである。しかし、現在では、「国家」に加えて、「中央銀行」や「民間銀行」、そして、「民間企業」や「個人」の全てが、「大膨張した債務残高」と「収縮する資産価格」が産み出した「不良債権」の問題に悩まされ始めているのである。
しかも、今回は、先進各国における「過去40年間の金利低下」の根本原因とも言える「デリバティブの大膨張」の実情が理解されていないために、「景気が悪くなれば利下げが実施される」というような、きわめて短絡的な意見に繋がりやすくなっているのである。つまり、今後は、「債務残高が増大し続ける限り、かつての低金利状態が、決して、復活しない状況」が想定されるとともに、冒頭の「世界的な利払い問題」に関しては、古典的な「ハイパーインフレ」でしか解決できない状況、すなわち、最近、議論され始めた「CBDC(中央銀行デジタル通貨)」が役に立たない状況も想定されるのである。(2023.11.11)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13426:231208〕
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