鹿児島の五日間~西郷隆盛ばかりではない、近代絵画の名作を訪ねて(3)
- 2023年 12月 9日
- 評論・紹介・意見
- 内野光子長島美術館
長島美術館~「ぞ展」ってなに?
鹿児島に来てから、リーフレットを見て、初めて知った美術館である。鹿児島にゆかりのある黒田清輝、藤島武二、和田英作、有島生馬、東郷青児、海老原喜之助らの作品と海外のルノアール、ルオー、ユトリロ、シャガール・・・等の名が並んでいるではないか。11月3日は、その長島美術館へ出かけた。丘の上にあるとは聞いたが、車を降りてからの長いアプローチ、手入れされた植込み、そして眼下の鹿児島の街の先からは、雄大な桜島が迫ってくる。
小企画展は、マルク・シャガール版画による「サーカス」であった。シャガールの作品のピエロ、曲芸師、軽業師らのしっかりした眼差し、動物たちのやさしい目が特徴的に思えた。好んでサーカスを描くのは「わたくしにとって、サーカスは、もっとも悲しく見えるドラマである」との言もあるという。シャガール(1887~1985)はベラルーシ生まれのユダヤ人であった。
常設展の第1室は、いわば郷土の画家たち、和田英作(1874~1959)の「グレーの風景」(1902)は、パリ郊外のグレーに浅井忠と共同生活をしていた頃の作品、海老原喜之助(1904~1970)の「北極」などが、彼の師の有島生馬の作品と並んでいた。藤島武二の「日の出」は、昭和天皇即位記念として皇室学問所からの依頼であったという。
第2室では、シャガールの「花嫁と花束」(1936)、藤田嗣治の「河岸にて」(1956)、モジリアニ、ユトリロなどと出会うことができた。長島美術館には、他にも薩摩焼やアールヌーヴォーのガラス作品コレクションなどがあったのだが、申し訳ないが素通りとなった。それにしても入館者が少なく、ゆっくりと鑑賞できた。大きなホールの方では「ぞ展」が開かれているとのこと。のぞいてみると、たいへんな賑わい。「ぞ」は「造形」の「ぞ」だそうで、もう7年も続いている。分野を超えた作品が所狭しと展示され、作家も見学者も圧倒的に若い人が多かった。
佐藤忠良「ポケット」、忠良の作品は、いつも振り返ってもう一度眺めたくなる。宮城美術館の「ボタン」もそうだった。
初出:「内野光子のブログ」2023.12.8より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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