露シア・烏クライナ戦争の性格――日本は米英と共に露を伐つだけで良いのか?――
- 2024年 3月 1日
- 評論・紹介・意見
- 岩田昌征露烏戦争
露烏戦争、今年の2月24日で満二年。
2022年3月3日、「プーチンのウクライナ侵略とクリントンのセルビア侵略」なる一文
http://chikyuza.net/archives/117676 を「ちきゅう座」「スタディルーム」欄に発表した。クリミア併合の場合、クリントンのセルビア侵略に比してまだ「情状酌量の余地あり」であったが、今回のウクライナへの大量出兵は、情状の余地なき侵略そのものであると断じた。ただし、ロシア国民に戦意低し。泥沼化する。「プーチン政権がウクライナ侵略戦争の泥沼から対ブリュッセル戦争に踏み切ったならば、ロシア国民も戦争に真剣になるかも知れない。」と予論した。
幸か不幸か、プーチン政権が対NATO戦争に敢えて踏み切る必要はなかった。NATOの方が対露戦争に突入したのである。
如何にしてか。以下のやりかたで。プーチン政権もゼレンスキ―政権も馬鹿者ではない。戦争の泥沼化を避けるべく戦斗と並行して和平合意を模索していた。その結果がエルドアン・トルコ大統領仲介による2022年3月末のイスタンブール合意案である。ウクライナはNATOに不参加、ロシア語をウクライナの第2公用語化、2月24日以後占領された領土の回復・・・。
ベオグラードの日刊紙『ポリティカ』(2023年11月28日、第1面)の記事「ロンドンがキエフとモスクワの協定を爆破した」は、イスタンブール和平交渉のウクライナ側のトップ交渉者であった政権党「国民の僕」議員ダヴィド・アラハミヤが2023年11月25日にウクライナ・テレビに行なったインタビューを報じていた。アラハミヤは、「あのイギリスの態度がなかったならば、戦争は去年の春に終わっていた。」と明言した。イギリス首相ボリス・ジョンソンは、突然にキエフを訪れ、「我々は彼等(ロシア)とは署名しない。彼等とは戦うだけだ。」とウクライナに通告した。
かくして、米英以外の全関係諸国が納得した露烏合意は破棄され、露烏戦争は今日、2024年2月28日もまだ続いている。上記の証言は、ウクライナの主席交渉者の口から出たものであり、重い。
「プーチンのウクライナ侵略・・・」を書いた約一ヶ月後、私=岩田は、2022年3月30日「ちきゅう座」「評論・紹介・意見」欄に「ウクライナ勝利とロシア連邦解体」http://chikyuza.net/archives/118292 を発表した。それは、駐セルビア・ウクライナ大使がベオグラードの有力テレビに出演して行なった対露硬演説(3月27日)を要約紹介した一文である。ウクライナ大使によれば、この戦争は、ロシア軍の軍事的敗北、ロシア連邦の降伏、賠償支払だけではなく、ロシア連邦の解体で終わるとされていた。
開戦二ヶ月目の段階で、ウクライナ大使が外国セルビアの国民に向かってかかる対露硬をテレビ放映したのは、今になって再考すれば、放映日がイスタンブール交渉時期と重なっており、ウクライナ政権内の親英米派が英国首相ジョンソンの戦争継続作戦に一体となって参加していたからかも知れない。私=岩田の情況論的に合理的な推量にすぎないが・・・。
ここで参考になる記事「ウクライナ戦争の終わり見えず」が『ポリティカ』(2024年1月21日、第1面、第2面)に在った。
それによると、2023年のかなり長い期間、キエフ政権とウクライナ軍、そして西側の同盟諸国は、2023年末までに勝利する事を確信していた。
ウクライナ鉄道は、キエフからクリミアへの切符を売り出し始めた。第1号列車の発進予定は6月1日であった。ゼレンスキ―大統領顧問ミハイル・ポドリャクは、この夏ヤルタの気に入りの喫茶店でコーヒーをたしなむと高言し、ロシア人全員の追放を含むウクライナ・クリミアの発展方針を公表した。
ウクライナ軍諜報局長キリル・ブダノフ将軍は、「敗戦後のロシア連邦分解図」を描く。そこに十ヶ国の新国家が成立する。またさらに、ウクライナは、クラスノダルスク地区、ロストフ州、ベルゴロド州、クルスク州を併合する意図を明言。
かかる楽観論は西側も共有しており、2023年1月に元NATO欧州司令官ベン・ホッジスは、「ウクライナは8月末までにクリミアを解放する。」との確信を表明し、続けて「世界は、ロシア連邦の崩壊に備えなければならない。」と警告した。
上述の簡単な諸事実の考察から以下の結論が導き出せる。
露烏戦争は、2022年2月24日から4月上旬までプーチン・ロシアによる侵略戦争、ゼレンスキ―・ウクライナの祖国防衛戦争である。2022年4月上旬から現在に到るまで、事実上、NATO露戦争、すなわち北米西欧の防衛戦争であり、露連邦の防衛戦争である。両者ともに攻撃戦争ではまだない。民主主義政権のおかげでNATOの代理兵士とされたウクライナ常民の無念無残察するに余り有り過ぎる。権威主義政権のおかげでロシアの代理兵士とされる可能性も理論的にはあったであろうが・・・。大和左彦として露烏白三民族に残る同族感情の深層海流、すなわち兄弟殺し忌避感にかすかに期待するのみ。
令和如月28日
岩田昌征/大和左彦
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13586:240301〕
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