SJJA& WPO【西サハラ最新情報】577 目には目を歯には歯を
- 2024年 4月 20日
- 時代をみる
- パレスチナハンムラビ法典国連平田伊都子西サハラ
<目には目を歯には歯を>とは、ハンムラビ法典による<等価交換>の原則です。 つまり、「目を潰されたら相手の目を潰せ、歯を折られたら相手の葉を折れ」と、被害と同等の報復を奨励しています。 が、過剰な仕返しを奨励する言葉ではありません。
報復第二ラウンドを構えるイスラエルとイランに贈りたい、古代人の金言です。
① ハンムラビ法典の教え:
<法の支配>をアメリカ議会で連発した日本の総理大臣も、<目には目を歯には歯を>を含む282条の世界最古のハンムラビ法典をご存知かと思うが、軽く復習しましょ、、
紀元前18世紀ごろ、アッカド法やシュメール法などをもとに、バビロン第1王朝のハンムラビ王が制定した法典を<ハンムラビ法典>という。前文・本文・後文で構成され、刑法・民法・商法・訴訟法など様々な主題が282条にわたって、高さ2.25メートルの岩石で作られた石碑に<楔形文字>で記されている。
ハンムラビ王は、多数の小国があったメソポタミアと呼ばれるチグリス川とユーフラテス川流域のある地域(現在のイラク)を統一した。王はハンムラビ法典の編纂以外にも、灌漑用水路の建設や商業・交易の整備などを行い、バビロン第1王朝に栄華をもたらした。
問題の<目には目を>は196条にあり、「もし彼がほかの人の目を傷つけたならば彼自身の目も傷つけられなければない」と記されてはいるが、復讐を推奨するものではなく、報復のやりすぎを防止するための法でもあった。金で決着をつけてもいいそうだ。
ハンムラビ法典の前文は「正義を顕すために、強者が弱者を虐げないために」と始まり、後文には「身寄りのない寡婦や孤児へと正義を戻すため」と謳われ、ハンムラビ法典は立場が弱い人や身分が低かった女性にも言及している。ハンムラビ法典は罪人にどのような罰を与えるかだけでなく、弱者が暮らしていけるように社会福祉的な配慮もしている。
ハンムラビ法典が記された石碑は、1901〜1902年にイランの古代都市スーサでフランス発掘団が発見し、自国に持ち帰りルーブル博物館に飾っている。これって、国際窃盗団?
人類最古の文明を残したメソポタミア地方(現在のイラク)のシュメール人は、紀元前4000年ごろにウル、ウルク、ニップルといった多数の都市国家を生み出し、青銅器、楔形文字、ジグラット(神殿)などの文化を残した。20世紀の初め、メソポタミア文化発掘競争が、特にフランスとイギリスの間で活発になり、両国は盗掘品を自国に持ち帰り高価な美術品としてルーブル美術館や大英帝国博物館などに展示し、儲けた。
米軍の絞首刑で殉教した故サダム・フセイン・イラク大統領は生前、バビロン遺跡の再建に取り組み、<ネブカドネザルの息子サダム・フセインが再建>と刻んだレンガを、多数はめ込んだ。が、2003年のアメリカ軍侵攻後、古代バビロン遺跡は米軍第一海兵隊が占領しヘリポートなどの装備を備えた<キャンプ・アルファ>を建設し、古代バビロン遺跡を破壊した。
メソポタミア文化遺産の奪還を目指していたフセインは殺され、遺跡は壊滅された。
フセインが父と敬うバビロン第2王朝のネブカドネザルⅡ世は紀元前728年にユダヤ王国を滅ぼし、ユダヤ人をバビロンに連行し移住させた。そして、第2バビロン王朝を滅ぼしたペルシア(現在のイラン)の王キロスによって、ユダヤ人は帰還を許された。
フセインのご先祖のご先祖・ハンムラビ王なら、この大窃盗や大破壊にどんな罰をあたえるのかな?
紀元前18世紀ごろ、ハンムラビ法典を刻んだ石碑。左がハンムラビ王、
右が太陽神シャムス、二人の下に楔形文字の法典が続く
② 4月14日の国連安保理討議:
14日は日曜日で、国連は閉店だ。ところがイスラエルの命を受け、16時に急虚開店した。その日の午前4時、イランがイスラエルに向けて巡航ミサイル110発と爆撃ドローン185発を発射したからだ。
イランは、「イスラエルがシリアの首都ダマスカスにあるイラン公館をミサイル空爆し、イラン革命防衛隊7人(うち3人は将軍)とシリア外交官6人を暗殺したことに対する罰だ。大使館公館は国際法で治外法権となり、イラン大使館公館はイラン領土になる」と、イラン外務省が発表した。そして、「イスラエルの暗殺に対するお仕置きはこれっきりだ」と、「目には目を」のハンムラビ法典遵守を明確にした。
国連安保理招集を命じたイスラエルのエルダン国連大使議は、「今回の攻撃で、イランは越えてはならない一線を越えた。イスラエルには報復する法的権利がある」と、エルサレム上空を飛来する火の玉の画像を見せながら、激しく罵った。
イランのイラバ二国連大使は、「安保理決議や国際法の義務を無視して残虐な犯罪を犯しているのはイスラエルだ」とガザ市民に対するイスラエルのゼノサイドを批難した。
欧米の国連大使は一様に、イランの攻撃を非難し、イランとイスラエルに自制を求めた。
ロシアの国連大使は、「イランの行動は地域レベルでもグローバルレベルでも常に均整がとれている。それに比べ西側諸国は、イスラエルがダマスカスのイラン大使館へ行った攻撃は国際法への重大な違反であったのにもかかわらず、国連安保理での糾弾を拒否した。イランは今回の攻撃によってイスラエルを本質的に貶めた」と、<西側諸国の目に余るイスラエルひいき>を非難した、
「中東紛争へのイラン誘引がイスラエルと米国の狙い。ロシアをウクライナに巻き込んだのと同じ手口」と、フサム・アルアトゥム・ヨルダン国際問題専門家が指摘している。4月16日、イランのライシ大統領はプーチン大統領と電話会談をし、「これ以上の緊張の高まりを望んでいない」と、強調した。プーチン大統領は、中東全ての当事国が自制し、対立のエスカレートを防ぐべし」と、勧告した。
一方のイスラエルは、国際社会が団結してイランを殲滅するまたとない好機だと、口角泡を飛ばし国連安保理メンバー国を煽ったが、バイデン米大統領の「われわれはイスラエルがとるいかなる対抗措置にも参加しない」の一言で、クシュンと、萎んだ。ネタニヤフ戦争内閣は閣議を重ね、「正攻法でなく、暗殺とか、サイバー攻撃とか、、公表せず秘密工作でイランを痛めつける」という作戦に変更したようだ。国家総動員法をかけた戦争内閣が、急に「国民の70%が報復戦争に反対しているから、、」との世論をデッチ上げた。暗殺計画を使命の一つに掲げるモサド(イスラエル諜報特務庁)が、暗躍することになる、、
③ 4月16日の国連安保理協議:
「我々は、<目には目を>というサイクルを再び見たくない」と、日曜日の安保理協議を受けて、国連事務総長報道官は4月16日の定例記者会見で述べた。僭越ながら博学のパリジャン報道官に、ハンムラビ法典196条の復習をお勧めしたい。
マルタが議長国を務める4月16日の国連安保理は忙しかった。予定されていた<西サハラ紛争>の協議は押せ押せで夜に入り、十分な討議はされなかったようだ。しかも非公開だった。情報筋によると、「安保理理事国は、西サハラ事務総長個人特使スタファン・デ・ミストラのブリーフィングに耳を傾けた。特使は、国際的関係者との接触や協議の結果について報告し、MINURSO(ミヌルソ国連西サハラ人民投票監視団)の責任者は、現地の概要を説明した」ということだ。
西サハラ難民政府の国連代表でMINURSO(ミヌルソ国連西サハラ人民投票監視団)
西サハラ側担当者のオマル博士は、「多くの安保理理事国は声明の中で、関連する国連決議に基づく西サハラの人々の自決権を保障する平和的、公正かつ永続的な解決を達成する必要性と、MINURSO(ミヌルソ国連西サハラ人民投票監視団)がその任務を完全に遂行する必要性を強調した。このことは、西サハラ人民の自決と独立に対する不可侵の権利の行使が、公正かつ永続的な解決を達成し、地域に平和と安全を確立するための唯一の方法であり続けることを再確認させた。さらに理事国は、モロッコ占領国の拒否で、国連人権高等弁務官事務所が西サハラ占領地域を訪問できない状態が続いていることに懸念を表明した」と、4月17日に声明を出した。
パレスチナの国連正式加盟に向けて協議していた国連安全保障理事会は、4月18日午後5時すぎに採決をしました。理事国15か国のうち日本を含む12か国が賛成しましたが、イギリスとスイスが棄権しアメリカが拒否権を行使し、否決されました。 国連加盟193か国のうち日米などを除く約140か国がパレスチナ国家承認をしているんですよ!
それでも、パレスチナは諦めずに国家承認を国連安保理に求めていくそうです。
西サハラも同じです。 諦めずに、<西サハラ国連人民投票>を約束した国連安保理に促し続けていくそうです。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2024年4月20日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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