100部隊「匿名読者」から第3信拝受、資料全面公開か、ご自分で資料集編纂を!
- 2024年 6月 2日
- 時代をみる
- 100部隊731部隊加藤哲郎細菌戦
2024年6月1日 ●昨2023年9−11月にかけて、本「ネチズン・カレッジ」サイト・トップでは、小河孝教授との共著『731部隊と100部隊』に対する「匿名読者」からの手紙にもとづき、示唆された「関東軍軍馬防疫廠100(イチマルマル)部隊」についての新たな資料について、広く情報提供を求めてきました。ただし8月の第1信、9月の第2信の後は、「元100部隊の某隊員から遺言を託された匿名読者」からも、他の関係者からも応答がなかったので、2024年に入ってからは、本サイトはこの問題には触れずに、獣医学者の小河孝教授と、新たに100部隊「職員表」を見つけた若手の歴史研究者・松野誠也さん(明治学院大学)に加わってもらい、3人の共著による学術書『関東軍軍馬防疫廠100部隊――戦争と獣医学』(仮題、花伝社8月刊予定)執筆に取り組んできました。その原稿締切直前に、昨年と同じ筆跡の「匿名読者」からの5月3日付け第3信が、みたび出版者気付で、加藤・小河宛に送られてきました。
● そこには、「ネチズンカレッジ拝読させていただきました。まず公表していただいたこと、そして戦争と医学・医療研究会にも取りあげて頂いたことを、某隊員に成り代わりまして御礼申し上げます。昨年送付いたしました資料・書類は私の説明不足な点があり、失礼をいたしました。以下の事について書籍・資料等を再確認調査いたしましたので、送らせて頂きます」と丁寧な文体で、おそらく他意はないと思われるが、またしても自分自身で「某隊員」の資料を解読し私たちに「解説」する手紙文と、新たな資料の所在地を示す文章等が入っていました。 たぶん高齢の方でしょうが、本サイトにアクセスすることはできる方のようです。
● 私たちの執筆中の共著書は、確かに昨年の「匿名読者」による「某隊員」遺品資料に触発されて企画されましたが、もともと1987年の三友一男『細菌戦の罪』(泰流社)以外に資料も研究も少ない100部隊について、国内外の資料を改めて収集し、特にその731部隊とならぶ細菌戦と人体実験を、学術研究の対象とすることを目的としていました。そのため、松野氏が歴史学・軍事史研究から、小河教授が獣医学の立場から、そして私が政治学・情報戦の視角から、それぞれに研究してコラボする原稿が、ほぼできあがっていました。そこで、「匿名読者」氏の新たな資料や史実の解読の示唆に応えるには、更に数ヶ月の調査と分析を必要とするため、私たちは、敢えて、本サイト及び執筆中の新著の末尾に、この「匿名読者」第3信への返答を「あとがき」風に加筆し、これまでの資料提供に対する御礼と、私たちなりの最新の解読結果を示すことにしました。
● これまでの「匿名読者」の情報提供は、旧隊員でなければ知り得ぬ隊友会や会誌の情報を含むものとしては有益ですが、その旧隊員「遺品」資料の全体は示されることなく、「匿名読者」により切り取られ「解説」された断片が、示されたものでした。写真版で偽書ではないと判断できましたが、私たちの学術研究にとっては、ある特定の解釈の方向に誘導される懸念があり、批判的に扱わざるをえないものでした。もう一つ、「某隊員」の遺品といいながら、その第一次資料所有者の氏名が明らかにされず、その「遺言」に従ったという「匿名読者」の連絡先も不明のままでしたから、その資料と解読の信憑性を担保するものがなく、学術的には使いにくく、限定的に取りあげるしかないものでした。
● そこで私たちは、「留守名簿」「職員表」など100部隊研究の基礎資料と第1・第2信発送元の消印住所、何よりも100部隊2部6科での人体実験に関わったと思われる「某隊員」遺品という限定的資料から、すでに「某隊員」を「M技師」と推定し、そのように理解すると合理的に解釈できる他の資料等をも使って分析を進めていました。昨年の本HPでは、私のメールアドレスなど連絡先を明示していたにもかかわらず、「匿名読者」からの直接連絡はなく、今回も出版社宛手紙というかたちで送信してきたのは遺憾ですが、第3信は、われわれが推定してきた「某隊員」が「M技師」であると確信できる内容を含んでいましたので、夏に刊行する新著では、その追跡経過と根拠を含め、故人である「旧隊員=M技師」の本名を明記し公表することを、ここに予告しておきます。
● 「匿名読者」に他意はないと思われますが、「某隊員」の遺言に沿って「真実の記録」を遺したいのであれば、これまでのような資料の断片的公開・恣意的「解説」は止めて、「M技師遺品」の全体をわれわれに示し閲覧可能にする、ないし、ご自分で資料集を編むなり、解説書を書くなりして世に出すことこそ必要ではないでしょうか。改めて、御礼とコメントをここに記し、メールアドレス katote@jcom.home.ne.jp への直接の連絡をお待ちします。
●今回の6月1日更新は、上記の執筆中の100部隊新刊書書き下ろし原稿締め切りに重なり、しかも、直前になって「匿名読者の第3信」が飛び込んできたために、パレスチナもウクライナも、政治資金規正法や東京都知事選・共産党パワハラ問題などもすべて省略し、「匿名読者」との対話編にしています。新著の実際の原稿は、すでに小河・加藤・松野ともほぼ完成し、日本における関東軍軍馬防疫廠=100部隊研究の基礎文献になることを目指しています。私自身の担当分「情報戦としての細菌戦」では、日本映画「ラーゲリより愛を込めて」、韓国映画「京城クリーチャー」、それにコロナ禍で亡くなった外交官の遺書『危機の外交 岡本行夫自伝』(新潮社)を取り上げて、東アジアで現在も続く戦時日本の侵略・植民地支配の影を追います。故岡本行夫氏の亡父は、731部隊のロシア語通訳でした。戦争体験の継承の、新しいかたちを探ります。関東軍の細菌戦から戦後の米ソ生物兵器開発におけるバイオハザード、オウム真理教と9.11直後の米国で実践されたバイオテロの問題もとりあげる予定です。8月発売予定ですが、乞うご期待です。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye5255:240602〕
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