元スイス陸軍大佐/戦略アナリスト・ジャック・ボー氏が語る「ウクライナ紛争」: 『ロシアはヨーロッパを攻撃するつもりはない』
- 2024年 7月 18日
- 評論・紹介・意見
- 「ウクライナ戦争」グローガー理恵ジャック・ボー
- 国民は真実を知る権利があるため、自分への影響がどうであれ、真実を尊重すること。
- 情報、コメント、批判の自由を擁護する。
- 出所が明らかな情報のみを掲載するか、適切な場合には必要な留保を付す。必要な情報を削除したり、文章や文書を変更したりしない。
- 不公正な方法で情報、写真、文書を入手しない。
- 人のプライバシーを尊重するよう自分を強制する。
- 不正確であることが判明した公表情報は訂正する。
- 職業上の秘密を守り、機密情報の出所を明かさない。
- 剽窃、誹謗、中傷、根拠のない言いがかりを行わず、情報の公開や削除によって利益を得ないこと。
- ジャーナリストの職業と広告主や宣伝者の職業を混同しないこと。広告主からの直接的、間接的な指示を受けないこと。
- いかなる圧力も拒否し、編集部の責任者からのみ編集上の指示を受け入れること。
- ジャーナリストは、すべての情報源に自由にアクセスし、公的生活を決定するすべての事実を自由に調査する権利を要求する。この場合において、公的または私的な事柄の秘密がジャーナリストに否定されるのは、例外的な場合であって、明確に示された理由がある場合に限られる。
- 記者は、雇用契約に書面で定められた会社の一般的方針に反する従属、およびこの一般的方針に明確に示唆されていない従属を拒否する権利を有する。
- ジャーナリストは、自己の信念または良心に反する職務上の行為または意見の表明を強制されない。
- 編集部員は、会社の生活に影響を及ぼす可能性のあるすべての重要な決定について知らされていなければならない。編集スタッフの構成に影響を与えるすべての措置(記者の雇用、解雇、異動、昇進など)については、少なくとも最終決定の前に、編集スタッフと協議しなければならない。
- ジャーナリストは、その職務と責任に鑑み、労働協約のみならず、その物心両面の安全を保障する個人契約、ならびに、その者に与えられた社会的役割に相応し、かつ、その経済的自立を保障するに足りる報酬を受ける権利を有する。
はじめに
《ロシアがヨーロッパを攻撃してくる!》
これが西側の政治家やマスメディアの今日の主張であり、このような主張にヨーロッパの市民は恐怖感を覚えている。
例えばドイツの公共放送局 “Deutschlandfunk“の2024年5月13日付の記事は、こう報道している:
『① ボリス・ピストリウス独連邦国防相(SPD)は、ドイツは「戦争への備え」をしなければならないと言う。ロシアによる西側軍事同盟の加盟国に対する攻撃は、現時点ではありえないが、5~8年後には起こりうる」と語っている。
② 安全保障の専門家と西側の政治家は、ロシアが10年以内にヨーロッパで再び戦争を始める可能性があると警告している。
③ 西側の安全保障の専門家は、プーチンのロシアを真の脅威と見ている。その一人が軍事専門家のパヴェル・ルジンである。彼はアメリカ在住で、欧州政策分析センターのデモクラティック・レジリエンス・プログラムのシニアフェローである。「ロシアは冷戦後に生まれた世界秩序を破壊することを公然と宣言しています。ロシアは新しい世界秩序を望んでいるのです。ロシアはNATOやすべてのヨーロッパ諸国に対して軍事的脅威を与えています」とルジンは言う。』
問題は、ピストリウス独連邦国防相の主張にしても、安全保障の専門家と西側の政治家の主張にしても、パヴェル・ルジン氏の主張にしても、彼らがどこからこのような情報を得て、どのような情報/証拠に基づいて、そう主張するのか明白でないことである。
「茹でガエル現象」という比喩があるのをご存知だろうか? カエルを熱湯に入れるとカエルは危険を察知して、すぐ飛び出して逃げるが、カエルを冷水の入った鍋に入れてゆっくりと加熱していくと、カエルは危険を察知することができず、そのまま茹でられて死んでいくという。
これこそが、今、私たちがもっとも懸念すべき現象なのではないだろうか。私たちは、政治家たち、いわゆる専門家たち、マスメディアによる主張に疑問をもつことなく、彼らの「ロシアが侵攻してくる」という脅威に満ちた主張をそのまま受け入れて、徐々に徐々に「ヨーロッパでの戦争は避けられないのだ」という思潮/風潮に流され、その考えに慣れていってしまう。 ちょうど、冷水の入った鍋でゆっくりと茹でられていくカエルのように、私たちは危機を察知することができないまま、じっとしているのだ…..。そして、その結末は瞭然としている。
《ロシアはヨーロッパを攻撃するつもりはない》
とは、スイスの戦略アナリスト・ジャック・ボー氏が最近のスイスの独立系メディア「Zeitgeschehen im Fokus(注目の時事問題)」とのインタビューで断言した言葉である。 さらに彼はインタビューの中で、スイス・ビュルゲンシュトックで開かれたウクライナ平和サミットに言及し、サミットには何の成果もなかったと評している。
なぜ「ロシアはヨーロッパを攻撃するつもりはない」と、ボー氏は断言するのか? なぜ「ウクライナ平和サミット」は失敗に終わったとボー氏は主張するのか? 記事をお読みいただければ、おそらく、お分かりいただけるのではないかと思う。
原文(ドイツ語)へのリンク
https://zeitgeschehen-im-fokus.ch/de/newspaper-ausgabe/nr-10-vom-25-juni-2024.html#article_1696
《訳注》下記にご紹介するインタビューは全訳ではなく抄訳したものである。
ジャック・ボー氏について
写真:ジャック・ボー氏
[ Source: the Postil Magazine]
修士号と国際安全保障の修士号を取得し、スイス陸軍の大佐を務めた。スイス戦略情報局に勤務し、ルワンダ戦争時の東ザイールの難民キャンプの安全確保に関するアドバイザーを務める(UNHCR – ザイール/コンゴ、1995-1996年)。ニューヨークの国連平和維持活動局(DPKO)に勤務し(1997-99年)、ジュネーブの国際人道的地雷除去センター(CIGHD)および地雷対策情報管理システム(IMSMA)を設立した。国連平和活動におけるインテリジェンスの概念導入に貢献し、スーダンで初の統合型国連合同ミッション分析センター(JMAC)を率いた(2005~06年)。ニューヨークの国連平和維持活動局平和政策・教義部(2009~11年)、安全保障セクター改革・法の支配に関する国連専門家グループの責任者を務め、NATOに勤務した。
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– スイスのメディア “Zeitgeschehen im Fokus (注目の時事問題)”から –
ロシアはヨーロッパを攻撃するつもりはない
《 我々の政治家は自分たちのナレティヴの囚人となっている》
〈2024年6月25日〉
インタビュアー:Zeitgeschehen im Fokus のトーマス・カイザー(Thomas Kaiser)氏
インタビューされる人:ジャック・ボー(Jacques Baud)氏
トーマス・カイザー: 数ヶ月にわたって、ウクライナへの新たな武器供与についての議論がメディアを賑わせています。 すでにウクライナに供与された武器は、戦争の行方に何らかの影響を及ぼしたのでしょうか? もしそうだとしたら、そのような影響はどこで見きわめることができるのでしょうか?
ジャック・ボー:いいえ、これらの兵器には何の影響力もありませんし、紛争の行方に影響を及ぼすことはないでしょう。 それにはいくつかの理由があります。まず第1に、これらの兵器は概して旧式であり、我々の軍隊の余剰から出たものです。私の著書『ロシアの戦争術 (The Russian Art of War)』で示しましたように、ロシア側に配備された戦車の平均年数は13.4年であるのに対して、ウクライナ側の平均年数は29.7年になります。
第2に、アンナレーナ・ベアボック[独外相]自身が認めたように、我々がウクライナに供給している兵器は欠陥品であったり、しかも使用不可能であったりすることが多いのです。¹ これは、ウクライナがドイツから提供されたレオパルド2戦車を拒否するほどまでに至っているのです。² 第3に、ウクライナに供給された西側の兵器は、中東や中欧の地形に合わせて開発されたものであり、ウクライナで行われている戦争にはまったく適していません。³
第4に、ウクライナ軍はこれらの兵器を使いこなすための十分な訓練を受けていません。これらの兵器はすべて異なっていて、様々な国から来ているのです:そのため、ウクライナの兵士たちはしばしば「グーグル翻訳」を使って取扱説明書を翻訳しなければならないのです!4
第5に、これは、もっとも重要なことですが、このような兵器の「寄せ集め」を首尾一貫したドクトリンや作戦上のコンセプトに統合させることは事実上不可能です。 例えば、2023年以来、マクロンはウクライナにミラージュ2000-5戦闘機を供与すると述べてきました。しかし、2023年9月、ウクライナ空軍のユリ・イグナト報道官は、ミラージュ2000の譲渡は合理的な決定ではなく、それを使いこなすことはウクライナの航空資源を枯渇させるだけのことになるだろう」と説明しました。5
ロシア軍は、軍の訓練、組織構造、作戦ドクトリン、作戦指揮構造に合致した兵器システムをいつでも使えるようになっているのに対し、ウクライナ軍はこれらの兵器システムを戦術的に投入することに限定せざるを得ないのです。
言い換えれば、ロシア軍は戦術的成功を作戦上の成功に変えることができるのですが、ウクライナ軍は、せいぜい戦術的成功を目指すのが精一杯なのです。これらのことはすべて私の著書に記述されてありますので、ぜひ読んでいただきたいです! これらの問題すべてが明確に描写され、西側の政治家たちが、ウクライナ人に戦闘手段を与えることなしに、ただ彼らを戦闘へと追い立てたいのだという事実を説明しています。
ジョセップ・ボレル氏 [欧州連合の外務・安全保障政策上級代表]はこう言明しました:「どういうわけか、我々はこの問題をつくり出してしまったし、我々にはこの問題を解決する大いなる責任がある。 [中略] 私はウクライナの戦争をどのようにして終わらせることができるのか、知っている。単に私が武器供給を止めれば、ウクライナ戦争を数週間内で終結させることができる。 もし私がウクライナへの兵器供給を止めれば、ウクライナは抵抗することができなくなり、降伏せざるを得なくなり、戦争は終るだろう。しかし、我々はこのような形で戦争を終らせたいのだろうか? 私はそれを望んでいない。私はヨーロッパにおいても多くの人々がそれを望んでいないことを願っている」。⁶
毎日、我々が目にしているように、そして危機が始まった当初から私が説明してきましたように、西側諸国の目的はウクライナを助けることではなく、ロシアを弱体化させることです。 我々の議員にとって、他人の血で戦争をするのは簡単なことなのです。
ちなみに、これはまさにポーランドのドゥダ大統領がスイスのビュルゲンシュトックで開かれたウクライナ平和サミットの冒頭で述べたことなのです7 : それは「脱植民地化」について、つまり国籍によってロシアを分断することにあります。8 【*訳注1】 彼は単に、エストニアのカヤ・カッラス首相が5月18日にレナルト・メリ会議【*訳注2】で述べたことを繰り返しているだけのことなのです。⁹
これらの発言は、一方では、すべてのヨーロッパ政府によって支持されている「戦略」であるということを裏付けるものであり、ロシア国家の破壊を目的とするものであり、他方では、プーチンがロシアに対する存亡危機を何度も感じているということを確認するものです。こうして西側の政治家たちは、RTS [Radio Télévision Suisse]の専門家が主張するような「プーチンは偏執狂である」というのは、事実からほど遠いものであるということを自ら証明していますし、ロシア人の間におけるプーチンの信頼性を高めることにしています。10
トーマス・カイザー:メディアの報道によりますと、ヨーロッパ諸国はロシア領土まで戦争を拡大したがっていますが、米国は一定の抑制を示しています。 米国にとってロシアとの戦争は重要でなくなったのでしょうか?
ジャック・ボー:今日、我々のメディアはウクライナに対する大衆の支持を維持しようと努めています。 我々の政治家たちの破滅的な決定は直接、ヨーロッパの人々の生活や各国の経済に影響をもたらし始めています。
時が経てば経つほど、我々のメディアや政治家たちが、この紛争のほとんど全てについて嘘をついてきたことが、ますます明らかになってきています。私は、2022年9月に出版された本「オペレーションZ」で、すでに、2022年3月にロシアとウクライナの間で[訳注:和平]合意の可能性があったのですが、ヨーロッパ諸国によって阻止されたことを発表しました。しかし、我々のメディアは、2023年末になってやっと、そのことについて報道するようになりました。そしてニューヨークタイムズにいたっては、数日前にその内容を公表したばかりです。11
我々の [スイスの] 駐キエフ大使は、スイスのメディアから何度も質問されたのですが、ゼレンスキーが英国、フランス、ドイツからの圧力下にあったため、合意を撤回したという、この内容について言及することは決してありませんでした。
この時点で、西側諸国は、ロシアを最終的に敗北に導くことになる大規模な反攻のための兵器をウクライナに供給するということで、ゼレンスキーを説得することに成功しました。12 この100万人の兵力を投入した大規模な反攻については、2022年7月に、すでにゼレンスキーによって発表されていました。 そこで、ゼレンスキーは、西側諸国の物資的援助と制裁によってロシアを打ち負かすことができると確信し、2022年9月に国連に提出する「平和の公式」を作成しました。実際には、この平和の公式はロシアの降伏宣告以外の何ものでもないのです。 勝利が近づいていると確信したゼレンスキーは、プーチンが権力の座にある限り、ロシアとのいかなる交渉も禁止するという政令を発布しました。13
まず5項目について、それから10点項目について、「ゼレンスキー平和の公式」【*訳注3】は、2024年1月のダボス会議を含めて、6つ以上の国際会議で紹介されます。 この公式はスイス・ビュルゲンシュトックのウクライナ平和サミット【*訳注4】でも議論されるはずです。
2022年11月上旬から、米国は戦争に負けたことを認識し、ゼレンスキーにロシアと交渉するように促しました。 彼らは2022年初頭の大規模な制裁がロシアの崩壊と敗北をもたらすものと確信していたのですが、すぐに、これはうまくいかないということに気きました。 それで彼らはゼレンスキーにロシア側との交渉を開始するようにと促したのです。14
米国はウクライナを見捨てたくなかったし、引き下がることができなかったので武器を提供しました。 しかし、2023年初頭には米国にとって、ウクライナの反攻が成功しないであろうということは明らかでした。15 拙著で説明しましたように、もっとも狂信的だったのはヨーロッパ人でした。
西側諸国においては、3種のアクターが現在の状況に直接的に寄与しています:❶状況を理解する能力がなかった(そしていまだに無能である)諜報機関、❷宣伝屋と化したジャーナリストたち、❸そして政治家たちー彼らの無知、無能、知的能力の程度に我々は警戒すべきです。 それとは逆に、ヨーロッパの有権者は間違いを犯していません!
トーマス・カイザー: ジョー・バイデンは米国のためにウクライナに兵士を派遣するという動きを否定しました。 マクロンがこの提案をしていることには、どういう意味があるのでしょうか? 彼はまた、ミラージュ戦闘機を供給することも望んでいます。 フランは米国の役割を引き継ぐべきだということなのでしょうか?
ジャック・ボー: マクロンはヨーロッパにおける地位を求めています。 彼の政策はフランク国内でますます論争の的になっていて、彼がフランス政界での評価を取り戻すために外交政策における成功を求めている可能性は低くありません。
マクロンが2024年2月に、フランスは軍隊をウクライナに派遣するという構想に言及したとき、ウクライナ・プラウダが報じましたように、彼は米国の怒りを買いました。16
この怒りには2つの理由があります。
第1に:マクロンは「戦略的曖昧さ」をつくり出そうと試みたのですが、その正反対の結果をもたらしてしまいました:マクロンは、大西洋同盟の加盟国にウクライナへに軍派遣しないと公言することを強いました。17 そして、NATOは、同盟の権限のもとでの軍派遣は問題外であるということを再確認しなければならなかったのです。18
こうして、ウクライナへのNATO派遣の可能性は、「戦略的に確実」【*訳注5】となったのです。ですから、ある意味で、マクロンは西側の立場を弱めたわけです。
第2に:米国はウクライナでの戦争が敗北したことに気づいているのです。 バイデン政権はウクライナをあきらめたくないのですが、この紛争は失敗したと見なされているため、ウクライナ紛争を目立たせないようにして、選挙戦であまり重要視されないことを望んでいるのです。
この際、米国の政策の優先順位は中国であり、今もそうであるということを忘れてはなりません。 ロシアの弱体化は、中国を国際舞台で孤立化させることを目的としています。ちなみに、この論理は最近採用された対中国制裁の理由でもあるのです。 20
米国は「ロシアが『戦争経済』にある」と宣言することによって、ロシア経済を支えるすべての活動を制裁する権限を自らに与えているのです。 言い換えれば: それによって、中国の銀行取引は米国の制裁によって脅かされ、そこに、中国経済を弱体化させるための西側諸国の保護主義的措置が付け加えられます。
トーマス・カイザー: ロシアはどのような戦略目標を追求し、それを達成するためにどのような手段を試みているのでしょうか?
ジャック・ボー: ロシアは、2022年2月24日にプーチンが表明した目標内容を変えていません:ドンバスの住民に対する脅威をなくすための非武装化と非ナチス化です。 しかし、もちろん、それらの目標は時が経つにつれて進行してきました。 それらは策定された通り、2022年春に達成されました。
これが、イスタンブールにおける交渉と、西側諸国によって阻止された協定案のひとつの理由となったことは確かです。 西側諸国が、ゼレンスキーが求めた協定案を拒否したため、ロシア側は彼らの目標を適合させました。 彼らはドンバスに対する脅威に限定するだけでなく、ロシアそのものに対する脅威も目標に含めたのです。
今日、2022年2月以来、戦場を支配しているのはロシアであるというのが現実です。 彼らは決してウクライナの領土を奪おうとしませんでした (ちなみに、ロシアは2022年3月にウクライナの領土を返還する準備ができていたのです!)。 ロシアの目標を適切に分析すれば、彼らが、領土を奪おうとしているのではなく、潜在能力を破壊しようとしているということに気づきます。 私が自著、とくに「 Die Russische Kriegskunst [ロシアの戦争術ー仮訳]」で説明しましたように、彼らの思考はフォン・クラウゼヴィッツ【*訳注6】の影響を受けています。
その目的は、戦力、つまり潜在能力の破壊です。 このことによって、2022年3月に、なぜロシアがウクライナから撤退することに合意したのかということが説明できます。 2022年および2023年の「スイスの安全保障」を読みますと、我が国の諜報機関が冷戦時代に遡るロシア理解に固着していることに気づきます。実際には、彼らはロシアが言うことに耳を貸さず、我々に誤った情報を与えているのです。
その結果、ウクライナを間違った方法で支援しているのです。 ビュルゲンシュトック平和サミットの最終コミュニケ【*訳注7】を読めば、西側諸国が領土問題に焦点を当て続けていることがわかります。 しかし、ロシアは領土問題が目標であるとは表明していないのです。 我々はウクライナに領土防衛のための装備を供給することでロシア側にとって容易にしているのです。 なぜなら問題は戦車や装備の破壊ではなく、代替不可能な兵員の破壊だからです。 西側諸国は、ウクライナを消滅させることで一挙に問題を解決しようと、組織的にありとあらゆることをやってきたのです。
トーマス・カイザー:西側諸国の行動に何らかの戦略的目標を見いだすこと、および西側諸国はどのようにしてその目標を達成しようとしているのかということを認識することは可能でしょうか?
ジャック・ボー: ロシアとは違い、実際、西側諸国には戦略がありません。より正確に言いますと、西側諸国にはもはや戦略がないのです。 西側諸国の当初の目的は、主に大規模で残忍な制裁措置によってロシアを崩壊させることでした。21 しかし、米国はロシアが予測された以上に抵抗力があり崩壊するようなことはないと、すぐに気づきました。
それで、西側諸国は、ロシア経済が長期にわたる戦争努力を維持することはできないであろうという前提にたって、消耗戦略を追求したのです。 これが現在の西側の戦略です。
現時点では、ロシアが弱体化しているとか、紛争を継続できないといった兆しはありません。 それどころか: ロシア経済は強化され、社会・雇用情勢は良好ですし、軍事生産が減速する兆候は見られません。自分たちよりも多くの資源を持つ敵に対して消耗戦を仕掛けるというのは、常に悪い考えです。
これは、西側諸国が自ら陥った罠です。自らのナレティヴに目を眩ませて、西側諸国はロシアの完全敗北に固執し続けているのです。 しかし、これが期待された展開ではないということは明らかです。 問題は、西側諸国には何が成功であるのかということを定義する基準がないことです。 西側には明示された目標がないのですから、それを達成するための戦略もなく、それゆえ、何が勝利であるのかということを定義することもできないのです。23
ところで、これは2024年4月に起こったことで、ロイド・オースティン国防長官は上院軍事委員会の公聴会で、ウクライナの勝利とは何であるかということを的確に述べることができませんでした。 結局のところ、これは驚くに値しません。なぜなら、これが我々の政治家と軍が四半世紀にわたって続けてきた国の運営方法なのですから。
トーマス・カイザー: ロシアは軍艦をキューバ沖に出現させました。 これは何を意味するのでしょうか?
6月12日、キューバに出現した艦船 [Source: https://www.bbc.com/news/articles/cg66g0neweko]
ジャック・ボー: 我々はキューバ・ミサイル危機の「リメイク」の状況にあります。 西側諸国がウクライナにロシア領土への攻撃を許した後、ロシアはキューバに接近するために艦船を派遣しています。 これは同じシナリオですーただミサイルがないというだけですー1962 年、米国がトルコに核ミサイルを配備した後に、ソ連がキューバにミサイルを配備したのと同じシナリオです。 最終的に、米国のミサイルはトルコから、そしてソ連のミサイルはキューバから撤退させることで危機は解決しました。
ここでは、つまり ー 少なくとも現段階では ー 単なる大国間のメッセージ交換です。これは監視されなければなりませんが、あまり警戒する必要はないと思います。それよりも心配なのは、西側の政治家たちがこのような事態を招きかねないような行動をとっていることです。西側諸国は「戦略的曖昧さ」を実践していると自慢していますが、これはロシアには通用しません。 これは国家元首たちの大人げない気質を示しています。
トーマス・カイザー: 土曜日(6月8日)のNZZ(ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング)の社説は次のようでした:「…..ロシア軍は弱体化を示している。 彼らの優秀な部隊はとっくに消耗されてしまっている。 多くの小部隊と奇妙な輸送手段で(ドローンから守るために納屋の屋根のような覆いをした戦車、オートバイ、ゴルフカートまで)を使って、比較的まとまりのない方法で攻撃してくる。」 NZZによりますと、ロシア軍はもう終わりだということです。 ここでは、真面な調査が行われたのでしょうか?
ジャック・ボー: NZZは当初からウクライナ紛争について組織的に報道し、偽情報を広めてきました。ですから、もはやこの新聞を信頼できなくなっています。 私の著書で指摘しましたように、NZZはミュンヘン憲章【*訳注8】の原則を守らない新聞であり、事実上、すべての伝統的なスイスの新聞と同様なのです。
このNZZの記事は、それとはまったく逆のことを述べている英国王立安全保障研究所(RUSI)24 やクリストファー・カヴォリ米欧州軍司令官25 のような多くの米英の戦略研究機関による最終的推論に反論するものです。 我々のジャーナリストが実際にやっていることは、騙されやすく教養のない我々の政治家たちを、戦争を継続することには成功の見込みがあると納得させようとしていることなのです。
ちなみに、ウクライナを敗北へと導いたのはまさにこのレトリックなのです。 私が自著で確認しましたように、ウクライナの軍人がウクライナのメディアで、西側メディアが敵・ロシアについて完全に誤ったイメージを描き、敵をひどく過小評価するように惑わせたとの苦情を頻繁に訴えていました。 私は、この紛争の後、我々のジャーナリストたちにはウクライナの人々に釈明しなければならない責任に問われるであろうと思います。
しかし、このような現実の歪んだ見方は我々の報道機関だけの特権ではありません。我々の諜報機関も同様です。 2022年と2023年の「スイスの安全保障」についての報告書は、1992年以降の我が国の諜報機関の分析力の弱さを具象しています。26
それらの報告書では、ウクライナ危機が分析されておらず、後に虚偽であることが判明した一連の根拠のない主張が述べられてあります。 情勢判断があまりにも不正確に表現されているため、あらゆる解釈とその反対の解釈を許容しているのです。いずれにしても、安全保障政策の決定には適さない報告書です。
トーマス・カイザー: スイスの国家評議会メンバーがラジオで次のような最悪シナリオを語りました:
「ロシアが戦勝し、米国は中国に吸収され、ヨーロッパを助けようとしない。 プーチンはバルト三国とポーランドに侵攻し、ハンガリーとオーストリアを征服して、最終的にスイス国境に軍隊を駐留させる。そのためスイス軍は40億ユーロを追加して武装されるべきである。この要求の背景には、「ヨーロッパにおける脅威状況」がある」と。
「そのためにスイス軍は40億ユーロを追加して武装されるべきである。この要求の背景は『ヨーロッパにおける脅威状況』である」とのことですが、 スイス陸軍の元幹部として、スイスにおける脅威状況をどのように評価し、軍をどのように編成することが賢明なのでしょうか?
ジャック・ボー:この政治家はウォルト・ディズニーで仕事を探すべきであるばかりでなく、明らかに6月8日付のNZZを読んでいませんね(!)。 また、これはウクライナでの紛争を煽るために、あらゆることが主張されていることを示しています。 もし我々の諜報機関がきちんと自分たちの仕事をしていたのだとしたら、我々は、我が国に対して妨げとなる、狂信的な政治家たちの無駄話に耳を傾ける必要はなかったことでしょう。
今日、我々がウクライナおよびパレスチナで目撃している危機の主なメリットは、これらの危機が政治家たちの深い暗愚さを明らかにしていることにあります。 ちなみに、これはヨーロッパの人々が徐々に理解し始めていることでもあり、最近の欧州議会選挙において表明されたことでもあります。
ロシアはヨーロッパを攻撃するつもりはありません。 ウラジーミル・プーチンがほとんどすべての演説で繰り返し述べている彼の目標は、ウクライナにおけるロシア系住民に対する脅威を無力化することです。 もし我々のジャーナリスト、政治家、外交官が2022年2月以前、それから2022年3月の状況を注意深く追跡していたのだとしたら、我々がこのような状況に陥るようなことにはならなかったでしょう。
我々の政治家たちは自分たちのナレティヴの囚人となっています。彼らは、小さな子どものように、自分たちの過ちを正当化するために、次から次へと嘘を並べていかなければならないのです。我々の政治家たちは暴力のスパイラルを煽り立てています。
ウラジーミル・プーチンがヨーロッパ侵略を狙っているという考えは、まるっきりの空想です。 西側諸国とは異なり、ロシアは目標を定めて軍事行動を行います。 もしロシアがヨーロッパを攻撃するのだとしたら、ロシアの目標とは何だというのでしょうか?
トーマス・カイザー: スイス・ビュルゲンシュトックのウクライナ平和サミットを前に、ウクライナはスイスがロシアを招待することを禁止したということが発表されました。サミットは何らかの成果をもたらしたのでしょうか?
2024年6月15日、16日に開かれたスイス・ ビュルゲンシュトックのウクライナ平和サミット
[パブリックドメイン] 〈Source: Office of the Vice President of the United States – https://x.com/VP/status/1802140350909206668 〉
ジャック・ボー: サミットは完全な失敗に終わりました。 それぞれの国家首脳が一堂に会することになっていた2024年6月の平和サミットには160ヵ国が招待されました。そのうち92ヵ国が招待を受諾しましたが、57人の国家首脳しか姿を見せませんでした
スイスの平和サミットにロシアは招待されておらず、多くのメディアは単に「ロシアは欠席」とだけ報じて、ロシアが会議をボイコットしたかのような印象を与えていました。 これは RTBF [ラジオ&テレビ・ベルギー・フランス語放送]27やTF1 [フランスの民間テレビ局]28、その他の多くのフランス語メディアも同じことでした。 ロシアは招待されていなかったのです。 噂によりますと、出席したくても協議には参加できないと言われたとのことです。
実際には、サミットの目的は平和について話し合うことではなく、ゼレンスキーと彼の「平和の公式」が正当であると宣言することでした。 これは2022年夏、当時ロシアに対して採択された国連決議に基づいて作成されたものです。 5つのポイントに分けられた「公式」は2022年9月の国連総会に提出されました。同じ公式は10項目に分けられ29 、G20サミット(2022年11月15日)、コペンハーゲン(2023年6月24日)、ジェッダ(2023年8月)、マルタ(2023年10月28日)、ダボス(2024年1月11日)で相次いで紹介されました。これらの会議すべてが失敗に終わりました。 その理由は、この「平和公式」が実際にはロシアの降伏宣言だからです。
なぜそうなのか? 2022年3月、イスタンブールでの[和平]交渉中に、英国、フランス、ドイツがゼレンスキーに介入し、採択寸前だったロシアとの協定案を撤回させたからです。この際、ゼレンスキーは”平和”を西側からの「これまでに必要であった」援助とすり替えたのです。7月、ゼレンスキーはクリミアとロシアに占領された領土を奪還するため、100万人の兵士を投入する大規模な反攻作戦を発表しました。 彼は、ロシアに対して決定的な勝利を収めれば、NATOへの扉が開かれると信じたのです。そして、ゼレンスキーは2022年9月に「平和の公式」を作成して、プーチンが権力の座にある限りロシアとのいかなる交渉も一切禁止するという政令を出したのです。30
スイスで平和サミット開催される前の6月14日にウラジーミル・プーチンがロシア外務省の高官たちを前に行ったスピーチは、おそらくビュルゲンシュトック平和サミットの無意味さを明らかにするためのものだったのでしょう。この表向きは突然とも思えるスピーチで、プーチンは和平交渉に対するロシアの条件を公表しました。プーチンは、もしロシアと真剣に交渉したいのであれば、まず第1にウクライナ自身が交渉に権限を与えなければならず、第2に正当な交渉リーダーをもたなければならないと繰り返し明言しています。
結果として、スイス・平和サミットの最終宣言に署名したのは78ヵ国だけでした。36 署名国には当然、西側諸国とその衛星国が含まれています。ブラジルやインドのような「グローバル・サウス」の重要な国々は、一国として署名しませんでした。言い換えれば:ロシアに影響力を行使しうる可能性のある国々は署名していないということです。 事実、この平和サミットは、西半球と「残りの世界」の間に広がる溝を浮き彫りにしたものとなりました。
かつては世界の分断の架け橋となる政策をとっていたスイスは、この分断のシンボルとなったのです。
ー 抄訳終わり ー
以上
* * * * * * * *
《訳注》
【*訳注1】脱植民地化ー国籍によってロシアを分断すること:
エストニアのカヤ・カッラス首相とポーランドのドゥダ大統領は、『ロシアの脱植民地化』として、ロシアにある24の共和国を分断することを主張している。
ロシアの共和国は下記の通り:
1)アディゲ共和国、2)アルタイ共和国、3)バシコルトスタン共和国、4)ブリヤート共和国、5)ダゲスタン共和国、6)イングーシ共和国、7)カバルダ・バルカル共和国、8)カルムイク共和国、9)カラチャイ・チェルケス共和国、10)カレリア共和国、11)コミ共和国、12)マリ・エル共和国、13)モルドヴィア共和国、14)サハ共和国、15)北オセチア共和国、、16)タタールスタン共和国、17)トゥヴァ共和国、 18)ウドムルト共和国、19)ハカス共和国、20)チェチェン共和国、21)チュヴァシ共和国、 22)クリミア共和国(ウクライナと帰属係争中)、23)ドネツク人民共和国 (ウクライナと帰属係争中)、24)ルガンスク人民共和国 (ウクライナと帰属係争中)
[Source: Wikipedia]
【*訳注2】レナルト・メリ会議 [ Lennart Meri Conference]:
レナルト・メリ会議はエストニアで毎年開催される会議で、北欧と東欧の視点から外交・安全保障政策について議論される。毎年5月に開催される。会場はタリンのラディソンホテル。[Source:Wikipedia]
【*訳注3】「ゼレンスキー平和の公式」:
「ゼレンスキー平和の公式」は10項目から構成されている:
1)原子力安全、特にザポリツィア原子力発電所の安全性
2)アジア・アフリカ諸国の食糧安全保障
3) エネルギーの安全保障と復興
4) 捕虜全員の釈放とロシアに追放されたウクライナの子どもたちの帰還
5)国際連合憲章第2条に基づき、ロシアはウクライナの国境を2014年のクリミア併合以前に戻す
6)ロシア軍のウクライナからの完全撤退と敵対行為の停止
7)ロシアのウクライナ侵攻における戦争犯罪の訴追(ロシアの戦争犯罪に関する特別法廷の設置を含む)
8)ウクライナのエネルギーインフラによるものを含む生態系被害の評価、責任者の訴追、復旧・復興。
9)将来のロシアの侵略に対する保証
10)法的拘束力のある国際条約を伴う多国間和平会議
[Source: https://en.wikipedia.org/wiki/Ukraine%27s_Peace_Formula]
【*訳注4】スイス・ビュルゲンシュトックのウクライナ平和サミット:
ロシア・ウクライナ戦争に関連した国際平和サミット(正式名称は「ウクライナ平和サミット」)が、2024年6月15日から16日にかけてスイスのビュルゲンシュトック・リゾートで開催された。この会議は、それ以前に開催された4つの国際会議に続くもので、スイスのヴィオラ・アムヘルド大統領が主催した。ロシアは招待されず、ロシア抜きの「ウクライナ平和サミット」となった。
【*訳注5】こうして、ウクライナへのNATO派遣の可能性は「戦略的に確実」:
ここで「戦略的に確実」となったとは、『ウクライナに軍派遣しないことが戦略的に確実になったということを示唆している。
【*訳注6】カール・フィーリプ・フォン・クラウゼヴィッツ (Carl Philipp Gottlieb von Clausewitz):
(1780年7月~1831年11月)プロイセン王国の陸軍軍人、軍事学者。最終階級は陸軍少将。彼の死後1832年に発表された戦争論で、戦略、戦闘、戦術の研究領域において重要な業績を示した。 (Source: Wikipedia)
【*訳注7】ビュルゲンシュトック平和サミットの最終コミュニケ
ウクライナの平和サミットの共同コミュニケ(和訳)へのリンク:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100685987.pdf
【*訳注8】ミュンヘン憲章[Münchner Charta] :
1971年11月24日にミュンヘンで署名され、欧州ジャーナリスト連盟によって採択された「ミュンヘン倫理憲章」(または「ジャーナリストの義務と権利の宣言」)は、ジャーナリズムの倫理に関する欧州の基準であり、10の義務と5つの権利を区別している。この文章は、1918年に書かれ、1938年に改訂されたフランス人ジャーナリストの職業活動憲章の原則を引き継ぎ、権利が尊重されるよう定めている。職業上の秘密の原則(第7条、以下同じ)が盛り込まれ、ジャーナリストの情報源の保護という不可欠と考えられる義務が追加されている。
《憲章の10の義務》
《憲章の5つの権利》
[ Source: https://office-human-rights.de/muenchener-charta/ ]
* * * * * * *
《参考資料/記事(原文から)》
1 Dinara Khalilova, «German foreign minister acknowledges some of Berlin’s weapons are outdated, inoperational», The Kyiv Independent, 26 septembre 2023 (kyivindependent.com/german-foreign-minister-acknowledges-issues-with-weapons-delivered-to-ukraine/)
² Martin Fornusek, «Ukraine refused 10 Leopard 1 tanks from Germany due to poor condition», The Kyiv Independent, 19 septembre 2023 (kyivindependent.com/media-ukraine-refused-10-leopard-1-tanks-from-germany-due-to-poor-condition/)
³ www.forbes.com/sites/davidaxe/2023/06/14/the-ukrainian-marine-corps-amx-10rc-recon-vehicles-didnt-last-long-in-a-frontal-assault-on-russian-defenses/?sh=41f2c254103f
4 Thomas Gibbons-Neff & Natalia Yermak, «Potent Weapons Reach Ukraine Faster Than the Know-How to Use Them», The New York Times, 6 juin 2022 (www.nytimes.com/2022/06/06/world/europe/ukraine-advanced-weapons-training.html)
5 https://newsukraine.rbc.ua/news/french-mirage-2000-aircraft-are-not-option-1695299450.html
⁶ www.eeas.europa.eu/eeas/united-kingdom-speech-high-representativevice-president-josep-borrell-oxford-university-about-world_en
7 www.president.pl/news/statement-by-president-at-peace-summit-for-ukraine-in-switzerland,87631
8 www.csce.gov/briefings/decolonizing-russia-a-moral-and-strategic-imperative/
⁹ x.com/EmekaGift100/status/1793175733080080883
10 «Mégalomane, sous cortisone, parano: la santé mentale de Vladimir Poutine analysée par un psychiatre», rts.ch, 19 mars 2022 (www.rts.ch/info/monde/12951473-megalomane-sous-cortisone-parano-la-sante-mentale-de-vladimir-poutine-analysee-par-un-psychiatre.html)
11 www.nytimes.com/interactive/2024/06/15/world/europe/ukraine-russia-ceasefire-deal.html
12 «Ukraine attacks Russian-held Kherson, plans counterattack», aljazeerah, 12 July 2022 (www.aljazeera.com/news/2022/7/12/ukraine-strikes-russian-held-kherson-as-kyiv-plans-counterattack)
13 www.president.gov.ua/documents/6792022-44249
14 www.washingtonpost.com/national-security/2022/11/05/ukraine-russia-peace-negotiations/
15 www.washingtonpost.com/national-security/2023/04/10/leaked-documents-ukraine-counteroffensive/
16 www.pravda.com.ua/eng/news/2024/03/27/7448337/
17 www.bbc.com/news/world-europe-68417223
18 unn.ua/en/news/stoltenberg-we-have-no-plans-to-deploy-Nato-troops-in-ukraine
19 www.politico.com/news/2024/05/02/biden-messaging-strategy-ukraine-funding-00155638
20 www.wsj.com/politics/national-security/u-s-takes-aim-at-chinese-banks-aiding-russia-war-effort-fcf76dcc
21 www.bfmtv.com/economie/economie-social/bruno-le-maire-nous-allons-provoquer-l-effondrement-de-l-economie-russe_AN-202203010131.html
22 Jeffrey Goldberg, «Obama Sees Ukraine as Putin’s Client State», The Atlantic, 10 mars 2016 (www.atlanticcouncil.org/blogs/Natosource/obama-sees-ukraine-as-putin-s-client-state/)
23 www.theamericanconservative.com/the-biden-administration-has-no-definition-of-victory-in-ukraine/
24 Dr Jack Watling & Nick Reynolds, «Meatgrinder: Russian Tactics in the Second Year of Its Invasion of Ukraine», Royal United Services Institute, 19 mai 2023 (https://rusi.org/explore-our-research/publications/special-resources/meatgrinder-russian-tactics-second-year-its-invasion-ukraine)
25 thehill.com/policy/defense/4589095-russian-army-grown-ukraine-war-us-general/
26 Martin Stoll, «08/15 statt 007», Facts, Nr. 25, 2001, 38–41
27 www.rtbf.be/article/direct-guerre-en-ukraine-sommet-pour-la-paix-en-ukraine-soldats-et-civils-n-y-croient-pas-trop-11389687
28 www.tf1info.fr/international/guerre-ukraine-russie-sommet-pour-la-paix-en-suisse-ce-que-contient-la-declaration-finale-pour-mettre-fin-au-conflit-2304246.html
29 www.president.gov.ua/storage/j-files-storage/01/19/53/32af8d644e6cae41791548fc82ae2d8e_1691483767.pdf
30 www.president.gov.ua/documents/6792022-44249
31 «Ukraine’s Selenskyjy condemns Nato over no-fly zone decision», dw.com, 4 mars 2022 (www.dw.com/en/ukraine-Selenskyjy-condemns-Nato-over-no-fly-zone-decision-as-it-happened/a-61007081)
32 www.axios.com/2022/06/15/ukraine-1000-casualties-day-donbas-arakhamia
33 youtu.be/NDS1OSEIoz8
34 www.nytimes.com/2024/06/18/world/europe/ukraine-press-freedom.html
35 press.un.org/en/2022/ga12407.doc.htm
36 www.eda.admin.ch/eda/en/home/das_eda/aktuell/dossiers/konferenz-zum-frieden-ukraine/Summit-on-Peace-in-ukraine-joint-communique-on-a-peace-framework.html
37 https://odysee.com/@TMSLL:6/Ex-Zelensky´s-advisor-Arestovich–Why-100K-of-Ukrainians-are-deserters-:2
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion13803:240718〕
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