心にしみる世界のノンフィクションを読む 本ブログの連載が単行本に
- 2024年 10月 9日
- カルチャー
- 「リベラル21」岩垂弘横田喬
元朝日新聞社会部記者・横田喬さんの著書『社会部記者の本棚―心にしみる世界のノンフィクションを読む』が、同時代社から出版された。昨年4月から今年の7月まで、1年半にわたって本ブログ「リベラル21」と「ちきゅう座」に連載した「世界のノンフィクション秀作を読む」と題する読み物39本から25本を選んで1冊の本にまとめたものだ。
横田さんが「世界のノンフィクション秀作を読む」の連載を思い立ったのは、「まえがき」によれば、次のような理由による。
「このところずっと、気分がすっきりしない。不条理そのものウクライナ戦争は一向に止む気配がない。ガザではイスラエル軍の一方的な蛮行を誰も何ともできない。無力な我が身が情けないが、さりとて誰かに何か手立てはあるのか。そもそも人間とは、一体いかなるシロモノなんだろう? 居室の書架を前に、ついつい私は蔵書の背に目をやった」
「心当たりの三冊を抜き出す。先ずはV・フランクルの『夜と霧』。ナチのあの非道な所業は『人類の原罪』そのものと思えた。ウクライナ戦争やガザの今日は、『夜と霧』の延長線上にある、と私は感じた。過去のおさらいから何かヒントがえられれば、とも願った」
連載で取り上げられているのは、「夜と霧」の他に次のような著作である。
藤原ていの「流れる星は生きている」、ロバート・キャパの「ちょっとピンボケ」、ウィリー・ブラントの「ナイフの夜は終わった」、三上智恵の「戦雲―要塞化する沖縄、島々の記録」、ジョン・クラカワーの「荒野へ」、ヘンリー・D・ソローの「森の生活―ウォールデン」、ユーリン・カーニーの「私のルーファス―犀を育てる」、高橋是清の「高橋是清自伝」、北条常久の「評伝むのたけじ」、市河晴子の「エジプトの驚異―ピラミッドに登る」、デニス・ブライアンの「アインシュタイン」、マリー・キュリーの「自伝」、レベッカ・ステフォフの「ダーウィン―世界を揺るがした進化の革命」、磯田道史の「大田垣蓮月」、トール・ヘイエルダールの「コン・ティキ号探検記」、チャールズ・リンドバーグの「翼よ、あれがバリの灯だ」、アンネ・フランクの「アンネの日記」、浜忠雄の「ハイチ革命の世界史―奴隷たちがきりひらいた近代」、ガイア・ヴィンスの「気候崩壊後の人類大移動」、木原武一の「ぼくたちのマルクス」、エドガー・スノーの「中国の赤い星」、マリ・エレーヌ・カミユの「革命下のハバナ」、J・ブノアメシャンの「エジプト革命」、クワメ・エンクルマの「わが祖国への自伝」。
これらの著作のすべてが自室の書架にあったわけでない。バスで10分少々の公立図書館に通い、そこで、「秀作」に目を通したという。
世界のノンフィクションの秀作をひもといた読後感は、いかなるものであったろうか。過去のおさらいから何かヒントを得られただろうか。横田さんさんは本書の中でこう書いている。
「世界には、男女を問わず、真に偉大な人物や異色の人材が間違いなく実在する。その確かな感触を、私はこの連載を通じて確かめた。人間も未だ捨てたものではない」
平易な文章で一気に読める。ぜひ一読を勧めたい。
『社会部記者の本棚―心にしみる世界のノンフィクションを読む』は333ページ。定価2000円+税。同時代社の電話は03-3261-3149
初出:「リベラル21」2024.10.09より許可を得て転載
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