本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(483)
- 2024年 10月 18日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
通貨発行益と税金(2)
日本の国家財政は、現在、「第二次世界大戦の敗戦時」と同様の危機的な状況に見舞われているが、同時に理解できることは、「過去80年ほどの期間に、どれほどのマネーやクレジットが創り出され、また、どのようにして税金が課されたのか?」に関する詳細な分析が、現在のわれわれに可能な状況である。つまり、「戦後の日本人の経験」が、将来的に、経済学における貴重な財産になる可能性のことだが、実際には、「どのようにして資産や負債が積み上げられ、また、税金で国家に吸収されたのか?」が理解される点である。
別の言葉では、「お金の謎や性質」に関して、人類史上、貴重な資料のようにも思われるが、具体的には、「1945年から1971年までの約26年間」が、「付加価値の増加がもたらした民間部門のバランスシート膨張」だった状況のことである。つまり、この期間は、「実体経済の成長が導いた正常な経済成長」だったものの、その後の「1971年から1997年までの約26年間」については、「民間金融機関のバランスシート膨張がもたらした経済の金融化」という状況だったことも見て取れるのである。
より詳しく申し上げると、「不動産と株式のバブル発生により、民間の金融機関に多額の通貨発行益がもたらされた時期」だったが、「バブルの崩壊後は、バランスシートの非対称性により資産価格だけが下落して、大量の不良債権が発生した状況」だったことも理解できるのである。つまり、「バブル時に増加した民間金融機関の貸し出し、そして、負債」については、結局のところ、「バブルの崩壊により、多額の不良債権へと変化した状況」だったものと想定されるのである。
また、この時に考えなければいけない点は、「戦後の約80年間に、どれほどの税金が、どのように課されたのか?」ということだが、実際には、「1945年から65年までは、所得税などの目に見える現在の税金」だったものが、その後は、「国債の発行」という「目に見える将来の税金」が追加されたことも理解できるのである。
そして、現在は、「量的緩和(QE)によるインフレ税が、国民の気付かない形で課されていた段階」が終了するとともに、間もなく、「国民の気付く形でインフレ税が課される段階」へと移行するものと想定されるのである。つまり、過去の歴史が教えるように、「約6ヶ月間のハイパーインフレ」が発生する可能性が高まっている状況とも思われるが、このキッカケとなるのは、やはり、「金融界の大量破壊兵器」と呼ばれる「デリバティブの完全崩壊」とも言えるようである。(2024.9.2)
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通貨発行益と税金(3)
「通貨制度の寿命は約50年」というケインズの言葉のとおりに、「1971年のニクソンショックから始まった信用本位制と呼ぶべき通貨制度」は、現在、終焉の時を迎えているものと感じている。つまり、「1971年8月15日」は、「一時的な金とドルとの交換停止」が宣言されるとともに、それまでの「金(ゴールド)」を本位とした通貨制度から、「政府や経済成長などへの信用を本位とした通貨制度」へと移行した時だったことも理解できるのである。
別の言葉では、18世紀から始まった「資本主義の時代」の最終段階で、「人類史上、未曽有の規模のマネー大膨張」が発生したわけだが、この時代を生きた我々の使命としては、「時代の証言者の一人」として、「どのようなメカニズムが働いたのか?」を考える必要性があるものと考えている。あるいは、「これから、どのような時代が訪れるのか?」を理解するうえでも、「1971年から現在までの約53年間に、どのようなことが起こったのか?」を冷静に検証することが求められている状況のようにも感じられるのである。
ただし、この点に関して必要不可欠なことは、「既存の経済学の放棄」だと考えているが、実際のところ、「投資の実践」において、「アメリカの大学で学んだ経済理論」は、ほとんど役に立たなかったことが思い出されるのである。そのために、私自身としては、「1980年代に発生した日本のバブル」について、「どのようなことが起こったのか?」を具体的な数字で検証することから始めたが、現時点での感想としては、「1971年から1997年までの26年間」と「1998年から現在までの26年間」が、ほとんど同じパターンを繰り返してきた可能性が挙げられるものと考えている。
より詳しく申し上げると、「民間金融機関のバランスシート大膨張」に関して、「前半の26年間」が、「日本の金融機関を中心とした残高膨張」だったものの、「後半の26年間」については、「先進諸国の金融機関がオフバランスで残高を大膨張させた展開」だった状況のことである。しかも、規模の面では、「後半が前半の約30倍」という状況だったために、現時点では、これから想定される「中央銀行の本格的なバランスシート大膨張」が気にかかる状況とも言えるのである。
つまり、1998年には実施されなかった「紙幣の大増刷」が、今度は、世界的な規模で実施される可能性が想定されるために、今後の注目点は、「どれほどの規模で、インフレの大津波が世界を襲うのか?」ということだと考えている。(2024.9.3)
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通貨発行益と税金(4)
「1971年のニクソンショック」の前後から始まった「世界的なマネーの大膨張」については、現在、世界中の人々が興味と感心を示し始めた状況とも思われるが、残念な点は、「ほとんどの人がマネー膨張のメカニズムを理解していない事実」が指摘できるものと考えている。つまり、「共同体の規模拡大に伴い信用の総量が増え、その結果として、信用を形にした通貨の残高増加につながる」という「私自身の仮説」が、いまだに検証されていない状況でもあるが、この点に関して注目すべき出来事は、「1980年代の中国と1990年代のロシアが、世界の金融市場に参画してきた事実」だと考えている。
より詳しく申し上げると、「共産主義国の中国とソ連(現在のロシア)が、資本主義国家の様相を携えて、世界の金融市場に参画してきた事実」については、「グローバル共同体の成立」を意味するとともに、「2010年前後に付けたデリバティブ残高のピーク」の原因の一つだったものと想定されるのである。
しかし、現在では、ご存じのとおりに、「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻」に象徴されるように、「東西冷戦が復活した状態」であり、また、「脱ドル化の為替政策」が世界的に広まっている状況であることも見て取れるのである。つまり、現在の「世界的な金融システムや通貨制度」については、根本の「信用」が失われながらも、辛うじて、「表面上の華やかさ」が保たれている「根のない切り花」のような状態とも言えるのである。
そのために、今後の注目点としては、「デジタル通貨の供給源だった約600兆ドルのOTCデリバティブ」が瞬間的な崩壊を見せる可能性であり、また、その後に予想される「CBDC(中央銀行デジタル通貨)や紙幣の大増刷」がもたらす「中央銀行の通貨発行益(シニョリッジ)」が指摘できるものと考えている。つまり、この時に発生する変化としては、「国民が支払う四種類の税金」に関して、最後の「国民が気付く状況下でインフレ税が支払われる段階」、すなわち、「ハイパーインフレの世界的な発生」が想定されるからである。
より具体的には、「政府や通貨への信用」が完全に失われ、「影も形も存在しないデジタル通貨」が「金融界の裸の王様だった事実」に気付かされることにより、世界中の人々が、一斉に、「実物資産」へ殺到する展開が想定されるからである。別の言葉では、「5千年から6千年の歴史を持つ貨幣」に関して、「現在のデジタル通貨が、どれほど異常な状態だったのか?」に気付いた人から、「換物運動」が始まるものと想定されるが、今回の問題点は、やはり、「80億人の人々が、こぞって参加する可能性」だと感じている。(2024.9.4)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion13916:241018〕
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