本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(24)
- 2012年 6月 22日
- 評論・紹介・意見
- ギリシャ危機信用崩壊本間宗究金融
歴史的な大転換
2012年の6月から7月は、世界の金融において、歴史的な大転換期になるものと考えている。そして、その理由としては、「英米独の10年国債」が、歴史上からも、稀に見るほどのバブルを形成し、大天井を付けた可能性があるからだ。具体的には、「米国の10年国債金利が1.4%台にまで上昇し、すでに、下落を始めた」というように、「財政破たんの危機に瀕しながらも、国債価格が史上最高値を更新し続けていた」という異常な状況が、完全に行き詰った可能性が存在するのである。
別の言葉では、「デリバティブ(金融派生商品)」を利用して、「政府」や「メガバンク」が無謀な国債の買い付けを行ってきたことが、限界点に達した可能性のことである。より詳しく申し上げると、「2007年の半ば」から「サブプライム問題」が発覚し、その翌年に「リーマンショック」が起きたのだが、この5年間の「資金の総額とその流れ」を見ると、供給された資金は、ほとんどが、先進国の国債へと流れていたことが理解できるのである。つまり、「今までの金融混乱」というのは、表面上の現象にすぎず、実際には、「国債市場の大膨張により、根本的な問題を先送りしただけだった」ということである。
そして、今回、「5年に一度の丙午、丁未の月」が到来したのだが、今回も、「5年前の2007年6月から7月」と同様に、世界の金融界は、極めて危機的な状況に陥っているのである。しかも、今回は、打つ手が、すべてなくなり、後は、最後の手段である「紙幣の増刷」に頼ることしか方法が残されていないようだが、この時の注目点は、「混乱のスピードが、一挙に加速する」ということである。つまり、数か月前の「ギリシャ問題」の時には、「ECB」や「IMF」などが救済したのだが、今回は、誰が「最後の貸し手」となり、「大量の資金供給を行うのか?」という問題点のことである。
そして、結論としては、「日米英の先進国を救うほどの、より信用できる主体は存在しない」ということが理解され、結局は、「それぞれの国家が、独自に、大量の紙幣を増刷する」という状況が考えらえるようである。別の言葉では、「歴史上初めて、全ての先進国が財政破たんに見舞われる」というような事態が、間もなく、訪れようとしているのだが、今回は、「誤魔化し」や「先送り」ができるような状況ではなく、そのために、「グローバル・ハイパーインフレ」というような事態も覚悟しておく必要性があるようだ。また、この5年間で驚いたことは、これほどまでの事態に陥らなければ、「お金の本質」が理解されず、また、人々が「お金の呪縛」から解き放たれなかったということであるが、今回は、ようやく、「日本人の覚醒」が起きることが考えられるようである。(6月7日)
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信用崩壊のメカニズム
現在の「世界的な金融混乱」の本質は「信用崩壊」という、人々の「政府」や「通貨」に対する信頼感の完全崩壊である。そして、これほどまでの大混乱に陥るまでには、長い歴史が存在し、「どのような混乱も、一朝一夕に起きるものではない」ということを痛感しているのだが、この時の注目点は、1997年の8月に起きた「信用収縮」だと考えている。つまり、「タイから始まった信用収縮により、民間銀行や証券会社などが、世界的に、次々と、連鎖倒産をした」というのが、今から15年前に起きたことだったのだが、今回は、最後の信用主体とも言える「国家」や「中央銀行」が、連鎖破たんの危機に瀕しているのである。
つまり、「信用収縮」から「信用崩壊」まで到達するのに、約15年という期間が必要だったのだが、「この間に、どのような事が起きたのか?」を振り返ると「実に、感慨深いものがある」とも言えるのである。具体的には、「デリバティブの大膨張」ということだが、「総額で約6京円」という規模の天文学的な金融商品が、ほとんどの人が知らないうちに、新たに創られ、そして、この資金を利用することにより、「国債」が買い支えられ、また、「世界的な低金利の状況」も生み出されたということである。
しかし、現在では、このバブルが崩壊寸前の状況となっており、すでに、このことが、「ヨーロッパの金融混乱」を生み出し、実際に、「ギリシャ」は「秩序ある債務不履行」にまで追い込まれたのである。また、今後は、日本やアメリカにまで、この混乱が広がっていくものと思われるが、この時に、「どのようなメカニズムで信用崩壊が発生するのか?」という点が、これからの日本にとって、重要なポイントだと考えている。具体的には、「政府と国民との対立構造」ということだが、基本的には、「資金繰りに窮した政府が、国民を犠牲にして生き残ろうとする態度」ということである。
別の言葉では、「増税や福祉の切り捨てなどにより、国家財政を立て直そうとする政策」のことだが、「ギリシャ」の場合には、「何もできないうちに、破たんへ追い込まれた」という状況だったようである。つまり、「国民が政府を信用せず、結果として、国債価格が暴落した」という構図により「国家の資金繰りが行き詰った」ということだが、結局のところは、現在の日本のように、「政治家が身を切らず、国民に問題を押し付けようとした」という状況が、「国民の信頼感を、完全に喪失させた」という状況だったようである。そして、この点については、「日米欧の先進国」の方が、より深刻な状況となっており、このことが、「信用崩壊の波」が、間もなく、世界を襲うと考える理由である。(6月8日)
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連鎖破裂を始めた国家の借金爆弾
「ギリシャの再選挙」については、ご存じのとおりに、緊縮派の勝利に終わり、ほとんどの人は、「当面は、ギリシャがユーロから離脱することはない」と考えているようだ。そして、「ユーロ」が「ドル」に対して強くなったり、あるいは、「株価の上昇」も起きたりしているのだが、多くの人は、「このことが一時的な動き」だと考えているようである。つまり、依然として、表面的な動きに囚われて、本質を見誤っている可能性が高いのだが、今回、最も重要な点は、「株式」や「為替」ではなく、「日米英独の国債価格が、今後、どのような動きを見せるのか?」ということだと考えている。
具体的には、「6月の初め」に、「英米独の国債価格が、大天井を付けた可能性」のことであり、このことが意味することは、「間もなく、先進国の国債バブルが弾け、国債価格が暴落を始める」ということである。そして、その時には、「史上最大のバブル」である「デリバティブ」も、同時に破裂することが想定されるのだが、このことは、「国家の借金爆弾が連鎖破裂を始め、先進国にまで問題が波及した」ということを意味している。
つまり、「ギリシャ」から始まった「借金爆弾の破裂」が、現在では、「スペイン」に飛び火しており、次には、「イタリア」や「フランス」へと、「国家の体力」が弱い順番に、「国家の借金爆弾が破裂する」という状況が想定できるのである。しかも、この時に起きることは、「初めは処女のごとく、後には脱兎のごとし」という言葉のとおりに、「最後の段階で、急速にスピードを速める」ということであり、このことが、現在、海外の投資家が危惧し始めたことである。
そして、かりに、連鎖破裂が「イギリス」や「アメリカ」などへと及んできた時には、「日本」だけが安全なはずもなく、実際には、「日本のギリシャ化」という言葉のとおりに、「最も安全だ」と考えられていた「日本」で、「預金の取り付け騒ぎ」や「暴動」などが起きる可能性も存在するのである。あるいは、「20年ほど前のソ連」のように、「あっという間に、紙幣が価値を失い、紙切れ状態になる」ということも、過去の歴史では頻繁に起きたことであり、「日本も、決して、例外ではない」とも言えるのである。
しかし、残念ながら、現在の日本人は、まったく、この可能性を考慮せず、「そんなことが起きるはずがない」という態度を貫いているのだが、今までの推移から考えると、「残された時間は、あと一年」とも考えられるようであり、まだ準備が可能だと思われるのだが、結局は、「大事件を見ない限り、本質が呑み込めない状況」とも言えるようだ。(6月18日)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0916:120622〕
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