本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(42)
- 2013年 3月 15日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究金金融
金に対する全面攻撃
今年の2月は、「金(ゴールド)」に対する総攻撃が起きたようだが、具体的には、「マスコミ」による「ネガティブ・キャンペーン」が行われ、同時に、「大量の売り叩きが起きた」ということである。つまり、2月15日に、アメリカのメディアが「金価格は大天井を付け、今後は暴落する」というような意見を述べ、同時に、「デリバティブ」などを利用することにより、「金の先物価格」を強引に押し下げた可能性が存在するのである。
しかも、この時に、「ジョージ・ソロス氏などが、金を売却した」というニュースも流れ、結果として、「金の価格が、一挙に、急落する」という事態に見舞われたのである。そして、このことは、典型的な「国債と金とを巡る金融大戦争」によるものだと考えているが、今回は、「中国の旧正月の期間」に行われたために、予想以上の効果があったようだ。
しかし、一方では、海外で、多くの専門家が、一斉に、反論を始めている状況でもあるのだが、具体的には、「金価格は、今回の下げをきっかけにして、今後、バブル的な動きに変化する」というものである。つまり、今回の「金に対する売り叩き」は、反対に、「世界的な金融大戦争」の実態を、世界中に知らしめるとともに、「国債を守る陣営」にとっては、「最後の決戦」になった可能性も存在するのである。
つまり、「先進国の国債価格」が、間もなく、本格的な急落局面に見舞われようとしている段階で、このような「無謀な売り仕掛け」が行われた可能性があるために、「今回の総攻撃は、日米欧の国家としての体力を、一挙に、消耗させたのではないか?」ということである。別の言葉では、世界の「マネーの歯車」が、すでに回転を始めており、今後は、より一層、世界の資金が、「国債」や「預金」などの「フィアットマネー(政府が発行する不換紙幣)」から、「貴金属」や「株式」、あるいは、「土地」などの「実物資産」へと、大きく移行することが想定されるのである。
このように、現在では、「約5年」にわたる「リフレーション政策(通貨の膨張政策)」が終了し、すでに、「ギャロッピング・インフレ」の段階に差し掛かっているものと考えているが、この点については、どうしても、理解がされにくいようである。そして、ケインズが主張するように、「誰も気づかないうちに、通貨の価値が激減する」という状況が考えられるのだが、現在の「円安」が意味することは、「日本の資産」が目減りを始めており、「株価の上昇は、その目減りを補っている」ということである。しかし、ほとんどの人は、「混乱の本質」に気付かず、「単に、株価の上昇を喜んでいるだけ」とも言えるようである。
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金の健全性
昨年の12月に、英国のエリザベス女王が、わざわざ「金の保管庫」を訪れて、国民に、「英国が保管する金の健全性」を証明したようだ。また、今年の2月には、アメリカで「FRBが保管する金」に対して「監査」が行われ、やはり、「米国が保管する金の健全性」が強調されたようである。しかし、海外では、これらのことに対して、一斉に、反論が出始めるとともに、「本当に、英米が保管している金は、大丈夫なのか?」という懸念が噴出し始めているのである。
つまり、「なぜ、エリザベス女王が、金の保管庫を訪れる必要性があったのか?」ということであり、また、「FRBが行った金の監査」については、実質上、「監査」と呼べるような代物ではなく、実際には、「内部担当者による報告にすぎない」というものである。しかも、最近のアメリカでは、「バーナンキFRB議長」が「金(ゴールド)は通貨ではない」とも言い切っており、この観点からは、「保管している金の健全性」を証明することは、「国家の信用力」や「金融混乱の終息」には、ほとんど意味を持たないことも考えられるのである。
しかし、現在では、「ドイツが、自国が保有する金を、アメリカやフランスから、自国へ移動させる」という発表を行っているように、「先進国の内部でも、金の健全性に対する疑問が出ている」という状況になっているのである。そのために、今回、「英米において、パフォーマンス的な行動が取られた」という状況でもあったようだが、「実際には、まったくの逆効果だった」とも言えるようである。
つまり、「アメリカやイギリスが保管する金(ゴールド)」に関しては、「より一層の疑問」が出るとともに、現在の通貨制度である「信用本位制」に対して、大きな疑問が出てきた可能性があるとも言えるからだ。具体的には、「1971年のニクソンショック」以降、世界的に金本位制が崩壊しているために、現時点で、金の健全性を強調することは、反対に、「金が、本当の安全資産である」ということを、世界中に知らしめた可能性が存在するのである。
そのために、今後の「金価格」については、大きな注目をする必要性があるものと考えているが、結論としては、やはり、「2月に起きた金価格の急落」が、最後の調整局面となり、今後は、本格的なバブル相場が発生することが考えられるようだ。つまり、「国債価格の暴落」から、本格的なインフレが進行するということである。
(2013/03/15)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html を許可を得て転載。
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