原発輸出・再稼働ではなく、福島事故の真相解明、汚染水対策・廃炉計画、放射能調査・除染、被曝者・被災者の救援・補償を!
- 2013年 6月 2日
- 時代をみる
- 加藤哲郎原子力原発
◆2013.6.1 日本原子力研究開発機構(JAEA)という独立行政法人があります。「高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の開発や放射性廃棄物の処分など、原子力の研究や技術開発を行う文部科学省所管の独立行政法人。2005年、当時の日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が統合して発足した」とされていますが、もとをただせば、前身の日本原子力研究所は、1956年に日本の原子力発電が出発するにあたって、茨城県東海村に設置された特殊法人で、日本で初めての原子炉を建設し、電力9社が出資して東海村と福井県敦賀市に原発を持つ日本原子力発電株式会社(原電)と密接な関係があります。前東電会長として福島第一原発事故に大きな責任を持つ勝俣恒久氏が天下った(上った?)のが日本原電です。日本原子力研究開発機構の最大の仕事が、核燃サイクルをめざした高速増殖炉もんじゅで、莫大な税金を飲み込みながら、1995年に冷却材であるナトリウム漏洩による火災事故を起こしたうえそれを隠蔽し、2010年8月の炉内中継装置落下事故で運転再開後すぐに中断、その後の点検管理を怠って1万点もの点検漏れが発覚、けっきょく1兆円以上投資して今まで4ヶ月しか動かず、1日あたり5500万円が費やされたという、壮大な無理無駄施設です。いやおそらく、核兵器製造に必要なプルトニウムを日本が確保するために残されている潜在的軍事施設です。原子力規制委員会も、5月29日に運転再開禁止を決めました。
◆その同じ日本原子力研究開発機構の東海村の実験施設で、30人以上が被曝する誤作動・放射能漏れ事故がおきました。しかも、実験装置の異常を検知して安全装置が働き、警報音が鳴ったにもかかわらず、担当者が警報をリセットして実験を続けていた、放射線量を下げようとフィルターもつけない換気扇で室外に排気していた、地元自治体への報告は1日半後だった、というのですから、何をかいわんやです。無責任・無謀な法人です。3・11のSPEEDI活用で似たような無様を露呈した文部科学省も、さすがに「改革」に乗り出しました。もっとも責任をとってやめた前理事長は懲戒ではなく退職金付き、新理事長も前理事長と同じ元原子力安全委員会委員長です。これが、いまなお福島第一原発で事故の原因がわからず、膨大な労働者を日日被曝の危険にさらしても収拾・廃炉のメドもたたず、たまった汚染水の行く先も汚染廃棄物の処理も決まらず、それでも再稼働・核燃サイクルを進めようとしているこの国の、原子力研究の最先端です。60年前から「国策」として出発し推進してきたのですから、まずは放射能汚染の調査と除染、避難民の救済・補償を先行させるべき政府は、首相がせっせと海外に出かけて原発ビジネス、「安全な」原子力の売り込みです。アベノミクスの成長戦略に「原発の活用」を明記、核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドとも原子力協定というのですから、懲りない「原子力村」と「安全神話」の復権です。
◆21世紀の「核なき世界」への流れに逆らう焦点が、中東を含むアジアでの核拡散にあること、日本は核兵器でも原発でも欧米からアジアへの核拡散の中継点であることは、3月に上梓した加藤哲郎・井川充雄編『原子力と冷戦ーー日本とアジアの原発導入』(花伝社)の「あとがき」で詳しく触れました。5月25日明治大学での第275回現代史研究会「原発問題を考える―『原子力平和利用』と科学者の責任」での私の講演、「SF(サイエンス・フィクション)としての『原子力平和利用』」は、『つくられた放射線「安全」論』(河出書房新社)の宗教学者島薗進さん「原発の倫理性について」とのジョイントで、「ちきゅう座」サイトに当日配付資料が入ったほか、二人の対論を含め you tube にアップされ、映像で見ることができます。これまでの「日本マルクス主義はなぜ『原子力』にあこがれたのか」「反原爆と反原発の間」とは趣向を変えた話ですので、ぜひご笑覧ください。また本サイト学術論文データベ ースに、神戸の弁護士深草徹さんから、「憲法9条から見た原発問題」という力作をご寄稿いただきました。明日6月2日東京では、「6・2 NO NUKES DAY」です。「さようなら原発 1000万人アクション」「原発をなくす全国連絡会」、それに金曜官邸前抗議デモを持続してきた「首都圏反原発連合」の3系列の運動が、初めて合流します。その力を東京都知事選・参院選に結集したいものです。「96条の会」など立憲主義を守る運動と日本維新の会橋下代表の「慰安婦」問題をめぐる自爆で、安倍首相の改憲トーンはやや和らぎましたが、世界が注目する「日本の右傾化」は、まだまだ油断できません。
◆「尋ね人」<新たに見つかった旧ソ連粛清犠牲者「ニシデ・キンサク」「オンドー・モサブロー」「トミカワ・ケイゾー」「前島武夫」「ダテ・ユーサク」について、情報をお寄せ下さい!>は、本サイト情報収集センター(国際歴史探偵)の「旧ソ連日本人粛清犠牲者・候補者」で引き続き情報提供を求めます。何か手がかりがありましたら、 katote@ff.iij4u.or.jp まで情報をお寄せください。旧ソ連の秘密都市・閉鎖都市における原子力開発・実験、メドヴェージェフ兄弟のいう「原子力収容所」の実態については、ドイツ人捕虜240万人ばかりでなく、日本人捕虜60万人のシベリア抑留との関係をも視野において、引き続き研究を進めていきます。この間、私が米国国立公文書館(NARA)で集めてきた日本戦犯資料を使って、心あるジャーナリストの皆さんが、意味ある現代史の再発掘・再検討を進めています。ゾルゲ事件での伊藤律「革命を売る男」説の誤りをただす松本清張の『日本の黒い霧』の改訂については、その後も多くの報道がありますが、『東京新聞』5月28日に決定版ともいうべき解説記事が大きく出ています。また沖縄での米軍対敵諜報部隊CICについては、東京版にはのらなかったのですが、『朝日新聞』西部版5月5日の「人権無視、いつの世まで」という記事で使っていただいたようです。原爆・原発を追うことで、現代史の周辺の隠された一面が見えてきます。こちらの研究も、あわせて進めていきます。
「加藤哲郎のネチズンカレッジ」から許可を得て転載 http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtml
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.ne/
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