3.11をもう一度想起し、原発再稼働・輸出にブレーキをかける立法府を!
- 2013年 7月 16日
- 時代をみる
- 加藤哲郎原発選挙
◆2013.7.15 参議院議員選挙の投票日は次の日曜日です。メディアの予想は、自民党・公明党の圧勝です。憲法96条先行改憲は政策論争の中心からはずれましたが、集団的自衛権の問題が新たに浮上しました。インターネット選挙が解禁になり、毎日新聞のツイッター分析では原発がダントツの第一争点なのですが、テレビの党首討論等では周辺イシューです。党首名つぶやき数では、自民の安倍晋三、維新の会橋下徹が他を引き離し、民主党海江田万里は共産党志位和夫以下とか。戦後占領期の1949年1月第24回総選挙を思い出しました。日本国憲法のもとで戦後初の社会党片山内閣、社会党も入閣した民主党芦田内閣が昭電疑獄で倒れ、GHQも介入した選挙結果は、吉田茂の民主自由党が264議席獲得の圧勝で復活、与党絶対多数の第3次吉田内閣が成立しました。政権にあった社会党は、48議席に凋落し惨敗、野党の中では共産党が35議席と躍進し、下山・三鷹・松川事件のなかで「9月革命」が語られるような伸びを示しました。ちょうどこの時期の米国陸軍省ゾルゲ事件発表とGHQによる情報工作を、「GHQ・G2ウィロビー=CISポール・ラッシュの諜報工作―ゾルゲ事件 川合貞吉の場合」と題して、インテリジェンス研究所「第3回諜報研究会」で報告したばかりなので、政権交代に期待を抱いてその政権の現実の政権運営に幻滅したさいの、揺り戻し保守回帰・反動攻勢が気になります。
◆選挙運動中に安倍内閣支持率・自民党支持率が減少傾向という報道もありますが、どうも大手マスコミの報道は、アベノミクスの景気回復に争点を誘導し、「ねじれ国会」を解消するというストーリーに流し込もうとしているように見えます。その間に、原子力規制委員会の原発新基準が発効し、電力会社は次々と再稼働申請を開始しました。自公安定政権成立を見越して、自民党の再稼働方針が選挙の洗礼を受けたと言いくるめる魂胆が見え見えです。福島では新たな汚染水問題が発覚し、廃炉の見通しさえ全然ついていないというのに。地震・津波・原発事故の被害者は、ネット回線環境が貧弱な仮設住宅で、選挙運動・候補者情報収集どころではないのです。こういう報道は『東京新聞』や地方新聞でしか得られない、悲しい現実があります。トップのyou tubeからの震災・原発映像欄にいくつかリンク切れが出たので、新沼謙治「ふるさとは今もかわらず」を追加しました。別に演歌や歌謡曲が好きなわけではありません。この歌、岩手県大船渡市の被災者の心を、市立大船渡第一中学校の生徒たちと一緒に歌っているからです。そうです。もう半世紀以上前に、自分が大船渡第一中学校のたぶん第一期か第二期の卒業生だったことを、3・11から2年以上たって今、かみしめているのです。一昨年・昨年と陸前高田・大船渡から釜石の被災地に抜けるコースをレンタカーで幾度か見てきたのですが、今年はまだ大船渡の復興の現在をテレビでしか見ていない、自分自身の自戒のために。参院選のあとは3年間国政選挙がない可能性があります。せめて3・11を忘れない決意が示される選挙結果にしたいものです。
◆先日ある会合で、自動車業界の方と話す機会があり、本サイト現代史研究に入れ忘れていたエッセイを思い出して、収録することにしました。「世界のトヨタ」が、戦後占領期にどんな会社であったかを、(今月からインテリジェンス研究所に移行した)プランゲ文庫の「占領期新聞・雑誌情報データベース」をもとに、1947−49年の社内報『トヨタ文化』を使って、牧歌的な労使関係を再現した記録です。「『世界のトヨタ』揺籃期の企業文化」と題して、岩波書店の『占領期雑誌資料体系 文学編』第3巻にはさみこまれた「月報」2010年3月号に寄せたものです。まだ今のような企業城下町になっておらず、愛知県挙母町といっていた時代の、全従業員6000人中4000人から回答を得た社内世論調査があり、その結果がすこぶる面白いのです。その雰囲気が、1950年朝鮮戦争直前に1600人を解雇する大争議が起こって大きく変わり、そこでの第二組合育成のなかからいわゆる「トヨタ式労使関係=トヨティズム」が形成されます。その初期の職場の変貌を見事に描いたのが、当時トヨタ自動車で事務労働者として働き、晩年は右派の論客としてしられた上坂冬子さんの、第一回「思想の科学」新人賞受賞のルポルタージュ『職場の群像』 (中公文庫)です。実は、電力労働者の世界でも、似た展開がありました。電力会社と一体で原発推進・再稼働に取り組み、ナショナルセンター連合にまで働きかけて原発と「安全神話」を広めてきた労働組合(電力労連)は、労働者の生活の必要に即した「電産型賃金体系」を作った戦後の戦闘的産業別労働組合(電産)が、経営側の攻撃で企業内第二組合にとってかわられ、高度成長期の労使協調による春闘賃上げで実績をあげ定着していったものです。 非正規雇用が2000万人を越えた今日、労働組合の存在感があった「戦後民主主義」の初心を振り返ってみるのも、無駄ではないでしょう。学術論文データベ ースに深草徹「憲法9条から見た原発問題」(2013.6)に続いて、いまやちきゅう座でも活躍する常連宮内広利さんの新稿「戦争の視線と非戦の思想」(2013.7)をアップしました。この一ヶ月よびかけてきた「旧ソ連戦争捕虜抑留とソ連原水爆開発・ウラン採掘の関係」についての情報は、いくつか集まりましたが、まだまだ不十分、情報収集センター(国際歴史探偵)「尋ね人」<新たに見つかった旧ソ連粛清犠牲者「ニシデ・キンサク」「オンドー・モサブロー」「トミカワ・ケイゾー」「前島武夫」「ダテ・ユーサク」について、情報をお寄せ下さい!>とともに、引き続き情報提供を求めます。何か手がかりがありましたら、 katote@ff.iij4u.or.jp まで情報をお寄せください。
「加藤哲郎のネチズンカレッジ」から許可を得て転載 http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtml
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