「川内原発の再稼働を許さない」 -脱原発団体が連続的な集会・デモへ-
- 2014年 9月 19日
- 時代をみる
- 原発岩垂 弘
「川内(せんだい)原発の再稼働を許さない」。原子力規制委員会が9月10日、九州電力の川内原発(鹿児島県薩摩川内市)1、2号機について、原発の新しい規制基準を満たしているとの審査結果を正式に決めことから、安倍政権は同原発の再稼働を急ぐ方針で、地元の同意が得られれば年明けにも再稼働となるのではと予想されている。これに対し、「これまで1年余にわたり全国のすべての原発が稼働していないのは脱原発運動の成果」と自負する脱原発運動団体は危機感を募らせており、9月23日(火・祝日)から東京と鹿児島で連続的に「川内原発再稼働反対」の集会・デモを展開する。
東京電力福島第1原発の事故から3年半になるが、全国で48基ある原発は、いずれも稼働していない。原子力規制委は電力会社から運転再開に向けて審査の申請があった18基の原発について、東京電力福島第1原発の事故を教訓につくられた、新しい原発事故対策の基準(新規制基準)に合格するかどうか審査している。安倍政権は新規制基準に合格した原発は順次、稼働させる方針で、今回、審査結果が出された川内原発は新規制規準に適合した初の原発ということになる。
脱原発運動団体の間では、今回の原子力規制委の審査結果への反発が強い。
たんほぽ舎の9月11日付「地震と原発事故情報」によれば、鳥原良子・川内原発建設反対連絡協議会会長が10日に原子力規制委の審査結果に対し田中俊一会委員長に申し入れをおこなっている。その中で、島原会長はこう述べている。
「貴規制委員会の審査書公表について抗議いたします。 パブリックコメントが、1万7000件も寄せられたにもかかわらず、その公表と対応を全くしないうちに審査書発表という、国民を無視した態度に驚いております。
九州電力の基準地震動については、専門家が過小評価であり基準地震動策定を見直す必要性を指摘されていました。基準地震動を620ガルのまま、審査を進めたのであるなら、今後発生すると思われる過酷事故について想定外という文言で言い逃れすることは絶対にできません。また、川内原発が火砕流により壊滅的な被害を受ける懸念があることを火山研究者が指摘していました。しかし、九州電力が『破局的噴火は、事前に火砕流の兆候を把握し核燃料を安全な場所へ移動でき対処可能』と主張していることについて、どのような検証をもって、事前の予知と核燃料の排出方法、搬送先についても具体的事象を示さないまま了承されたのでしょうか。
規制委員会の役割は、住民の健康と財産を守るためでありますから、審査において明確な判断を出すことができなかった場合、専門家の想定する最大値に合わせて検討し、審査不合格を出すこともできるはずです。
田中委員長自身も『新規制基準合格は原発の安全性を証明するものではない』と何回も表明され、規制基準合格と避難計画は車の両輪と評していたにもかかわらず避難計画を審査対象から外されたことは、矛盾しております。住民の暮らしに対する安全性の軽視です。
よって、審査書発表により、規制委員会への住民の不信はますます募っております。審査書が原発の安全性を担保するものでないという規制委員長の言葉は、重要視しなければなりません。安全性を担保しない不完全なる審査ときちんとパブリックコメントも加味しないような現時点での審査書発表に、断固抗議いたします。福島原発事故原因も究明されず、汚染水垂れ流し、不十分な被災者救済状況下、さらに鹿児島県の弱者切り捨ての避難計画策定について何ら関与しないこの審査書でもって、川内原発再稼働容認が容易に行われることは、絶対あってはならないことです。
総括原価方式の電力料金による九州電力の赤字埋め合わせのため、川内原発再稼働を進めることが、実は真の国益を失う大きな危険性をはらんでいることに国民は気づいています。一時的な偏った経済のために多くの命を危険にさらし、国民の税金を無駄使いするわけにはいきません。
規制委員会として、次世代を見据えてまっとうな役割を果たされることを強く望みます。川内原発の適合性審査の徹底したやり直しを行ったうえで、審査書の再提出を望みます」
ここには、脱原発運動団体の懸念が的確に表現されているとみていいだろう。
脱原発運動関係者はまた、国民世論の動向も運動の追い風になると見ている。国民の多数は今なお「原発再稼働」を望んでいないからだ。朝日新聞社が9月6、7両日におこなった世論調査によると、原発の運転再開については「賛成」25%、「反対」57%となっている。
こうした情勢を迎えて、作家・大江健三郎さん、作家・落合恵子さん、ノンフィクション作家・澤地久枝さん、ルポライター・鎌田慧さん、経済評論家・内橋克人さんらを呼びかけ人とする「さようなら原発一千万署名市民の会」が9月23日午前11時から、東京都江東区の亀戸中央公園で「川内原発再稼働するな! フクシマを忘れない! さようなら原発全国大集会」を開く。
当初、この集会は23日に、さようなら原発一千万署名市民の会、原発をなくす全国連絡会(全労連、民医連、新婦人などがを中心)、それに首都圏反原発連合の3団体が共催で渋谷区の代々木公園で開く予定だった。ところが、蚊によるデング熱騒動で同公園が閉鎖され、3団体で協議した結果、この日の三者共同集会は見合わせることになった。これを受けて、さようなら原発一千万署名市民の会は「原子力規制委の審査結果に早急に抗議の声を上げたい」として、会場を変えての単独開催となった。
9月26日(金)午後6時からは、首都圏反原発連合による「川内原発再稼働やめろ! 永遠に原発0に! 再稼働反対! 首相官邸前抗議」が行われる。
9月28日(日)午前には、川内原発ゲート前で、再稼働阻止全国ネットワークと川内原発再稼働を許さない共同行動(本部はいずれも東京)の共催で抗議集会が予定されている。
この後、鹿児島県内の90団体が加わる「ストップ再稼働!3・11鹿児島県実行委員会」が午後1時から、鹿児島市天文館公園で全国集会を開く。これには、九州全域のほか関西、関東からも参加者があると見込まれている。
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