本土の有権者・政党はオール沖縄の選挙態勢から何を学ぶべきか(1)
- 2014年 12月 14日
- 時代をみる
- 醍醐聡
2014年12月13日
オール沖縄を象徴する光景
沖縄では知事選勝利の流れを引き継ぎ、目下の衆議院選において、1~4区で保革を超えて新基地建設阻止、建白書推進で一致したオール沖縄の共同候補が擁立されている。そのうち1区、4区は大激戦と伝えられているが、これらの選挙区でもオール沖縄の候補が当選すれば、沖縄県民への公約を反故にし、沖縄の民意を裏切って新しい米軍基地建設を容認した自民党は衆議院で議席ゼロという厳しい審判を突きつけられることになる。
その激戦の沖縄1区で、12月10日、オール沖縄の赤嶺政賢候補の演説会が県庁前で開かれた。そこへ、知事として初登庁を終えたばかりの翁長雄志氏も駆けつけ、応援演説をした(以下のサイトに並んだ動画の最上段、左から2つ目)。
http://video.search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&p=%E6%B2%96%E7%B8%84%EF%BC%91%E5%8C%BA%20%20%E7%BF%81%E9%95%B7
ご覧のように、翁長知事のほか、城間幹子・那覇市長、金城徹・那覇市議会議員(新風会)、志位和夫共産党委員長、糸数慶子・参議院議員(沖縄社会大衆党)が弁士として登場した。オール沖縄の姿を象徴する光景である。
ここで、過去3回の衆議院沖縄一区の選挙結果をふり返っておきたい。
2012年
国場幸之助(自民党:今回も立候補) 65,233票
下地幹也郎(国民新党:今回は維新の党から立候補) 46,865票
赤嶺政賢(共産党) 27,856票
2009年
下地幹郎(国民新党) 77,152票
国場幸之助(自民党) 63,017票
外間久子(共産党) 23,715票
2005年
下地幹郎(無所属) 72,384票
白保台一(公明) 67,540票
赤嶺政賢(共産党) 23,123票
これを見ると、2~4区も大なり小なり似通った状況と思われるが、特に1区では、保革を超えた共同がなければ赤嶺候補は当選圏に遠く及ばないことは明らかである。現に、今回の選挙で赤嶺候補は終始、「日本共産党の赤嶺」とは言わず、「オール沖縄の候補者」と自称している。立候補の経緯から言えば当然のことではあるが、ここには「自共対決」ではなく、「沖縄の自治権擁護・平和勢力」対「本土政府追随勢力」という構図が出現していることを確認しておきたい。
政党選択意向と課題別民意のねじれ
ところが、各種報道機関の議席獲得予想によると、全国的には沖縄とは対照的に、自民党単独で300議席を超え、自民・公明両党あわせて3分の2に迫る勢いと伝えられている。「追い込まれ解散」と言われたにしては与党大勝の勢いである。
しかし、同じ時期に行われた各種世論調査によると、今回の衆院選で争点になっている課題ごとの民意は与党大勝の予想とは大きく乖離している。例えば、『毎日新聞』が12月9、10日に行った世論調査では次のような集計結果になっている。
◆消費税率を10%へ引き上げることへの賛否
全体 男性 女性
賛成 41% 50% 37%
反対 52% 47% 55%
◆アベノミクスによって景気がよくなったと思うか
思う 21% 24% 19%
思わない 70% 67% 72%
◆集団的自衛権の行使への賛否
賛成 35% 50% 25%
反対 49% 52% 47%
◆特定秘密保護法への賛否
賛成 30% 37% 26%
反対 49% 52% 47%
また、産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が今月6,7両日に行った合同世論調査によると、アベノミクスについては「成功していると思う」が27.5%だったのに対し、「成功していると思わない」が57.3%で「成功している」の2倍強になっている。
さらに、『中日新聞』が今月9日にまとめた世論調査によると、安倍政権が進める原発の再稼働について、「反対」が57.5%で「賛成」の26.3%の2倍強になっている。
有権者は与党の大勝ではなく、与野党の拮抗を望んでいる
さらに、興味深いのは有権者がどのような選挙結果を期待しているかである。NHKが今月5日から3日間行った世論調査によると、次のような結果が出ている。
◆自民・公明両党が衆議院の過半数の議席を獲得するのが望ましいと思う
か
望ましい 22%
どちらかといえば望ましい 29%
どちらかといえば望ましくない 23%
望ましくない 18%
◆国会の中に自民党に対抗できる勢力を持った野党ができることを期待す
るか
大いに期待する 32%
ある程度期待する 37%
あまり期待しない 18%
まったく期待しない 7%
また、前記の産経新聞社とFNNの合同世論調査でも次のような結果になっている。
◆衆院選の望ましい結果は
与野党の勢力が伯仲する形 47.9%
与党が野党を上回る形 35.4%
こうした世論調査の結果は、有権者の政党選択意向と衆議院の勢力分布に関する期待に大きなギャップがあることを示す点で大いに注目すべき傾向と考えられる。
与党大勝は憲法「改正」、集団的自衛権行使が信任されたことを意味しない
言い換えると、各種の世論調査に現れた与党大勝の予測は決して安倍政権・与党に対する積極的な支持を意味するものではないこと、むしろ、自公政権と拮抗する勢力の形成を期待しながらも、いっこうにその姿が実現しないなかで、消極的理由で自民党を選択する層が相当数存在しそうなことを物語っている。
このことは先に示した課題別の民意の傾向からも窺える。安倍政権・与党が成立させた特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認、あるいは今回の選挙公約に掲げたアベノミクスの継続、1年半後の消費税率の引き上げ等は、それをみても過半の世論の支持を得ているどころか、不支持が相対多数の課題ばかりである。
そのうえ、自公両党は国民の間に異論が根強い集団的自衛権の行使容認や憲法「改正」を「あえて」といってよいほど争点化せず、「アベノミクスの継続か否か」に焦点を当てる選挙戦術を採用している。(これについては、「改憲意欲しのばせる首相」「争点化せず政権体制固め」「国民投票法改正、土台は着々」(『朝日新聞』2014年12月5日、3面)が参考になる。)
しかし、かりに自民党ほかの改憲勢力が3分の2の議席を獲得したら、選挙期間中は背後に「しのばせていた」政策まで信任を得たと称し、数の力で憲法「改正」やTPPの妥結などが強行されかねない。
こうした「争点隠し」と虚構の「信任」宣言を許さないためにも選挙期間中に示された課題ごとの民意をしっかりと記憶にとどめ、有権者は何を白紙委任しなかったかを明確にしておく必要がある。
20 2014年11月13日撮影
20_2 2014年11月13日撮影
初出:醍醐聰のブログから許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2841:141213〕
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