BBCニュース: 衆院選挙と今後の安部政権 (John Swenson-Wright博士の論評)
- 2015年 1月 5日
- 評論・紹介・意見
- グローガー理恵
英国王立国際問題研究所 ”Chatham House”のアジア・プログラムのリーダーである ジョーン・スウェンソン-ライト博士が、衆院選挙について、そして安部政権が今後打ち出していく政策について論評していますので、それを抄訳してご紹介させて戴きます。
原文へのリンクです:
http://www.bbc.com/news/world-asia-30474278
BBCニュースから 日本の選挙: 連立与党の楽勝
(2014年12月15日)
著者: ジョーン・スウェンソン-ライト博士、王立国際問題研究所 “Chatham House”
(抄訳:グローガー理恵)
選挙で政府与党の自民党が安定多数議席を確保
日曜日の衆院選挙で安倍晋三首相の自民党が圧倒的勝利を収めた。新政権は、連立パートナーである仏教徒支持の公明党と共に衆院475議席のうち326議席という安定多数議席を確保した。
安倍氏は、即座に、選挙の勝利は民衆の政府政策の支持を裏づけするものであるとして、勝利を歓呼し歓迎した。
しかし選挙結果は、 ①政権に対するはっきりとした支持投票ではなく、②むしろメインストリーム政治に対する国民の幻滅の強い兆候の現れ、③そして、まず最も顕著な例である民主党をはじめとした日本の野党の効力に関する疑念を呈示している。
最近の世論調査によると、国民感情は微妙に分割されたままの状態であるという。
予測を低める投票率
およそ54%が概ね、政府による財政政策、金融政策、構造改革のトリオ経済政策に集中した、所謂「アベノミクス」を、よいとしている。
しかし、残りの46%は、政府の経済政策に対する懐疑的な態度を保っている。
1947年以来、歴史的先例のない52%という低い投票率をもって選挙は、野党が、自分達を政府に対する効力で信頼できるオルターナティヴとして呈示することができなかったことにより、結論づけられることになった。
日本で第二番めに大きい政党である民主党と第三番めに大きい政党、維新党、またその他多数の小さな党に分かれた野党は、早期選挙という驚くべきアナウンスに不意打ちを喰わされた状態となった。
そのため野党には、 説得力ある政策を有権者に提示するための ―─ 、あるいは、民主党の場合においては、政府の絶対多数を覆すような可能性を持った十分な人数の候補者を編成するための ―― “十分な時間”がなかったのである。
安倍氏は、彼のエネルギーを経済に集中させることを明らかにした。
彼は2015年の早期に、160億ドル(102億ポンド)の景気刺激策を開始する。この景気刺激策によって、消費者需要を煽り、円切り下げに伴った食品価格や輸入価格の上昇を埋め合わせようとするものである。
しかし、政府が、社会保障費をカットすることや急速高齢化する日本の人口統計上のチャレンジに対処する一方で、いかにして、この景気刺激策と、日本の長期間に及ぶ記録的レベルの国債を減らす必要性とを調整していくのか、明白ではない。
ましてや、政府が、法人税の減税と、間接税(消費税)の引き上げを2017年の春まで差し控える事を約束した時に、この全ての事が為されなくてはならないのである。
政府は、新しい為政権を使い、いくつかの不評な政策を迅速に押し進めることになるであろう。 それらは:
1. 国内の現在稼動停止中である48基の原子炉のうちの何基かの原子炉を再稼動させること
2.議論の余地あるTPP(環太平洋パートナーシップ協定)会談の一部として貿易および農業の自由化を促進すること
3.日本の軍隊が東アジアにおいて、また世界的にも、広範囲の軍事活動に参加することを可能にするために、国の新しい集団的自衛権条項を法典に編み法制化すること
4.特に沖縄における米軍の現状について、米国との安保協力を強化すること
これら政策転換の多くについては、国内においても海外においても 異議が唱えられている状態が続いており、政府は、特に国内の地域レベルにおいて利益団体/公益利益団体からの強硬な抵抗に直面する可能性が強い。
しかし、安倍氏にとっては、彼自身の政党である自民党内において強力な挑戦者がいないということが慰めとなっている。
長いゲーム
安倍氏の自民党内における政治的立場および権限は、少なくとも、衆議院選挙が行われる2016年までは、安定した状態が続くことになる。
彼はおそらく、首相として仕えた過去2年間に加えて、あと4年間の首相在任期間があることを期待できるであろう。
この選挙結果は、安倍氏には、制度上の障害物を変えるために色々と試してみる期間があと4年間あるということを意味することになる。
以上
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5100:150105〕
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