沖縄はしたたかに、粘り強く抵抗を続ける ―辺野古新基地建設問題
- 2015年 5月 4日
- 時代をみる
- 宮里政充沖縄
米議会における安倍首相の演説――あまりに自虐的な
安倍首相は4月30日未明、アメリカ議会の上下両院合同会議で演説を行った。スピーチライターとの綿密な打ち合わせの末の原稿であろうが、その内容はアメリカに媚びた、歯の浮くような、「戦後レジームからの脱却」ならぬ戦後レジームべったりの、情けなくなるほど自虐的な、しかし恐ろしく血の臭いのするものであった。
彼にとって憲法9条はもはや無いに等しく、安保法制の国会審議などもほどほどにしてあとは強行採決に持ち込めば済むという姿勢を国際的に表明する結果となった。国会も国民も随分馬鹿にされたものだ。
憲法の改正に真っ正面から取り組むことをせずに憲法の内容を変えていく方法はヒットラーがよく用いた手法である。もちろん、自民党憲法改正本部長の船田元衆議院議員は「2017年の通常国会のどこかで発議し、その年のうちに国民投票」に持ち込む(4月30日『毎日新聞』朝刊5面「会見を問う1.」)と意気込んでいるが、その頃にはもう憲法改正など当たり前という国民世論ができあがっている可能性が強い。もちろん、国民がかつてのドイツ国民のように権力のプロパガンダにまんまと操られた場合の話である。権力は「これから戦争をする」とは言わず、「侵略する」とも言わない。国民に向かっては「平和」や「正義」や「防衛」や、こともあろうに「人道」や「人権」などの言葉を振りかざしたりするのだ。そしてその結果身の毛もよだつ殺戮や破壊が行われる。だが、日本はこれまでアジアを植民地から解放するために「正義のための」「撃ちてし止ま」ぬ戦いをしてきたのであり、「特攻隊」も「人間魚雷」もそのための美学なのであった。それではアメリカにとって長崎と広島への原爆投下の大義名分は何であったか? 15年間に及ぶベトナム戦争やブッシュのイラク戦争の大義名分は何であったか? テロ予告でもしたのか?
国民の多くは悲惨な戦争が終わってはじめて国や自らが犯した行為の恐ろしさに気づくのである。良き息子であり、良き夫であり、良きおじいちゃんであったはずの自分がどうしてあんな残酷なことを行い得たのかと問いかけ、苦しみ、悩む。だが、それでは遅いのだ。安倍首相は日本がアメリカと共に世界平和のために貢献できる国へと導いてくれる有能な、実行力のある首相であるかのごとき錯覚に陥ってはならないということだ。
安倍首相は何が何でも辺野古移設をやり遂げるつもりである。彼はオバマ大統領に沖縄県民の移設反対運動の現実を伝えることはしたが、「辺野古移設こそが唯一の選択」であることもまたしっかりと表明した。あとは力ずくでその約束を果たすのみである。かつての薩摩軍や明治政府に派遣された軍隊や警察と同じようにだ。
そうはさせない
だが、沖縄は「はい、わかりました」とは言わない。沖縄県は4月27日、ホワイトハウスまで歩いて10分以内の場所に沖縄県の事務所を開設した。所員は今のところ3人。「今後は事務所を拠点に米議会や米国務省、米国防総省、シンクタンクなどを本格的に回り、沖縄の現状や翁長雄志知事の考えを伝えるほか、5月下旬に予定する翁長雄志知事の訪米に向け、米要人との面談調整などを担う。」(『琉球新報』4月29日)。
さらに、辺野古新基地建設反対運動のための「辺野古基金」は日本本土在住者からの協力(約7割)を得て、4月30日時点で約1億2000万円に達した。
沖縄県民にとっては『屈辱の日』である4月28日には沖縄県庁前に2500人(主宰者発表)が集まり、辺野古移設反対の抗議集会が開かれた。
5月17日には30000人以上の参加者を目指し、那覇市セルラースタジアムで「新基地阻止県民大会」を開催する予定である。翁長県知事も出席予定だという。
本土のメディアもようやくこの新しい基地問題に関心を寄せ始めた。私は次に掲げる『毎日新聞』の主張に全面的に賛成するものである。
日米同盟の中核である在日米軍基地の4分の3が集中するのは沖縄県だ。その沖縄から辺野古移設は受け入れられないという明確な意思が繰り返し示されているのに、首相は直視しようとしない。多くの不利益を強いられながら、日米同盟を実質的に支えているのが沖縄であることを考慮するならば、首相は沖縄とのこじれた関係を解きほぐすために全力を注ぐべきだ。その方法とは、辺野古移設の実現がもはや政治的に困難であることを認め、普天間の危険性除去という原点に立ち返って米国との再交渉に臨むことだと私たちは考える。(4月30日)
沖縄はしたたかに、粘り強く、抵抗を続けて行く。(2015.5.2)
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