【集団的自衛権問題研究会 News&Review :特別版 第1号】 (2015年6月2日)
- 2015年 6月 3日
- 評論・紹介・意見
- 杉原浩司
集団的自衛権問題研究会では、「安全保障法制」の国会審議がスタートしたことに伴い、今までの「News&Review」から、速報性重視の発行体制に転換させていくことにしました。まずは、衆議院特別委員会をウォッチして、そのダイジェストを発信していきます。ご参照ください。今後、徐々に内容の充実をはかっていきます。[転送・転載歓迎/重複失礼]
※なお、明日6月3日(水)の特別委員会質疑は13時~16時です。
首相は出席せず、NHKの中継もありません。衆議院のインターネット
中継はこちらから → http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
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<6月1日「安全保障法制」審議ダイジェスト> 「※」部分はコメントです。
◆岩屋毅(自民)
「自衛隊の活動の範囲、内容は確かに増えていくので、リスクが増える可能性があるのは事実。だからこそ、法制、運用の面で対策を講じていく」。
中谷「新たな考え方への変更そのものが活動に参加する隊員のリスクを高めるとは考えておりません」。
※岩屋議員は「助け舟」を出したつもりかもしれないが、中谷大臣は頑なに持論を変更せず。
◆岩屋毅(自民)
「平和安全法制」を貫く3原則として北側一雄議員(公明)があげた「北側3原則」(1.国際法上の正当性 2.国民の理解と民主的な統制 3.隊員の安全確保)を持ち上げ、「平和安全法制=危機管理法=紛争防止法」と強調。
◆遠山清彦(公明)
「法律の内容それ自体で自衛隊の活動現場のリスクは決まらない。これは常識」と断言。「運用によって決まる」と。
◆遠山清彦(公明)
「『安全確保業務』とは監視、駐留、巡回、検問や警護などであり、警察が行う治安維持活動や掃討作戦は行わない」「武器の使用が武力の行使に発展することはない」。
※現在の戦場の実態を無視。例えばISAFで米軍、独軍などは巡回、検問中に「自爆テロ」や路肩爆弾(IED)で多数死亡。
◆後藤祐一(民主)
「自衛隊員のリスクについて、与党(岩屋議員)と政府(中谷大臣)の認識の不一致が明らかになった。中谷大臣は答弁を撤回ないし修正すべきだ」。
中谷「リスクは現状から増大するとは全体としては言えない」。
◆後藤祐一(民主)
「(写真パネル)バグダッド南側の道路で自動車爆弾が爆発して18人が死亡した。昔の戦争と違い、イラクでは予測のつかない場所で爆発が起きる。誰が敵かもわからない。こうしたところで活動してリスクがいささかも増えないのか?」。
中谷「前回イラクで活動した隊員もリスクを極小化して立派に任務を果たした。従来の非戦闘地域と安全に関しては同じ内容だ」。
◆前原誠司(民主)
「『我々の核心的利益に対しては一方的に行動する』のが米国の国家安全保障戦略。北朝鮮に対して米国が国際法に違反する攻撃をして、日本に危機的状況が差し迫っているときに一切協力しないと言い切れますか?」。
安倍首相「国連憲章上、違法な武力行使に対して日本が協力することはない。我々の国にミサイルが飛んでくる武力攻撃事態になれば、当然自衛権を行使して対応するが、あくまでも我々は国際法を遵守する立場だ」。
※「違法な武力行使でも米軍に協力すべき」と事実上迫るもの。ただ、安倍首相の答弁も、実際に米国が先制攻撃した場合に言葉通りに実行するとはとても思えない。
◆玄葉光一郎(民主)
「南シナ海において平時からの警戒監視を自衛隊は行うのか?」。
中谷「この地域の問題に関心は有している。今後の課題だと思っている」。
※ちなみに先日、安倍首相は「考えていない」と答えていた。
◆玄葉光一郎(民主)
「周辺事態法には当たらないが重要影響事態には当たる具体的なケースは?」。
安倍首相「中東・インド洋などで深刻な軍事的緊張状態や武力衝突が発生し、物資を運ぶ日本の船舶に深刻な影響が及ぶ可能性があり、米国などが事態に対応するため活動している時は、その他の状況も勘案したうえで該当することはあり得る」。
※相当に広い例示の説明。結局、政府の裁量で判断できる余地を最大化するもの。
◆寺田学(民主)
「我が国への攻撃の意思すらない国に対して、3要件に合致すれば武力攻撃できる可能性を排除しないか?」。
中谷大臣「排除しません!」。
寺田「これのどこが専守防衛か!?」。
◆細野豪志(民主)
「総理は先日の記者会見でISIL(「イスラム国」)への後方支援はしないと述べていた。法律上、本当にできないのか?」。
中谷「国連憲章の目的に従って共同で対処していくことと、もう一つは国連決議を前提に我が国は国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があると認められる、これを満たしているかどうか」「法律的にはあり得るということ」。
細野「あらゆる厳しいケースに自衛隊を出していくことを認めたものだ」。
※要するに「可能性は何でもあり」ということ。
◆細野豪志(民主)
「派遣された自衛官がテロリストと間違って民間人を誤射した場合など、現地の法律で裁かれることはないか?」。
岸田外相「クウェートでは自衛隊員は刑事裁判権から免除されていた」。
上川法相「過失により人を死亡させた場合は、国外犯処罰規定が設けられていないので刑法による処罰はできない」。
細野「法の空白を埋めて対応できるようにすべきだ」。
◆今井雅人(維新)
「カンボジアで殺された中田厚仁さんは『我々が一番安全なのは丸腰だから。警護が付いているとかえって危険だ』と語っていた。JVCというNGOも『警護がいると余計危なくなる』と同様のことを言われている」。
中谷「自衛隊がいることで活発に活動できるケースもある」。
◆穀田恵二(共産)
「2006年3月30日付の『航空自衛隊ドクトリン等に関する調査研究』という文書がある。その内、1)の項で『攻勢対航空作戦』が書かれており、敵基地攻撃についても述べている。また『将来の憲法改正や集団的自衛権の行使などに対応する』ために、『今後は法的枠組みを超えて、軍事的専門家として助言を積極的に行う』とも書かれている。これはかつての『三矢研究』に匹敵する大問題ではないか」。
中谷「内部向けの文書に過ぎない。自衛隊は平素から様々な研究をしている。敵基地攻撃の研究に問題はない」。
※「文官統制」を廃止する防衛省設置法の改悪の動きも進行中。制服組の更なる権限強化と連動するものです。
◆穀田恵二(共産)
「空自が導入を決めたF35ステルス戦闘機の戦闘作戦行動の範囲は?」。
中谷「約1,100キロ」。
穀田「兵装(搭載可能な武器)の精密誘導弾JDAMはアフガン、イラクで多く使用された。F35は敵基地攻撃を見越した兵器ではないか?」。
中谷「敵基地攻撃には正確な位置把握やレーダーサイトの無力化が必要だが、自衛隊にその能力はない。またオペレーションを行う装備を有していない。」
※「能力はない」と言いながら、着々とそのパーツを増やしているのが実態です。
◆穀田恵二(共産)
「新たな日米ガイドラインで民間施設の利用が定められている。米軍使用が想定される空港は全国で何ヶ所か?主な空港は?」。
中谷「全国で95ヶ所。成田、東京、中部、関西、大阪など」。
穀田「沖縄県の空港はどこですか?」。
中谷「那覇以外は久米島、慶良間、南大東、北大東、伊江島、下地島、多良間、新石垣、宮古、波照間、与那国、粟国の12空港」。
穀田「特定公共施設利用法の改定で米軍以外の外国軍隊を追加するというが、どこの国を指すか?」。
中谷「特定の国を指定しない」。
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発行:集団的自衛権問題研究会
代表・発行人:川崎哲
News&Review特別版 編集長:杉原浩司
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<本研究会のご紹介>
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◇集団的自衛権問題研究会News & Review
第9号の内容
● 歯止め無き対米支援法制は「国民を守る」か(川崎哲)
● 新「日米ガイドライン」は何を狙うか(吉田遼)
http://www.sjmk.org/?p=130
◇『世界』6月号に当研究会の論考が掲載されました
http://www.sjmk.org/?p=118
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5386:150603〕
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