IS支配下モスルの住民たち(1) ―「イスラム国」との戦いは国連中心で⑱
- 2015年 6月 12日
- 評論・紹介・意見
- イスラム国坂井定雄
イスラム過激派「イスラム国(IS)」が、イラク第2の都市モスルを急襲、支配下に置いて世界に衝撃を与えてから1年。150万人の市民たちのほぼ半分がその直後に脱出したが、残った人々はどのような生活を強いられているのだろうか。英BBCは9日、市内から持ち出された記録映像と住民の詳細な証言を報道した。世界に報道されたその内容を、電子版から紹介しよう。イラク政府と支援する諸国は、年内にモスルを、ISの支配から奪還したいとしているが、とうてい楽観はできない。
BBC中東版2015・06・09
モスルの実状:「イスラム国」の下で、どんな生活が?
イラク第2の都市モスルから独自に得た映像は、占領から1年間、ISがどのように人々の生活を支配しているかを、明らかにしている。
BBCのガディ・サリーが入手した秘密撮影された映像は、モスクが爆破され、学校が放棄され、女性たちが全身を覆うのを強制されている姿を示している。
住民たちは、ISが極端に解釈するイスラム法による、処罰への恐怖の中の生活を語っている。
彼らはまた、予想される政府軍の攻撃に対しての、IS備えについても語っている。
モスルの占領は、イラク北部全体へのISの電撃的進出のスタートとなり、IS部隊によって数十万もの人々が略奪され、住家から脱出することになった
1. 女性の支配
ISの占領後の数か月間に撮影されたこれらの映像は、IS支配下の実状を明らかにしている。最初のシリーズは、女性たちがどのように身体を覆うことを強制されるかを示すとともに、一人の女性が両手を完全に隠さずにチャレンジした姿も見せている。
ハナの証言
「ISは女性の服装を厳しく規制しています。女性は、頭からつま先まで完全に覆わねばなりません」
「ある日、ISの占領下以来、家に閉じこもり続けたのに耐えきれなくなり、外に連れ出してくれるよう夫に頼みました。キマル(髪の毛から足のつま先まで覆うが、顔だけは出す民族衣装)を着なければならなくてもです。わたしが準備していると、夫はニカブ(眼だけ出すだけの民族衣装)を着なければならないと言いました。わたしはショックを受け、出るのは止めようかと考えましたが、結局夫のいう通りにしました」
「わたしたちは、婚約中よく行った川岸の素敵なレストランに行き、テーブルに座ると、夫は、ここにはISはいないし、このレストランは家族向けの店だから、顔を出してもいいよ、言いました」
「わたしはとてもうれしく、笑顔いっぱいの顔を見せました。でも、すぐレストランの店主がやってきて、すぐ顔を覆るよう懇願しました。なぜなら、ISの戦闘員たちは突然にやってきて、顔を出した女性客がいると、店主をむち打ちにするというのです」
「わたしたちは、店主に従いました。わたしは物事がなんて無寛容で、無慈悲になってしまったのか、と思いました。私たちは、妻が顔を覆わずに外出したため、むち打ちにされた話をいくつも聞いていました。顔を覆わない女性を自家用車に乗せて外出した両親は、車の運転を禁止されました。ISの命令に反抗すると、むち打ちされ、ひどく辱められます」
「レストランを出たあと、わたしたちは街で、一人の父親が黒いニカブの海の中で、必死に娘を探している姿に会いました」(続く)
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