本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(90)
- 2015年 6月 12日
- 評論・紹介・意見
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現代人の価値観
歴史を研究すると、時代によって、人々の「価値観」が、大きく変化していることが理解できる。そして、この変化にも、一定の法則が存在しているものと考えているが、基本的には、「心の座標軸」と「文明法則史学」を合わせて分析することにより、「人々が、どの時代に、どのようなものを大切に考えるのか?」が推測できるようである。つまり、「大切」という言葉のとおりに、自分の「お金」や「時間」に関して、「何を切り捨て、何を選択するのか?」ということだが、現代人は、明らかに、「お金」と「自分」とを選択しているようである。
別の言葉では、「目に見えるもの」の象徴とも言える「お金」であり、また、「他人に対する思いやり」よりも「自分の生活」のことだが、この結果として生み出されたのが、現在の文明社会とも言えるのである。つまり、人々の「価値観」の結晶として、現在の都市文明が形成されたものと考えているが、一方で、「平家物語」のとおりに、「諸行無常の鐘」が鳴り響いているようにも思われるのである。
具体的には、現代人が、最も大切に考えている「お金」に関して、前代未聞の規模で、大転換が起き始めているものと思われるが、実際に、「ドイツ」を始めとして、急速に金利が上昇しているのである。別の言葉では、今回の「マイナス金利」については、「文明法則史学」による分析でしか、説明が付かないものと考えているが、このことは、前述のとおりに、「現代人が、お金に対して、最も強い関心を抱いていた状況」を表しているようにも感じられるのである。
しかし、「限界点に達した時に、バブルの発生と崩壊が起き、世の中が、大転換期を迎える」ということも、「歴史の教訓」の一つでもあるようだ。つまり、今回の「マイナス金利」については、「800年」、あるいは、「1600年」に一度とも言えるほどの異常事態だったものと考えているが、この点については、間もなく、金利の急騰が起きた時に、結果が出るものと考えている。
そして、かりに、私の予想が正しいとすると、今後は、大きな「価値観の転換」が起きることになるようだが、実際には、「幕末や戦後の日本人」と同様に、「今まで信じていたものが、実は、全くの虚構だった」という虚無感の発生とも言えるようである。つまり、現在の「お金」は、実際のところ、「絵に描いた餅」にすぎず、「使おうと思った時に、ほとんど、価値が無くなった状況」が発生するものと考えている。(2015.5.15)
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金利上昇のリスク
「金利」は「お金の値段」であり、基本的には、「お金」に対する「需要」と「供給」とで決定されるものと考えている。しかし、現在では、この点に関する分析が、ほとんどなされておらず、結果として、きわめて曖昧な「意見」や「考え方」しか存在しないようである。つまり、「人類史上、お金の謎が解けていない」という事実と同様に、「金融商品」に関する理解も、たいへん未熟な段階とも言えるのである。
具体的には、「マルクスの資本論」で、「商品」と「通貨」の関係性が、経済学の「大きなテーマ」となって以降、ほとんど、理論的な発展が見られなかったようにも思われるのである。また、特に大きな問題として、「1980年代」以降に発展した、いろいろな「金融商品」が挙げられるが、この点については、私自身も、「いろいろな経済の専門家」と、数多くの議論をした。そして、この時の論点の一つが、「金融商品は、本当に、商品なのか?」という疑問点だったが、結局のところ、私自身としては、「金融商品は、通貨と商品との両方の性格を持ち合わせている」という結論に落ち着いたのだった。
つまり、今回の「マネーの大膨張」は、やはり、前代未聞の規模で「金融商品」が生み出され、その資金が、世界的な「金利低下」を招いたものと考えている。具体的には、「米国の10年国債金利」が、「1981年」の「約16%」から、「2012年」の「約1.66%」にまで、「30年以上も、継続して低下した」という状況だったのである。別の言葉では、この間、継続して、「お金の供給」が行われ、結果として、現在の「超低金利状態」が可能になったものと考えられるが、この「極み」とでも呼ぶべき状況が、今回の「ヨーロッパのマイナス金利」だったようである。
つまり、「ドイツ」や「スイス」などで、「長期国債が、マイナス金利の状態にまで、価格が急騰した」という状況のことだが、現在では、ご存じのとおりに、「4月20日」前後を境にして、一挙に、「金利上昇」が始まった。別の言葉では、「30年以上も続いてきた、世界的な金利低下」に歯止めがかかり、反対に、「巻き戻し」が始まったものと思われるが、今後は、この点に関して、きわめて危機的な状況も想定されるのである。
具体的には、「日本」を始めとした「世界の先進諸国」において、「短期金利が、1%にまで上昇した時に、どのような変化が予想されるのか?」ということだが、実際には、「日銀」などの資金繰りに、大きな問題が生じることになるようだ。つまり、「210兆円にまで大膨張した当座預金」を、どのようにして処理するのかという大問題である。(2015.5.15)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5405:150612〕
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