【集団的自衛権問題研究会 News&Review :特別版 第9号】 (2015年6月26日)
- 2015年 6月 27日
- 評論・紹介・意見
- 杉原浩司
6月26日(金)に行われた安保法制特別委員会の審議ダイジェストをお送
りします。安倍首相が出席し、NHKの中継も入りました。百田尚樹氏を呼
んだ自民党の「文化芸術懇話会」で相次いだ暴言に関する質疑もありまし
た。また、武力行使との一体化の問題についての具体的な追及もなされま
した。ぜひご参照ください。
次回は、週明け6月29日(月)に一般質疑(7時間、NHK中継なし)が行わ
れます。
9:00~9:20 小田原潔(自民)
9:20~9:40 中谷真一(自民)
9:40~10:32 長妻昭(民主)
10:32~11:24 長島昭久(民主)
11:24~12:00 後藤祐一(民主)
休憩
13:00~13:15 後藤祐一(民主)
13:15~14:06 緒方林太郎(民主)
14:06~14:44 小沢鋭仁(維新)
14:44~15:22 升田世喜男(維新)
15:22~16:00 吉田豊史(維新)
16:00~17:00 赤嶺政賢(共産)
衆議院インターネット中継 http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
※右のカレンダーの日付(6月26日)をクリックして、委員会名をクリッ
クするとアーカイブも視聴できます。
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【6月26日(金)の「安保法制」特別委員会質疑】
総括的集中審議(7時間):首相出席
◆今津寛(自民)
「沖縄の戦没者追悼式での一部の心ない言動は残念だ。「備えあれば憂い
なし」。どのような理不尽な批判があろうとも、法案成立へ努力を貫く」
「憲法前文にあるが、周辺諸国の「公正と信義」に信頼するだけで平和が
守れるのか疑問だ。自らの身は自ら守るべき」
◆今津寛(自民)
「諸外国で日本のように個別的自衛権と集団的自衛権を区別している国は
あるか?」
岸田外相「永世中立国のスイスやオーストリアは集団的自衛権の行使を想
定していない。コスタリカは集団的自衛権の行使を妨げる法的根拠はない
が、軍隊を保持していないので自衛権の行使はない」
◆岡田克也(民主)
「世論調査でおおむね8割の国民が「政府の説明不足」と、過半数が「反
対」ないし「今国会で成立させるべきでない」と答えている。どう考える
か?」
安倍「国会の会期を過去最大幅で延長して十分な審議時間を設けた。議論
を通して説明をしていきたい。議論が尽くされれば、決める時は決める」
◆大串博志(民主)
「世論調査では「違憲」との指摘が56%にのぼっている。法案を一度撤回
すべきだ」
安倍「(阪田元法制局長官の)「満州事変と同じ」との指摘はあまりに飛
躍している。どういうことか、驚きを禁じ得ない。日本はこういうことを
しようとしているのではない」
◆寺田学(民主)
「出席者から「広告収入を減らせ。マスコミを懲らしめろ」等の発言があ
った自民党の「文化芸術懇話会」に出席したか?」
加藤勝信官房副長官「自民党議員として出席した」
寺田「感想は?」
加藤「拝聴に値するものだった」
寺田「百田氏は「沖縄の2紙はつぶすべきだ。沖縄のどこかの島が中国に
盗られたら目を覚ます。普天間は田んぼの中にあり、利益になるから住み
着いた。沖縄は本当に被害者なのか。沖縄の米兵によるレイプ事件より、
沖縄県民自身が犯したレイプ事件の方がはるかに率が高い」などと沖縄に
ついても酷い発言をした」(ここでヤジる方の神経がわからない)
加藤「内々の勉強会だった。私からの発言は控えたい」
◆寺田学(民主)
「自民党の文化芸術懇話会で(マスコミに圧力をかけたり、沖縄を侮蔑す
る)こうした発言があったことを承知しているか?」
安倍「報道自体知らない。自民党は自由と民主主義を大切にする政党だ。
報道の自由は民主主義の根幹をなすもので尊重されるべき。党としてもそ
の立場を貫いている」
寺田「後ろに会に参加された議員もいる。休憩時間に確認して答弁を」
◆寺田学(民主)
「懇話会での発言を確認したのか?」
安倍「寺田さんは私に「けしからん」と言われた。休憩時に会合で訓示し
なければならず、午後の質疑の準備もあった。調べる時間はなかった」
寺田「細かい確認を求めたわけではない。どうして事実を認めないのか?」
「報道や沖縄の方々にお詫びすべきでないか?」
安倍「報道の自由は尊重していく。自民党の会合には様々な方々が来られ
る。その方々になり代わって私がお詫びすることはできない」
寺田「広告収入を経団連に言ってなくしてもらえ、と発言したのは御党の
議員。責任があるのでは?」
安倍「自民党が企業にスポンサーを降りろ、というのは考えられない」
◆辻元清美(民主)
「これが会社だったら、社長は謝る。この懇話会は安倍総理の応援団の集
まり。百田さんは総理がNHKの経営委員として選んだ人だ。単なるいろん
な人の意見ではない。安倍政権そのものの質が劣化している」「これは普
通のことではない、との危機感はないのか?!」
安倍「内々の集まりだと聞いている。我々の考え方はそこでの議論とは違う」
辻元「秘密の会ならこういう発言をしていいのか? 言い訳されない方が
いい。そういう体質だと国民は思う」
安倍「何を言ってもいいとは言っていない」
◆辻元清美(民主)
「百田さんが『WILL』という雑誌で総理を評価されたのがきっかけで声を
かけた、とある。「百田さんとは話が合う」と意気投合されている。親し
いのですね?」
安倍「対談でも話し、会食もした。主張が違っても意気投合することはあ
る」
辻元「沖縄の人々は安保法案について基地の固定化につながると危惧して
いる。また、攻撃して反撃されるのは軍事基地だ。懇話会での発言がこの
質疑に関係ない、というのは信じられない。百田さんをNHKの経営委員に
したことは不適切ではないか?」
安倍「適切な手続きを経て選ばれた」
◆辻元清美(民主)
「百田さんの沖縄に対する発言は間違いか?」
安倍「民間人の発言について間違っていると申し上げる立場にない。それ
を云々するより、本土移転の実現などあげてきた成果が大事だ」
辻元「なぜ総理は沖縄で歓迎されないのか?」
安倍「民主党政権の「最低でも県外」発言が沖縄の世論に影響した」
◆辻元清美(民主)
「戦争という世界に通じるドアには鍵がかかっていて、鍵を外せるのは国
民だけだ。それを今、総理が蹴破って向こうに行こうとしているから、憲
法違反と言われるのだ」。
◆井坂信彦(維新)
「作家の問題発言をそのまま傾聴したのか?それとも諌めたのか?」
加藤官房副長官「作家としての観点からの発言として傾聴に値すると思っ
た。先ほどの発言についてではない」
井坂「マスコミを懲らしめるために広告収入を外せばいいと発言した議員
を確認し処罰すべきでは?」
安倍「言論の自由は民主主義の根幹をなす。一つひとつの意見をもって処
罰するのがいいことなのか」
◆木下智彦(維新)
「自民党の勉強会のことを議論するよりも、本題の安保法制の議論を優先
すべきだ」「日本として日米同盟の評価を積極的にしていかなければ見捨
てられてしまう。こうした質問は本来なら自民党議員からなされるべきだ」
「橋下最高顧問は「議員が現場に行くべき」と発言している。各党の専門
家と有識者による国会承認の仕組みを導入してはどうか」
◆青柳陽一郎(維新)
「60日ルールは使わないと明確に答弁をしてほしい」
安倍「議論するのが国会。参議院は良識の府でしっかり議論されると思う」
青柳「世論調査では時間経てば経つほど「十分説明していない」「今国会
で成立させなくてもいい」が増えている」
安倍「世論調査は日々変わるもの」
◆青柳陽一郎(維新)
「審議時間を積み上げただけでなく、一定の国民による理解が進んだとこ
ろで結論を出すべき。数で押し切るなら、総理が日頃批判している「力に
よる現状変更」そのものだ」
安倍「政府でなく委員会でお決めになること。「数の力」と批判されるが
選挙の結果だ」
青柳「政府答弁は手続きで変えられる。「やらない」と言っても信用でき
ない。違憲と考える憲法学者が増え続け、国民の多くから反対されている。
この法案はいったん取り下げるべきだ」
◆太田和美(維新)
「防衛白書を読み比べたが、平成25年度版にも7月1日の閣議決定後の26年
度版にも「専守防衛とは相手から武力攻撃を受けて初めて武力行使する」
とある。しかし、英語版では26年度版から「日本に対して」が削除され
「攻撃が行われる場合」と変更された。どういうことか?」
中谷「事前通告がなかったので確かめようがない」
太田「総理の本音が出ているのではないか。理事会で統一見解を」
◆塩川鉄也(共産)
「戦闘作戦行動のために発進準備中の米軍機への支援について。1999年に
当時の大森法制局長官は「憲法上の適否に慎重な議論を要する」としてい
た」
黒江防衛政策局長
「戦闘行為を行う場所と一線を画す、補給の一種である、自らの判断で活
動し他国の指揮下に入らない、発進準備中であり戦闘行動ではない、との
4つの理由で武力行使と一体化しないと判断した」
◆塩川鉄也(共産)
「空中給油機は2010年度から運用し、愛知県小牧基地に4機、今後さらに3
機を購入する。2004年に日米空中給油訓練の覚書を交わし、2010年に米軍
給油のために改訂したのは米側の要請か?」
深山運用企画局長
「日米双方だ」
塩川「米太平洋軍の担任地域は米西海岸からインド洋まで及ぶ。法案でい
ずれの場合も給油可能になる」
◆塩川鉄也(共産)
「自衛隊の空中給油機部隊は米軍が育てあげてきた。米軍への給油を可能
とした2010年の覚書改訂の際、共同通信は「長距離攻撃能力を重視する米
空軍の作戦運用に空自が深く関与する事につながる。米軍の武力行使との
一体化を懸念する」と書いた。アジア諸国に脅威を与えかねない」
「改訂覚書にもあるNATOが定める空中給油の手順書「ATP56」とはいかな
るものか?」
深山局長「NATO加盟国が給油を標準化するためのもの」。
塩川「アフガニスタン軍事作戦で空爆は米国、空中給油と偵察は英国と役
割分担をした。手順書は米軍が同盟国に分担させるため策定したものだ」
「空中給油機の詳細情報をまとめた国別附属書は公表しているか?」
深山局長「手続きは終了している」
塩川「現場が先行し、それに合わせて法律を作っているのが実態だ。日米
共同訓練への米側の参加部隊の機種に空欄があるが?」
深山「米側の了解が得られなかった」
塩川「訓練では、空自のF15が核攻撃が可能な米空軍B52の援護さえしてい
る。資料の開示を求める」
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<特別版 第8号(6月22日の参考人質疑録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=251
<特別版 第7号(6月19日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=247
<特別版 第6号(6月15日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=241
<特別版 第5号(6月12日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=239
<2つの政府見解に関するコメント>
6月10日 川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
http://www.sjmk.org/?page_id=217
<特別版 第4号(6月10日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=226
<特別版 第3号(政府見解等を掲載)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=207
<特別版 第2号(6月5日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=187
<特別版 第1号(6月1日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=136
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発行:集団的自衛権問題研究会
代表・発行人:川崎哲
News&Review特別版 編集長:杉原浩司
http://www.sjmk.org/
ツイッター https://twitter.com/shumonken/
※ダイジェストはツイッターでも発信します。ぜひフォローしてください。
<本研究会のご紹介>
http://www.sjmk.org/?page_id=2
◇『世界』7月号、6月号に当研究会の論考が掲載されました。
http://www.sjmk.org/?p=194
http://www.sjmk.org/?p=118
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5445:150627〕
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