国際的な納税回避行為の問題 昨今の2つの新聞記事から + 川内原発再稼働と桜島噴火 + 脱被ばく実現ネット関連サイト
- 2015年 8月 17日
- 評論・紹介・意見
- 田中一郎
1.主要40カ国で全面導入されるという「タックスヘイブン対策税制」は,どれほどの「効果」があるのでしょうか???
昨日(8/13)の日本経済新聞朝刊に掲載された「タックスヘイブン対策税制 主要40カ国全面導入」という記事ですが、サブ見出しには「G20・OECD 秋にも合意,税の抜け穴ふさぐ」と書かれています。
●タックスヘイブン対策税制、主要40カ国で全面導入へ G20・OECD秋にも合意
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS12H2S_S5A810C1EE8000/
しかし,この「タックスヘイブン対策税制」はどこまで有効なのでしょうか? たとえば,記事には「日本でもタックスヘイブン対策税制を導入済み。日本に本社のある企業が法人税率20%未満の国に実体のない子会社を作っていると当局が判断した場合,この子会社の利益を日本での課税対象にすることが柱だ」とあります。そして,記事の横にある注書きを見ますと,この日本でのタックスヘイブン税制は,既に1978年に導入されているそうです。
これについて,次のような疑問がわいてきます。
(1)何故,法人税率20%未満の国が対象なのでしょうか? 日本の法人税率より低い国はすべて対象にすべきではないのでしょうか?
(2)記事にある「実体のない子会社」の定義はどういうものでしょう? これがいい加減だと,この制度は形だけあって魂入らずの「アリバイ行為」になります。
(3)上記(2)について,判断は税務当局がするとありますが,恣意性が働きませんか? 税務署というところは「強きを助け,弱きをくじく」ロクでもない役所だというイメージが強く,信頼できません。公正な第三者機関を設けるべきではありませんか?
(4)「子会社」というのも曲者ではありませんか,親会社をタックスヘイブンに移してしまえば,手も足も出ないということになりませんか?
(5)このタックスヘイブン対策税制では,外国税額控除の制度はどうなっているのでしょう。もともと外国税額控除は発展途上国を対象と考えて創設された税制だったと思いましたが。
(6)このタックスヘイブン対策税制が主要40カ国で全面導入されることが,日本の税収=納税回避行為にどのような影響があるのでしょう。日本は既に導入していますから,関係がないように思いますが,いかがでしょう? (今まで外国で納税回避行為を繰り返していた,外国に本社を設ける日系企業には影響はあるでしょうが)
(7)このタックスヘイブン対策税制は,日本では既に1978年に導入されていますので,もし,この対策税制が有効なら,日本でのタックスヘイブンを使った納税回避行為は封じ込められていることになりますが,そんなことはないでしょう???では,この記事は,何が言いたいのでしょうか?
国際税務にお詳しい方がおられたら,解説をしていただけると幸いです。
どうも私は,この「タックスヘイブン対策税制」に日本の税務当局のアリバイ行為を感じますし,また,この記事が何を伝えようとしているのか(どうも海外進出企業への国際的な納税回避行為を担保するための情報提供のような気がしますが),よくわかりませんね。少なくとも,多国籍企業を中心に,記事のサブ見出しにあるような,「税の抜け穴ふさぐ」ことが「ねらい」ではないような気がします。
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2.8月14日付の読売新聞に「国際的な税逃れ防止,特許・商標 利益で評価,「無形資産」新ルール 政府導入へ」という記事が掲載されました
8月14日付の読売新聞に「国際的な税逃れ防止,特許・商標 利益で評価,「無形資産」新ルール 政府導入へ」という記事が掲載されました。ネット上では,この読売新聞記事は見つけられませんでしたが,少し前のもので下記が見つかりました。
こういう納税回避の手口は比較的わかりやすく,徴税しようと思えば容易にできるような気もしますが,税務当局は何をやっているのでしょう? 下記の記事には「経団連をはじめ経済界が「事務負担が増大する」と反発している」などと書かれていますが,8/14読売新聞では「企業の課税逃れに対する国際的な批判を受けて容認に転じたとみられる」などと報じています。
要するに,徴税技術の問題というよりは,税務当局ないしは政権の「やる気の問題」ではないでしょうか?
いずれにせよ,この巨大企業群の法人税に係る国際的な納税回避行為に加え,資産家たちの所得税,及び相続税の国際的納税回避行為は巨大な金額になるものと思われます。これをさておいて(放置して),消費税率引き上げなど,もっての外,と言わざるを得ません。1990年頃の消費税導入時にさんざん話題になった「不公平税制の是正」も,その後,政治改革とともに,ニセモノ改革政治家達により,うやむや・むちゃくちゃにされてしまいました。そのなれの果てが,今の自民党と民主党,及び今日の歪み切った税制度です。財政の累積大赤字がおまけにくっついています。有権者・国民・市民は,もっと賢くならないといけないでしょう。何度も何度もだまされるのは「バカ」というものです。
自民党,民主党などに投票しても,一般の有権者・国民・市民には,一文の得にもならない。この「カネを持っている企業や人間達」の納税義務をきちんとさせられる政治家かどうか,正当かどうかが,選挙における政治選択の重要なメルクマールです。社会保障制度の維持・持続のためには消費税増税はやむを得ない=それは,世の中の仕組みを知らない「馬鹿」のいうことです。目を見開いて,納税すべき者たちが何をしているか,よく見てみることでしょう。
●OECD特許・商標、評価手法統一を 課税逃れ対策報告書 – 毎日新聞
毎日新聞 2014年09月16日 22時05分(最終更新 09月16日 22時25分)
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経済協力開発機構(OECD)租税委員会(議長、浅川雅嗣・財務省国際局長)は16日、多国籍企業による課税逃れの防止策の検討状況をまとめた報告書を発表した。米アップルなどで社会問題化したケースでは、特許や商標などの「無形資産」を税負担が軽い国にあるグループ企業に譲渡する手法で課税逃れしたとされる。OECDはこうした行為を防ぐため、無形資産で統一的な評価手法の導入や企業の情報開示の徹底を求めた。20日からオーストラリアで開かれる主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に報告する。
無形資産の対応が焦点になっているのは、無形資産をグループ内の子会社に売却することで課税逃れする事例が多いためだ。具体的には、多国籍企業が法人税率が低い国にある子会社に特許などの無形資産を低価格で売却することで、(1)無形資産がなくなった分だけ本国での納税額を抑制する(2)無形資産の使用料収入(利益)を子会社に集中させ、本国よりも安い税率で現地で納税する--といったケースだ。
OECDは無形資産の価値(子会社への売却価格)の評価手法が各国・地域間でバラバラで、企業任せになっていることを問題視。報告書では、無形資産から将来得られる使用料収入を基に適切な資産価値を算出する統一的手法を導入するよう求めた。多国籍企業が節税目的で海外子会社に資産移転することを防ぐ効果を期待している。また、多国籍企業が納税に関連する情報を各国政府に報告する仕組みの制度化も要請。グループの組織図や事業概要だけでなく、保有する無形資産▽グループ全体の財務状況と納税状況▽子会社が所在する国ごとの財務情報--などの開示を求めている。「各国の税務当局が不当な資産移転の有無を調べる端緒にする」(財務省)狙いがある。
無形資産への対応の強化について、政府関係者は「日本企業は税率の低い国に資産を移転して課税逃れをしているケースは少なく、影響は限定的」と指摘する。ただ、情報開示の徹底に対しては、経団連をはじめ経済界が「事務負担が増大する」と反発している。OECDはさらに検討を進め、来年末までに最終案を決定する方針だ。
◇キーワード・多国籍企業の課税逃れ
世界各国で事業展開する企業が納税額を抑えるため、法人税率の低い国に利益を集めるなどして節税すること。米アップル、米スターバックス、米グーグル、米アマゾンなどが批判を浴びた。2013年5月には米上院で米アップルが、英議会では米グーグルの担当者がそれぞれ課税逃れの問題を追及されるなどして政治問題化した。経済協力開発機構(OECD)は13年7月に15項目にわたる行動計画を公表し、対応を本格化。同年9月の主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)も同行動計画を全面的に支持する方針を表明した。各国が対応を急ぐ背景には、課税逃れによる税収減で財政が悪化することへの懸念や、競争上不利になる国内企業の不満の高まりなどがある。
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●この国を考える 多国籍企業の課税逃れ 阻止へ行動計画 OECD
http://ajimura.blog39.fc2.com/blog-entry-2822.html
<追1>川内原発と桜島噴火
いくつかネット検索した結果です。
●<桜島警戒レベル4>52キロ離れた川内原発…日程変更なし (毎日新聞) – Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150815-00000045-mai-soci
●川内1号機「特別対応せず」=桜島警戒レベル引き上げで―九電 (時事通信) – Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150815-00000079-jij-soci
●九州電力の火砕流予測が川内原発を避けて通っていると話題に – NAVER まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2142725834844911101
●鹿児島県『桜島噴火警報』周辺住民は避難へ、川内原発への影響は?【噴火警戒レベル4】 – NAVER まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2143960836970536301
●川内原発と⽕火⼭山灰のリスク グリーンピース
http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/JP_Volcano_Ash_report_by_John_Large.pdf
「桜島から約52キロ離れており、噴火しても影響は少ない。現時点で9月上旬の営業運転開始に向けたスケジュールに変更はない」との見方を示した。」
「九州電力は稼働中の川内原発1号機について「特別な対応は考えていない」とした。」
かような判断・説明をする「科学的根拠」はどういうものなのでしょう?
何故,マスゴミたちは,それを九州電力と原子力規制委員会に,きちんと説明を求めないのでしょう?
こんな調子だと,今回を含め,川内原発周辺の5つのカルデラ火山が大噴火を起こす場合も,同じような調子でやっているように思われますが,いかがでしょうか?
<追2>脱被ばく実現ネット
(1)脱被ばく実現ネット 活動ブログ 子ども脱被ばく裁判
http://fukusima-sokai2.blogspot.jp/
(2)#脱被ばく実現ネット(旧ふくしま集団疎開裁判の会)
http://fukusima-sokai.blogspot.jp/
(3)子ども脱被ばく裁判 弁護団のページ
http://fukusima-sokaisaiban.blogspot.jp/
(4)子ども脱被ばく裁判・支える会ふくしま
http://datsuhibaku.blogspot.jp/
(5)「子ども脱被ばく裁判」を支える会・西日本
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5588:150817〕
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