おかしいぞNHK、まだ岡本行夫氏かつぐ
- 2011年 1月 9日
- 評論・紹介・意見
- NHK坂井定雄岡本行夫
1月8日のNHK朝のメイン・ニュース。今年の焦点を各界一人ずつの「専門家」に語らせた。日本を取り巻く国際情勢に登場したのが、元外務官僚・外交評論家の岡本行夫氏。
岡本氏のご託宣は「中国・北朝鮮の拡張勢力と、日本・米国・韓国の現状維持勢力のせめぎ合い」「成長する中国と対抗するのは日本だけでは出来ない。日米同盟で対抗するしかない」(注:表現は「せめぎ合い」ではなく「対抗」「対立」、「成長」ではなく「拡張」だったかもしれない)。
“岡本行夫なんぞに目くじら立てるな”という声も聞こえてきそうだが、そうはいかない。岡本氏が何を言おうと自由だが、何しろNHKのメイン・ニュースである。彼が、どういうことをいうのか分かっていて、一人だけを選んだのなら、NHKニュースの編集方針あるいは制作体制を示していると見なければならないからだ。問題にする理由をさらにいうとー
1.貿易をはじめ日本と最も経済関係が深い隣人、東アジアだけでなく国際経済、国際政治に影響力をさらに大きくしている中国との 関係をどう維持・改善するかという、視点も、提案も岡本氏にはまったくない。彼にあるのは“日米同盟を強化して対決する”だけ。
2.岡本氏の主張は単純で、いつも同じことの繰り返し。日米同盟、中国と北朝鮮の脅威、敵意を煽る論理は粗雑。自分の主張に都合のいい事実や情報だけを寄せ集めて、威勢よくしゃべる扇動家、としかいいようがない。
3.外務官僚、防衛官僚・自衛隊出身の“専門家”、“評論家”には、多かれ少なかれアメリカ一辺倒、日米同盟強化と日本の貢献拡大、中国脅威論を主張する人が多いが、岡本氏は中でも偏っている。
なぜ、NHKはこのような人物を選んだのか。次のようなことをいくつか推測するー
1.メイン・ニュースの編集に権限を持つ局長、部長あるいは担当者が岡本氏の主張に共鳴している。あるいは岡本氏と特別な関係がある。
2.現場が事なかれの慣行で、前から使っている人物を使う。
3.現場が岡本氏の主張を予測する能力がない。
4.彼の主張の極端な偏りと粗雑さを理解してない。
5.公共放送としての中立、公正を理解してない。
米中両国は、協力関係の現実的な維持・拡大をしようとしている。19日の米中首脳会談でそのことが示されるだろう。その一方で、オバマ政権も中国の軍事力拡大に注目、米軍は軍事的中国封じ込めといえるエア・シー・バトル戦略を取り入れつつあり、日本の自衛隊にその一翼を担わせようとしている。新年にいうべきことが、日米同盟強化による中国・北朝鮮「拡張勢力」の封じこめだけなのか。NHKはおかしいぞ。(1月8日記)
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