パリのテロ事件犠牲者のメッセージ
- 2015年 11月 23日
- 評論・紹介・意見
- グローガー理恵
パリに住むジャーナリスト、アントワーヌ・レイリー氏は13日、バタクラン劇場におけるテロアタックで最愛の妻、ヘレナを亡くした。ヘレナさんはメークアップアーチストだった。彼がフェイスブックに掲載したテロリストあてのメッセージが、ヨーロッパで話題になっており、これまでに彼のメッセージを読んだ人の数は20万人以上にのぼるという。英訳されたものがあったので、それを和訳して紹介させていただく。アントワーヌ さんのメッセージは心を揺さぶるようなものがあると思う。
英訳文へのリンク:
http://bgr.com/2015/11/20/husband-response-isis-antoine-leiris/
原文(仏語)へのリンク:https://www.facebook.com/antoine.leiris/posts/10154457849999947
アントワーヌ・レイリー氏からテロリストへのメッセージ
(和訳:グローガー理恵)
金曜日の夜、君たちは、ある特別なひとの命を奪い去った。私の人生における最愛のひと、そして、私の息子の母親を。でも、君たちが私の憎悪を得ることはないだろう。
私は君たちが誰なのか知らないし、知りたいとも思わないー君たちは死せる魂なのだ。君たちが盲目的に人を殺すのは神のためであると言うのなら、そして、その神が自分のかたちに、我々を創造した神だとするのなら、私の妻の体を貫いた弾丸の一発一発は、神の心の傷となったことだろう。
だから、私は君たちを憎悪するというような贈り物を君たちに与えるようなことはしない。君たちは明らかにそれを求めたのだけれど、その求めに怒りで反応することは、君たちをそのような者にした暗愚、その暗愚さに屈服してしまうことになるのだから。
君たちは私に恐れてほしいと言うのだろうか?同胞市民に不信の眼を向けて、安全のために己れの自由を犠牲にしてほしいと言うのだろうか?でも、君たちの負けだ。同じプレイヤー。同じゲーム。
今朝、私は彼女を見た。幾夜も待った後にやっと…。彼女は美しかった。ちょうど、金曜日の夜、ここを去った時と同じように。それは、12年以上前にわたしが夢中で彼女と恋に陥った時と変わらない美しさだった。
もちろん、私は悲しみに打ちのめされている - 君たちに、このちっぽけな勝利はくれてやることにする。でも、この悲しみは長続きしないのだ。なぜなら、私は知っている:毎日、彼女が私たちに仲間入りして一緒に居てくれる事を。そして、君たちには絶対入ることができない、自由なる魂が存在する楽園で、私たちは再びお互いを見つけ出すのだという事を。
私たちは、私と息子のたった二人だけ。でも、私たちは世界中の軍隊よりも、もっと強い。もう君たちのために時間を潰すことはやめよう。昼寝から目を覚ましたメルビルのところに戻らなくては。メルビルは生後まだ17ヶ月。彼はいつものようにスナックを食べて、それから、いつものように私たちは一緒に遊ぶのだ。そして、毎日のようにメルビルは、彼の幸福と自由さで君たちを辱めるだろう。なぜなら、彼には君たちに対する憎悪なんてないのだから。
以上
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5786:151123〕
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