本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(107)
- 2015年 12月 11日
- 評論・紹介・意見
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時代錯誤の帝国主義論
現在、「南沙諸島」を巡り、「中国」と「アメリカ」との間で緊張が高まっているが、この点については、基本的に、それほど心配する必要性が無いものと考えている。つまり、「軍事力で、他国の領土を奪い取る」というような、いわゆる「帝国主義的な行為」については、「時代遅れ」、あるいは、「時代錯誤」とも思われるからである。別の言葉では、人類の歴史を尋ねると、「帝国主義」が活発に行われたのは、「1900年前後」であり、その後は、「第二次世界大戦」の後に、多くの国が植民地から独立し、民主主義国家へと変貌を遂げたのである。
そのために、現在では、どのような大国といえども、弱小国を植民地化することは、ほとんど不可能な状況とも考えられるのである。具体的には、「かつてのベトナム戦争」や、あるいは、「2003年のイラク戦争」などが、「アメリカによる帝国主義的な動き」だったようだが、実際には、「ベトナム戦争以来、アメリカは、戦争で勝利したことが無い」と言われるほどに、世界情勢は、様変わりになっているのである。
そのために、「ロシアによるクリミア進行」や、今回の「中国による南沙諸島の占拠」なども、結局は、「アメリカの二の舞」になるものと考えているが、基本的には、現在の中国が、「遅れて出て来た資本主義国」であり、そのために、いろいろな行動を取ることにより、海外の出方を試しているようにも感じられるのである。そして、より重要な点は、「世界第一位の経済大国であるアメリカ」と「世界第二位の中国」が、かりに戦争をするような事態になれば、「経済の崩壊」だけではなく、「地球全体が、核戦争により住めなくなるような状況」になることも想定されるのである。
このように、今回の「南沙諸島問題」については、「表の軍事、裏の金融」という言葉のとおりに、表面的な緊張のようにも感じているが、実際には、どの国も、「国家財政」や「国内の経済問題」に悩まされており、「戦争をする余裕」などは存在しないようにも思われるのである。つまり、本当に憂慮すべきは、世界的な「利上げ」であり、具体的には、「年内にも、「アメリカの利上げ」が実施される可能性のことである。
つまり、これほどまでに異常な「超低金利状態」に慣れきった現代人にとって、今後の「世界的な利上げ」は、大きな脅威になるものと考えている。具体的には、「若干の利上げ」で、世界の「金融システム」や「通貨制度」が完全崩壊する可能性のことだが、時間的な余裕は、ほとんどなくなったようにも感じている。(2015.11.5)
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身ノ無キ財産
日本では、ほとんど報道されなかったが、9月30日に、財務省が、「戦後の我が国財政の変遷と今後の課題」という題名の「44ページのレポート」を発表した。そして、その中で、「終戦直後のハイパーインフレ」などが、詳しく述べられているが、私自身の感想としては、「いよいよ、財務省が、本格的なインフレ政策に移行するのではないか?」ということだった。あるいは、一種の「証拠作り」のようにも思われたが、この点については、間もなく、事実が判明するものと考えている。
そして、今回のレポートで、特に興味深かったのが、「昭和20年11月5日」に発表された「財政再建計画大綱要目」だったが、この中で、特に印象に残ったのが、「今日、我ガ国民ノ財産総額ハ、現在幾何ニ達スルヤ遽ニ推断ヲ下シ得ザルモ、概ネ四、五千億円ト推定セラルル処、其ノ中千五百億円乃至二千億円ハ、国債ノ累積等ニ基ク、謂ハバ身ノ無キ財産ト考フベキモノナルベシ」という文章だった。
つまり、当時の「日本の国富」は、おおむね「4千億円から5千億円」と想定されており、その中の「1500億円から2000億円」は、「国債の累積等に基づく、中身の無い財産である」と考えられていたのである。別の言葉では、「国債は、実質的に不良債権であり、国富とは認められない」という考えを持っていたようであり、その結果として、次のような政策が実行されたのである。
具体的には、「謂ハバ身ノ無キ財産トシテ国民ノ懐ニ在ル資金ヲ、大規模ニ吸収シ、物ト金トノ均衡ヲ回復スルノ要アリト認メラル」という説明のとおりに、「新円切り替え」や「預金封鎖」などの強硬手段が実施されたのである。しかし、この時に、「インフレにより、財政均衡が達成された」とも述べられており、実際には、「債務残高の対GDP比率」に関して、「昭和19年の204%」が、その後、「昭和25年の14%」にまで、急速に減少しているのである。
別の言葉では、「名目上のGDP」において、「昭和19年の745億円」が、その後、「昭和25年の3兆9460億円」にまで大膨張したために、結果として、「債務比率の急減」が起きたのである。そして、このような状況こそが、私の想定する「ギャロッピング・インフレ」から「ハイパーインフレ」への移行でもあるが、すでに、このようなレポートが発表されたという事実は、時間的な余裕が無くなっている証拠であり、また、間もなく、本格的な「金融大地震」が起こる可能性を示唆しているようである。(2015.11.5)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5799:151211〕
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