テント日誌3月10日…高浜原発の再稼働が止まった
- 2016年 3月 11日
- 交流の広場
- 経産省前テントひろば
経産省前テントひろば1643日
高浜原発の再稼働が止まった。これは朗報だ
巷をにぎわしているのはろくでもない話ばかりだというと異論もあるかもしれない。でも、正直いってしまらないうんざりするような話が続いた。清原の薬物騒ぎから、閣僚たちの「おまえらなにやっての」とでもいいたいような閣僚たちの言動が伝えられた。もっとも中には高市大臣の「電波停止」のような見過ごせない発言もあったが…。こうした中で、一陣の風のように舞い込んできたのが「高浜原発停止命令」という大津地裁の判決だった。さりげなく、張り出されていたものをテントでみてうれしかった。関西電力に対して溜飲の下がる思いがした。裁判所の動きを考えれば手放しで喜んで、というわけにはいかないだろがが、さしあたって朗報である。そう思う。
「3・11」も近づく中で、原発再稼働の動きが歯止めもなく進められていきそうな動きを僕らは腹立たしい思いで見てきた。再稼働した川内原発では九電が免震棟建設を中止したことも伝えられた。これは再稼働のための条件として出していたものを、再稼働の許可が下りるや勝手に撤回したもので、重大な背信行為である。別の言葉を使えば詐欺もどきである。さすがに、原子力規制委員会は批判したが、経産省や政府はなにもせずに追認の形になっている。再稼働を申請する電力業界は免震棟建設なしで済まそうとする動きを見せていた。こうした例を挙げるまでもなく、腹立たしいかぎりだったのだが、今判決はこうした事態への批判にふみこんでいる。それはまず次のような指摘においてみられる。「福島事故によってわが国にもたらされた災禍は甚大であり、原発の持つ危険性が具体化した。原発による発電がいかに効率的であり、発電に要するコスト面では経済上優位であるとしても、それによる損害が具体化したときに必ず沁み優位であるとは言えない上、環境破壊の及ぶ範囲はわが国を超えてしまう可能性さえある。単に発電の効率性をもって甚大な災禍と引き換えにすべき事情であるとは言い難い」(判決文から)。
関電や九電が発電の効率性を根拠に再稼働を進めようとしてきたことはあきらかであるが(それ以外の理由などは語られたことはないが)、こうした基本的な方向が福島事故以降ではゆるされないのだという明瞭な指摘である。金より経済、安全より経済効率などとして電力業界や官僚筋に対して加えられてきた批判がみられる。福島原発事故が引き起こした事態にたいして、責任はおろか、その意味するものを真摯に認めようともしない現力業界の姿勢に対して根本的なところでなしている批判である。「単に発電の効率性を持って甚大な災禍と引き換えにすべき事情であるとは言い難い」とは名文句であり、簡潔に再稼働を急ぐ電力業界・官僚・政府を批判したものであり、国民の疑問を言葉にしたものだといえる。
当然ながら、このことは福島原発の事故をどう受け止めているのか、認識しているのかということにもつながる。福島第一原発の事故があったあと、その原因を津波のせいにし、「想定外」という言葉を乱発してきた電力業界や官僚たちに僕らは疑念というか、不信を抱いてきた、早い話がこういう動きは事故直後から感じて来たことで、原発再稼働→保存というシナリオが背後にあることを指摘してきた。電力業界や官僚筋は事故直後からこういう構想というかシナリオを持っていたと推察されるが、そのために事故の原因究明も隠してきたとすらいえるのである。メルトダウンのマニュアルが最近になって見つかるという茶番めいたことも出てくるのである。「関電は、福島事故は発電所の自然的立地条件についての安全確保対策(具体的には津波への想定)が不十分であったために、発電所の『安全上重要な設備』に共通要因の故障が生じ、放射性物資が異常放出されたもので、新規制基準が福島事故を踏まえて形成されていることから、同様の事態が生じることを当然の前提とする住民らの主張は合理的でないと主張する」(判決文から)
事故を都合のよいように解釈してきたという不信が僕らにはある。これは津波説から発しているが、この間に強制起訴された東電幹部の裁判によって明らかにされることが期待されることである。「しかし。福島事故の原因究明は建屋内での調査が進んでおらず、今なお道半ばの状況で、津波を主たる原因として特定し得たとしてよいのかも不明である。その災禍の甚大さに真摯(しんし)に向き合い、二度と同様の事故を防ぐとの見地から安全確保対策を講ずるには、原因究明は徹底的に行うことは不可欠である。この点についての関電の主張と説明はいまだ不十分な状態にあるにもかかわらず。この点に意をはらわないのでれば、そしてそのような姿勢が関電ひいては規制委の姿勢であるとするならば、そもそも新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を憶えざるものと言わざるを得ない」(判決文から)
福島事故の原因究明がきちんと行われていないことは誰にとっても自明のことである。福島事故が終息はおろか。現在も続いていることは自明である。有効な汚染水対策ひとつ立てられてはいないのである。原因究明もできていないで新基準なんてできるわけがないし、その新基準に適合しての再稼働が危険なものであることは多くの人が指摘したことだ。ここで原因究明が未だできていないこと、それが道半ばであるという指摘はとても重要である。多分、電力業界の面々、原子力行政を推進してきた官僚たちも事態はよくわかっているのだろう。原因究明とその上での安全対策を考えていたら、原発再稼働などあり得ないことをまた知っていると言える。そんなことをしていたら原発の耐用年数も来てしまうことを知っていて、彼らは焦っているのである。彼らは使用済み核燃料の処分方法が決まらないのと同様に、原発事故の原因究明ができていないことを知っているのであり、それを待っていたら原発の再稼働などできないことを承知の上でことを進めようとしている。福島と同じような事故が起こりかねないことを知りつつ、経済的効率のために再稼働を急ぐのである。事故がおきても責任など取りようもないことも知ってのことだ。判決文についてはもっと触れたいのだが、それは今後に。丁寧に読むのは大変だが、それに値するものだ。
「3・11」から5年目だ。福島事故の原因究明はおろか、その放射線被ばくがどこまで進行するのか、その対策もわかってはいない。事故究明もできずにあって、都合のいいとことだけをとりあげ、事故対策(安全対策)を作り上げる規制委うごき、それで再稼働の条件は満たしたという政府や官僚への批判は当然だ。5年目の直前にこういう判決が出て事はうれしい。裁判小の上層部や、政府筋などの巻き返しが予想されるが、この判決がでたことはまず評価しておきたい。僕らは放射線被ばくの進行状況の把握とその対策を必要としている。これも「3・11」において確認しなければならないことである。(三上治)
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3月11日(金)の行動予定など
明日3・11は昼の12時30分から最高裁の要請行動を行うことになりました。同行弁護士は大口さん、最高裁西門前で13時まで抗議行動、その後、13時から30分間、17人まで要請行動で最高裁に入ることが可能です。裁判所の担当官は、庶務係要請担当の鴫原(しぎはら)さんです。希望者17名はそれぞれ、裁判官に対する要請内容を述べる時間があります。意見(口頭)のについて、用意してください。(弁護団事務局)
3.11経産省→東電に対する抗議行動
17時~18時経産省前での抗議行動
18時~19時東電前での抗議行動
反原発美術館からのお知らせ 3月12日(土)の催し
(3/12(土)12時から(開始時間が1時間早まりました!)
A3BC:反戦・反核・版画コレクティブによるトーク&ディスカッション
テーマ「私/美術/社会(原発)はどう関わっていけるのか?」
高校生も参加予定。
どなたも参加できます。
13:30ごろから
木版画ワークショップ(12月に開催したのと同じ内容。木版画が初めての方でも、手ぶらで参加出来ますのでぜひ!) 終了予定:夜
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