おいしい生ゆばパンを食べて石巻のパン工房の復興を応援しよう
- 2016年 5月 8日
- 時代をみる
- 醍醐聡
2016年5月7日
日和山から見渡した石巻の今
4月26日、盛岡市内でTPPに関する講演を終えたあと、27日には同行した連れ合いのたっての希望もあり、北上市にある「現代詩歌文学館」に立ち寄った。その後、石巻市に向かい、駅近くのホテルで2泊。28日は、あいにく終日、きつい雨風だったが、前もって申し込んでいた市の観光協会のガイドさんの案内で被災地の今を見て回った。津波で市内が覆われたあの日、ガイドさんは消防署員として首まで水に浸かりながら、必死の思いで市民を救出する活動をされたとのこと。
日和山の高台に上り、夫婦で説明を聴きながら、石巻市街の現況を見渡した。石ノ森漫画館がある中瀬が眼下中央に細長く伸びる。展望台の掲示板にある震災前の市街地の写真と見比べると、眼下の街並みはさみしく、緑も少ないのは覆うべくもない。災害公営住宅が市内各所に建てられているが、眼下に見える旧北上川周辺に建設中の災害公営住宅の場合は、申し込みがあったのは定員のまだ3割程度だと言う。その訳は河岸の堤防工事が未完成な場所では人々は入居を敬遠するからだそうだ。では、なぜ河岸の堤防工事は進まないのか? ガイドさんによると海岸沿いと違って、河岸沿いは私有地がほとんどで、買い上げが思うように進まないからだという。なるほどと納得した。
がんばろう! 石巻」の看板のそばで
日和山を下って、門脇・南浜地区へ案内してもらった。ここは死者・行方不明者が非常に多かった地区で、跡地は「災害復興祈念公園」とすることが決まっている。車が近づくと全国ニュースでも伝えられた「がんばろう! 石巻」の大きな看板が見えてきた。車を降りて近づくと、看板の近くに献花台があり、そのそばに野立ちのガス灯のような低い背丈の建造物があった。石巻の被災地に残った木片を集め、それを種火にして亡くなった人々を追悼するものだという。
「災害復興祈念公園」予定地を発って、最後に新装なった石巻魚市場を案内してもらった。全長876m、東洋一長い魚市場だそうだ。鳥や猫が入り込まないよう、建物はすべてドア付き。セリはもう終わり、閑散としていた。私たちが案内された2階は見学者用のデッキだった。漁獲量は震災前の95%にまで回復しており、魚市場の復興は石巻の復興にとって、一番の明るい話題だとガイドさんは話した。
昼食は、別れ際にガイドさんに勧められた地元の小さな魚の加工・販売ショップ「プロショップまるか」の中にある食堂へ出かけた。食堂と言っても無造作にテーブルが置かれただけ。それでも、金華山で獲れたてのいわし、くじら、あじ、さよ、赤貝などが並ぶ。そのなかから好きなものをトッピングしてカウンターに持っていき、ごはん、味噌汁を付けてもらうと盛りだくさんの食事となる。
偶然に立ち寄ったパン工房パオ
昼食を終えると、後の予定は特に決めていなかった。傘をさして近くの寿福寺をのぞき、駅に向かって歩くうちに、そう言えば、このあたりに「復興商店街」があったはずだと思い出した。道すがら、通りかかった人に尋ねながら歩くとすぐにたどり着いた。七十七銀行石巻支店の近くで、正式の名前は「石巻復興ふれあい商店街」。全部で8つほどの商店が並んでいた。閉まった店もあったが、2,3のぞいた後、最後に入ったのが「パン工房パオ」だった。
他に客はなく、すぐに店主から声を掛けられた。千葉から夫婦で来たというと大変歓迎され、まあどうぞと腰掛を差し出された。手際よくコーヒーまでいただいた。パオの人気商品は「生ゆばパン」。生地に50%のゆばを練り込んだ食パンだ。原料はすべて国産の天然素材。帰宅して少しトースターで温めて賞味すると、なるほど店主の自慢のとおり、もちもちとした一味違う食感がした。ゆばを原料にした食パンがあるとは知らなかった。
詳しくはネットにアップされている店のHPをご覧いただくのがよいと思う。
http://ishinomakiya.com/pao/
話が弾み、店のご主人・谷地田けい子さんは、市内にあった元の店が津波に流されて押し寄せた漁船で押しつぶされ、全壊したこと、しばらく途方に暮れ、営業再開を諦めかけていたところ、元の得意先から再開を望む声が届き、営業再開を決心。ちょうどこの「復興ふれあい商店街」に入れたそうだ。再開後は元のファンや復興支援で石巻にやってきたボランティアがインターネットで県外に広報したところ、注文が増えたという。その影響もあってか、今では、店の売り上げは来客よりも地方発送の方が多いそうだ。そんな経過もあってか、谷地田さんは私たちに何度も、支援者への感謝の言葉を語った。
おいしいパンを食べてパン工房パオの営業継続を応援しよう
しかし、「石巻復興ふれあい商店街」はプレハブ製の仮設店舗。しかも2年という期限付き。当初、市は去年の12月で閉鎖の予定だったが、今年の10月まで延長となった。その期限まであと半年足らずだ。話の終り頃、谷内田さんは工房の将来を話し終えたところで、「銀行が融資に応じてくれるといいんだけどね」と話した。店主の今の気持ちを物語る一言と思えた。生ゆばパン、天然酵母パン(オレンジ)、ガーリックトーストを買って外へ出て、宿へ向かった。
生ゆばパンは2斤2,100円。食パンとしては決して安いとはいえない。が、それでも愛好家からの注文は多いという。実際に味わうと、納得する人が多いからだろう。おいしいパンを食べて、震災に負けず、パン工房の再起にかけるパオの営業継続のため、たくさんの方が応援していただくことを願っている。
手造りパン工房 パオ
住所 宮城県石巻市立町2-6-23 【石巻立町復興ふれあい商店街】No.11
電話番号 0225-96-4770 FAX番号 0225-22-8696
営業時間 10:00~17:00 定休日 第1、第3日曜日
注文はファックスで。(FAX番号 0225-22-8696)詳しくは下記。
(画面をクリックすると拡大します。)
初出:醍醐聡のブログから許可を得て転載 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye3424:160507〕
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