パナマ文書とタックスヘイブン:タックスヘイブン・ランキング、アメリカのオレサマ戦略、そして日本の対応(『政府はもう嘘をつけない』堤未果 角川新書 より)
- 2017年 2月 14日
- 評論・紹介・意見
- 田中一郎
- 政府はもう嘘をつけない-堤未果/〔著〕(角川新書)
昨年夏に出た堤未果さんの著書『政府はもう嘘をつけない』(角川新書)は、パナマ文書とタックスヘイブンについて書かれています。非常に興味深いのでご紹介しておきます。
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033468056&Acti
on_id=121&Sza_id=B0
まず、注目されるのは、「タックスヘイブン」のランキングです。タックス・ジャス
ティス・ネットワーク(TJN)が2015年に発表したものらしいのですが、それによ
ると1位はスイス、2位は香港、3位はなんとアメリカです。意外なのはケイマン諸島
で5位に甘んじています。また、8位のドイツ、12位の日本というのも意外です。TJ
Nはどういう評価基準でどういう採点をして、このランキングを決めたのでしょう?
詳しい方がおられたら解説をお願いします。
その次は、パナマ文書を巡るアメリカの立ち位置についての説明がなされています。
パナマ文書で名前が公表されたのはアメリカ以外の国の人間や法人が多く、アメリカ
国籍の固有名詞は出てこない。パナマ文書を扱った国際調査報道ジャーナリスト連合
(ICIJ)は、アメリカ政府の関係機関からカネをもらって活動しているため、そ
の利害を色濃く反映した発表の仕方をしているとの批判が強いという(ICIJは批
判を無視)。
また、当のアメリカは、パナマ文書で明らかとなったタックスヘイブンをつかった国
際的納税回避行為を国際協調的に取り締まろうという協調性に乏しく、むしろ今回の
パナマ文書騒動を通じて、世界のアングラマネーをアメリカに集めようとしている様
子がうかがえる。OECDが決めた「金融情報交換制度」も、アメリカは自国の法律
であるFATCAを外国金融機関などに押し付けて他国からは情報を提供させるが、アメ
リカ国内の情報については国外に提供するつもりは全くない、といった調子。
翻って日本は、アメリカに税務関連の情報を単純に吸い上げられるのをうまくかわし
たというので高い評価がなされている、という。
まあ、ざっとこんなことが書かれておりました。
さもありなんです。私は今のOECD各国の政府が、大手新聞社が牧歌的に報道して
いるように、真正直にタックスヘイブン取り締まりへ向かうとはとても思えません。
有権者・国民=納税者が、相当「租税民主主義」を心得たうえで、不公正・不公平な
税制や徴税運営を許さないという姿勢を持たないと、政府は動くことはないでしょ
う。(動いているふりはするかもしれませんが)
国政選挙の大きな争点の1つに、このタックスヘイブンと不公正税制を持ち上げてい
く必要があります。
なにせ、日本はタックスヘイブンとして、世界で第12位の不名誉な地位にあるわけで
すから。
「マルサの女」の下に「タックスヘイブン・バスターズ」チームを創設すべきです。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6508:170214〕
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