日米共同声明を読んで
- 2017年 2月 14日
- 交流の広場
- 熊王信之
トランプ・安倍会談については、色々な側面から論じられています。 トランプ大統領御本人も御自身のツィ―トで御両人の満面の笑みとともに掲載されています。
Donald J. Trump ?@realDonaldTrump ? 2月10日
Heading to Joint Base Andrews on #MarineOne with Prime Minister Shinz? earlier today.
https://twitter.com/realDonaldTrump/status/830195857530183684
処が、この投稿の直前には、電撃的にツィートされた事実が掲載されています。
Donald J. Trump ?@realDonaldTrump ? 2月10日
The failing @nytimes does major FAKE NEWS China story saying “Mr.Xi has not spoken to Mr. Trump since Nov.14.” We spoke at length yesterday!
(落ち目のニューヨーク・タイムズは、「習氏は、トランプ氏と11月14日以来話していない」、と言う中国報道に関わる重大な似非ニュースを巻き散らしている。 我々は、昨日、長時間話したぞ!)
何を指しているか、と言うと、前日の習・トランプ電話会談であり、その主な点は、「一つの中国」をトランプ大統領が踏襲する、との言明です。 以前から、台湾総統との電話会談を端緒に中国が固執する「一つの中国」にトランプ大統領が懐疑的な言明をされた経過がありましたが、一転して、中国の主張に同意された処です。
安倍首相との会談を目前にした日に電話会談を設定し、関係修復を図り、会談そのものもホワイト・ハウスに依れば、両首脳の会談は、“extremely cordial”(誠心誠意)と評されるものであったそうです。
The White House Office of the Press Secretary For Immediate Release February 09, 2017 Readout of the President’s Call with President Xi Jinping of China https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/02/09/readout-presidents-call-president-xi-jinping-china
日本側が、尖閣諸島が日米安保の対象であると明記されたことを有難がるその裏面では、安倍・トランプ会談開催を接点にした中国との電話会談が設定されていた訳です。
処で、その日米会談の「成果」なるものの中、尖閣諸島への安保条約適用についてです。
共同声明の当該箇所では、以下のようです。
The two leaders affirmed that Article V of the U.S.-Japan Treaty of Mutual Cooperation and Security covers the Senkaku Islands. They oppose any unilateral action that seeks to undermine Japan’s administration of these islands.
(両首脳は,日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを確認した。両首脳は, 同諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する。)
一般では、米国が戦争に参加するには、議会での承認が必要であり、中国との戦争には二の足を踏むのではないか、等と戦争一般の話題に転化する傾向がありますが、それは、現在の国際紛争と米国がそれに対する姿勢を観る眼が曇っている、と言わざるを得ないものです。
反問しますと、其れでは、現在までに米国が戦火を交えた事例で、宣戦布告をした事例を示して頂きたいのです。 全世界で米軍が戦火を交えた事例が山ほど存在するのですが、その中で宣戦布告したものが一体どれ程あるのでしょうか。
米国では、軍事に関わる大統領の専権で殆どが対応可能であった処から、ベトナム戦争等でその専権の弊が問題になり、制限する法律が制定されているのですが、現代の戦争(紛争)では、宣戦布告等と悠長なことをしていては、防衛の暇も無くなりますので、自衛の手段を講じて後に議会に諮ることで足りる訳です。
従って、尖閣を例にとれば、彼の地で武力行使を伴う紛争が発生し、事態が自衛隊出動を要する規模に達した後に、仮に自衛隊の充当戦力で足りず、若しくは出動戦力が敗退した際に米軍への出動要請があれば、緊急性の必要上から米軍の出動は、当然に有り得ることでしょう。 その際には、米軍は、偵察に依り敵対勢力殲滅に必要、且つ充分な戦力を抽出して即時に出動することになるでしょう。 こうした場合には、宣戦布告等の手続は、不要です。
米国は、戦争をする折にはするでしょうが、この国に、本当にその心構えがあるのでしょうか。 共同声明を読めば、同盟国として果たすべき任務が拡大すると思われるのですが、その覚悟がこの国の民にはあるのでしょうか。
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