「『瑞穂の國記念小學院』の敷地取得価格の怪」(補遺2)
- 2017年 3月 2日
- 評論・紹介・意見
- 熊王信之
瑞穂の國記念小學院に関わる一連の疑惑は、国有地売買の代価を巡る疑惑に収斂するものの、実は、それは仇花ではないか、と前の拙稿で述べたのですが、その周囲に観られる一連の疑惑をも含めて一切が事件であり、事件のフィクサーは可成りの大物と観られる、と思われると述べた処ですが、その証拠を少し分析してみたい、と思います。
発端は、學院設立にあるのは当然でしょう。 しかし、一般には、当該所管庁である大阪府の「大阪府私立小学校及び中学校の設置認可等に関する審査基準」に定める処を各々充たすべく努めたものの、基準を充たさない点は、折衝しつつ、障害を除くべく請願を重ねる他には無いものですが、その折には、矢張り政治家の力が物を言うであろうことは誰もが首肯出来得るでしょう。
従って、この件でも、大阪府に対して、その請願があったことが報道されています。 但し、通常は、行政庁に対する請願は、日々、膨大な量に上るものがあり、その対応から回答に至る事務処理量も、当然ながら可成りの量があり、業務計画なり事務処理指針なりに沿って処理可能か否か、または、予算に沿い処理可能か否か、等と検討した末には、大抵の請願なり要望の現実化は日程には上ることは無いのです。
処が、瑞穂の國記念小學院に関わっては、突如として、その現実化が起きたのです。 異例のことと言えるので有ろうことは、前稿で述べた処です。 従って、大阪府には「すぐやる課」があったのでしょう。 「大阪府私立小学校及び中学校の設置認可等に関する審査基準」は直ぐに改正されました。
森友学園のためか 大阪「私立小設置基準」緩和に重大疑義 日刊ゲンダイ 2017年2月25日
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/200226
審査基準改正のためのパブコメが2012年2乃至3月ですので、それ以前に瑞穂の國記念小學院創設プロジェクトは、始動していた、と観るのが正当でしょう。
更に、瑞穂の國記念小學院創設プロジェクトは、同時に、用地にも見当をつけて所管行政庁を動かしています。
報道には、以下のとおりです。
「問題の豊中の土地の登記簿を見てみると、2012年に新関空会社に移転登記されていますが、翌年「錯誤」を理由になぜか国に所有が戻り、森友学園に売却されていました。 MBSの取材に対し、国交省大阪航空局は『手続き上のミスがあったので国に所有権を戻した。 国が所有しなければならない理由はわからない』としています。」
格安売却疑惑 問題の土地はなぜか国所有に 02/22 20:39 TBSNews http://www.mbs.jp/news/kansai/20170222/00000050.shtml
当該部分を登記情報に依り精確に表記しますと、順位番号3、 登記目的 所有権移転、受付年月日 受付番号 平成24年10月22日 第44019号、原因 平成24年7月1日現物出資、所有者 大阪府泉佐野市泉州空港北1番地 新関西国際空港株式会社、となっていました。
処が、順位番号4、登記目的 3番所有権抹消、受付年月日 受付番号 平成25年1月10日 第427号、原因 錯誤、とされて、所有権は国に戻っているのです。
登記事項にある「現物出資」とは、法令では、商法の範疇で言う会社法になりますが、金銭では無くてそれ以外の財産を以て出資することを言います。
新関西国際空港株式会社への出資に当たり、国有財産(土地)で以て出資に代えた訳です。 処が「手続き上のミス」があったので、元に戻した、と言うのです。
冗談は好い加減にして貰わないといけません。 国有財産に限らず、公有財産の管理は、厳正な規律に依っているものです。 それを金銭に代えて出資する折に、「手続き上のミス」等は有り得ません。
そもそも、官公庁の意思決定は、一人や二人で行うことは有り得ず、重要な財産の移転に当たっては、専門担当者の起案から相当数の管理者の決裁を経て、関連担当部門の合議を貰い、事案に依れば、法制部門、会計部門の査閲(合議)を経て、決裁されるので普通です。 単純な手続上のミスでもあれば、厳しい叱責を受け、突き返されます。
これは、正当に手続されたものが、爾後に何等かの不都合、詰まり、当該財産である国有地が入用になり、現物出資を取り消して国有財産に戻す必要が出来た、と考えるので普通です。
一般の決裁権者をも飛び越えて処断出来得る者で無ければ出来得ない異例の事と言えるでしょう。
そして瑞穂の國記念小學院創設プロジェクトは、この時点で既に、学校敷地の入手に至っていた、と言うことなのでしょう。
それでは、これだけのことが出来得るフィクサーとは何者なのでしょうか。 複数の行政庁を動かして、所管行政庁の審査基準等も改正させる力を持つ者は、地方では無くて中央に在る政権乃至政権に近い政治家、乃至、その側近または秘書、となるでしょう。 但し、側近または秘書では、その対応には各種行政庁も馴れていますので此処まで従うことは無い、と思われます。
この事件、関係した公務員は、最悪の場合に自身の処遇が如何になるか、と反省されているのでしょうか。 退職金、年金を心配されているのでしょうか。 政治家と違い、潰しの効かない公務員の老後は厳しいですから。
対政治家の古よりの教訓に学べない人は、公務員には相応しくは無いのです。 法学部で学ぶ者が最初に行政法の授業で学ぶのが「法律に依る行政」であり、その典例に従うことが出来なければ、道を踏み外す、と言うことです。 法律は、それを守る者を守る、と言うことです。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6545:170302〕
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