Global Headlines:俺様はドナルド・トランプ大統領様だが、それがナニか?
- 2017年 4月 26日
- 時代をみる
- 青山雫
いやはや、これほどの経済音痴にして強面軍事トンデモ大統領は、近代に入っても並ぶものが無いだろう。えっ、マルクスにボロカスにやっつけられた、ルイ・ボナパルトはどうかって?なめちゃあいけません、やつはあれでも圧倒的多数を獲得してフランス第二共和制大統領に就任したんですよ(得票率75%)。得票数で対立候補のヒラリーを下回ったポーカーじゃないトランプとくらべちゃあいけないっす。
経済に関する無知というだけなら、もう一人のドナルド、ドナルド・レーガンを人は想起するかもしれないが、彼には金融政策に関しては、ミルトン・フリードマンを頭目に置くマネタリスト経済学者の一群がついていたのだし、税制改革を軸とするサプライサイド経済学によって、企業収益性を再興しようという政策面では、フェルドシュタインプリンストン大学教授らが諮問の任に当たっていた。もっとも、のちに「ブードゥー経済学」と揶揄されるにいたる、税率と税収のインチキ関係曲線で悪名高い、ラッファーらも周囲をうろついていたわけだが。小さな政府を指向し、所得税減税はやったが、財政規模は宇宙戦争軍拡などで逆に膨張したから、「意図せざるケインズ主義」が現出してしまったのも、なんとも皮肉なものだ。
それはともかくとして、わがトランプ氏にはそうした一応曲がりにも一派を率いるくらいの力量を備えた諮問団がいるのかというと、あのイバンカと娘婿のジャレッド・クシュナーかよ?おいおい・・・
まぁ、昔日のフランクリン・ルーズベルトもこと経済に関しては無知といえば無知なのだが、30年代はまだ自由放任主義が主潮であって、つまり大恐慌に対しては真逆の引き締め策でもって当たるべしという、今から見返せば身の毛のよだつような政策基調の時代だったので、むしろ無知が幸いしたとも言える面もなくもない。国内均衡を優先しようとすると、固定相場制を自動的に強制する金本位制は障害物以外の何者でもないので、「ええい、じゃま臭せぇ」とばかり、大統領就任直後にこれを放棄してしまったが、これには金本位制に基づく自由放任主義のドグマに侵されきったブレインたちは「人類文明の終焉だ」と嘆息したという。預金保護による、銀行取付・破綻のようやくの阻止とあいまって、さしもの大恐慌も底を打ち、足取りは弱いもののアメリカ経済は回復基調を取り戻していったのだから、まあよしとしようか。ただし、金本位制から離脱したのは、してやったりだったのだが、もう一つ国際通貨体制の再編成については、金本位制復帰を指向する諸国に対して「物神崇拝につきまとわれた国際銀行家たちのいけにえ」みたいなメッセージを発して、責任放棄してしまった。だって、責任が何たるかをまったく理解していないんですから。結果世界経済はブロック化に移行し、とどのつまりは第2次世界大戦に突き進んだんですから、無知は恐ろしいでしょう。
ところで、少々鮮度落ちのネタだが、かの反体制頓珍漢大王、ノアム・チョムスキー先生がトランプの大統領就任後、サイエンスライターの吉成某のインタビューを受けた時の様子が、下記に載せられているのだ。
https://news.yahoo.co.jp/feature/566
まあ、大王先生のアメリカ70年間没落説はお笑いで受け流すとして、トランプについて「やつは、自分が何をやっているかすらわからないだろう」と揶揄していて、これは大いに共感するところではある。
というのも、大統領選公約の例のメキシコとの国境沿いに違法移民阻止のための壁建設なのだが、費用が2兆円強に上るということもあって、財源の目処絶たず、今年度予算の議会承認デッドラインが目先4月29日に迫る中、いったん予算化を先延ばししないと、連邦政府閉鎖を回避できないとあって、さしものトランプも、腰砕けになってきているということが報ぜられているのだ。
ワシントンポスト
https://www.washingtonpost.com/
ニューヨークタイムズ
時を同じくして、トランプは法人税を現行35%から15%に引き下げる税制改革をぶち上げたが、「あんた、それで公約の財政赤字解消ができると思っているの?」と共和党からも疑念の声上がって、これもひと悶着引き起こしている。上記二紙と、
CNN Money
http://money.cnn.com/2017/04/24/news/economy/trump-corporate-tax-rate/
など参照するとよい。CNN記事ではこの「改革」ならぬ「減税」で、連邦税収は10年間で2兆4000億ドル!減収になるとの数字も引用されている。
まったく、わがトランプ大統領は、支離滅裂大魔神とでも評すべき様相を呈してきている。大統領就任100日間というのが、新大統領のパフォーマンスをベンチマークする慣習的な期間となっているが、見るべき成果もなく、どうやら連邦政府閉鎖で祝福されるかもしれない風向きとなってきている。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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