沖縄の民意を蹂躙するアベ政権の支持者よ、君たち恥ずかしくないか。
- 2017年 4月 26日
- 時代をみる
- 澤藤統一郎
本日(4月25日)、全国紙の各社説の1本はいずれもフランス大統領選挙問題。そして、もう一本のテーマが、北朝鮮、万博、原発、それにカジノなど。沖縄・辺野古はテーマになっていない。沖縄2紙は違う。いずれも、辺野古の新基地建設問題を取り上げた。明確に、「護岸工事着工ノー」の立場を鮮明にしてのこと。
沖縄タイムス社説のタイトルが、「名護市辺野古の新基地建設に反対する沖縄の民意は揺るがない」。そして、琉球新報が、「辺野古護岸着工へ 埋め立て承認撤回する時だ」というもの。「建設に反対する民意」を確認した上で、「埋め立て承認撤回」と、建設阻止の具体策まで踏み込んでいるのが、沖縄のメディアなのだ。
沖縄タイムス社説
「沖縄タイムス社、朝日新聞社等が実施した県民意識調査で、新基地に『反対』する人が61%を占めた。『賛成』は23%にとどまった。これが、県民の意志である。新基地を争点にした主要選挙も流れを一にする。名護市長選、衆院選、参院選と新基地に反対する候補者が完全勝利した。民意の背景にあるのは、沖縄に米軍基地が過度に集中している現状への差別感、沖縄のことは沖縄が決めるといった自己決定権要求の高まり-などである。
安倍内閣に対し県内では『支持しない』が48%で『支持する』の31%を大きく上回った。朝日新聞社の全国世論調査では「支持」が50%で「不支持」が30%。沖縄と全国では逆の結果になった。「辺野古が唯一の解決策」と繰り返し、県との「対話」をないがしろにした対応が県民の危機感を高め、それが安倍内閣の支持率低下につながったのだろう。
翁長知事への「支持」は58%、「支持しない」は22%。自民党支持層でも支持と不支持が拮抗した。今年に入ってから宮古島市、浦添市、うるま市の市長選で翁長知事が推す候補者が3連敗するなど、知事の求心力低下を指摘する声もある。しかし、5割を超える支持率は、新基地に反対する翁長知事への期待感がなお根強いことを表している。
沖縄防衛局は25日にも護岸工事に着手する。石材などを初めて辺野古沿岸部に投入し、埋め立ての外枠を造る。意識調査では本格的な埋め立て工事を始めようとする安倍政権の姿勢について「妥当でない」が65%に上った。
基地負担の軽減について安倍内閣が沖縄の意見を『聞いていない』としたのは計70%に達している。新基地建設が民意に反するのは明らかだ。」
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沖縄県民世論調査―質問と回答〈4月22、23日実施〉
◆あなたは、翁長雄志知事を支持しますか。支持しませんか。
支持する58▽支持しない22
◆あなたは、安倍内閣を支持しますか。支持しませんか。
支持する31(50)▽支持しない48(30)
◆あなたは、今、どの政党を支持していますか。政党名でお答えください。
自民20▽民進7▽公明4▽共産4▽維新1▽自由0▽社民3▽日本のこころ0▽沖縄社大0▽そうぞう0▽その他の政党1▽支持する政党はない46▽答えない・分からない14
◆あなたは、アメリカ軍の普天間飛行場を、名護市辺野古に移設することに賛成ですか。反対ですか。
賛成23(36)▽反対61(34)
◆普天間飛行場を名護市辺野古に移設するため、安倍政権は今、辺野古沿岸部での埋め立て工事を本格的に始めようとしています。あなたは、安倍政権のこの姿勢は、妥当だと思いますか。妥当ではないと思いますか。
妥当だ23▽妥当ではない65
◆アメリカ軍基地が集中する沖縄の負担軽減について、あなたは、安倍内閣が、沖縄の意見をどの程度聞いていると思いますか。(択一)
十分聞いている3(5)
ある程度聞いている24(36)
あまり聞いていない39(40)
まったく聞いていない31(13)
(括弧内は、全国調査の数値)
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琉球新報社説
「3月末に岩礁破砕許可の期限が切れたにもかかわらず、沖縄防衛局は無許可状態で工事を強行してきた。県は護岸工事によって、土砂の投下やしゅんせつなどの行為があれば岩礁破砕行為に当たるとみている。
菅義偉官房長官は『日本は法治国家』と繰り返している。ならば違法行為に当たる護岸工事の着工を中止すべきである。一方、翁長雄志知事は、大量の石材などが海底に投じられ現状回復が困難になる護岸工事を許さず、埋め立て承認の撤回を決断する時だ。
護岸工事は石材を海中に投下し、積み上げて埋め立て区域を囲む。埋め立て区域北側の「K9」護岸の建設から着手する。一部護岸ができ次第、土砂を海中に投入する埋め立ても進める。
政府は地元漁協が漁業権放棄に同意したことをもって漁業権が消失し、岩礁破砕の更新申請は必要なくなったと主張する。これに対し県は、漁業権は公共財であり知事がその設定を決定するもので、漁業権を一部放棄する変更手続きには、地元漁協の内部決定だけでなく知事の同意が必要だとして、国の岩礁破砕許可の申請義務は消えていないと主張し、双方平行線をたどっている。
仲井真弘多前知事の埋め立て承認書に留意事項が付いている。第1項で『工事の実施設計について事前に県と協議を行うこと』を義務付けている。このため県との協議なしに本体工事を実施できないはずだが、政府は一方的に協議の打ち切りを通告した。
これが『法治国家』といえるだろうか。留意事項に違反した国に対して、知事は埋立承認権者として承認を撤回できるはずだ。
知事選で圧倒的多数の信任を得た辺野古新基地阻止の公約を実現するため、承認撤回のタイミングを逃してはならない。」
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2紙が危惧したとおり、本日(4月25日)政府(沖縄防衛局)は無許可状態での本格的護岸工事着工を強行してきた。琉球新報が示唆したように、翁長知事は、仲井眞前知事の承認を撤回するだろう。そして、その撤回の効果をめぐって、県と国とは、またまた法廷で対決することになる。
それにしても思う。民主主義とはいったい何なのだと。沖縄の民意は、明確に辺野古新基地建設を拒否して揺るがない。米軍基地は、単に騒音を撒き散らし風紀上問題の不快なものというものではなく、有事の際には真っ先に標的とされる命の危険を伴うものと認識されつつある。しかし、全国の民意は、沖縄に基地建設を押しつけている。沖縄は辺野古建設を拒否する翁長知事を支持し、全国は辺野古建設を強行するアベ政権を支持しているのだ。
だから、沖縄ではアベ内閣の支持率(31%)は、不支持率(48%)を大きく下回るという全国との逆転現象が起きている。
全体の利益のためとして一部の者に犠牲を押しつける。その犠牲の押しつけを、多数決で正当化する。こんなやり口を民主主義とはいわない。これは多数の横暴であり、差別であり、人権の侵害であり、地方自治の破壊なのだ。アベ政権を支持する者よ、恥を知るべきではないか。
(2017年4月25日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2017.04.25より許可を得て転載
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